経済港湾委員会 質疑

平成 27 年二定 経済・港湾委員会(27.6.19)
ただいま、新銀行東京の経営統合に係る基本合意について報告がありました。
我が党は、厳しい経営環境に苦しむ中小企業を支援するという、新銀行の設
立理念に賛同し、この間、大変に困難な状況もありましたが、一貫して、その
取り組みを見守り、また応援してきました。このたびの経営統合についても、
中小企業支援という理念が貫かれ、そのために効果があるものでなければなら
ないと考えます。
経営統合の基本的な考え方については、先日の我が党の代表質問で知事に確
認いたしましたので、本日は、新銀行がこれまで中小企業支援に果たしてきた
役割や経営再建の状況、そして、このたびの基本合意の具体的な内容、言わば
統合に向けた設計図について、質疑を通して明らかにしていきたいと思います。
いわゆるバブルの崩壊以降、不良債権が大量に発生し、国内の金融機関の処
理が本格化すると、貸し渋り、貸し剥がしが深刻な社会問題となりました。こ
うした状況の中で、高い技術力や販売力を持ちながら、十分な資金調達ができ
ずに苦しむ中小企業の資金繰りを支援するため、平成 16 年、都が 1,000 億円
を出資して新銀行を設立したのです。
残念ながら、設立当初の経営陣は経営のかじ取りを誤り、深刻な経営危機に
陥り、都は中小企業への支援を継続するため、平成 20 年に 400 億円の追加出
資を行いました。この追加出資を得て、新銀行も再び体力を取り戻し、その後、
その旗を降ろすことなく中小企業支援を続けてきています。
まず、都として、この新銀行の開業以来の中小企業支援の実績を振り返り、
どのように評価しているのか、伺います。
(Q1)
(A1:部長答弁)
・ 新銀行東京は、
高い事業意欲を持ちながらも資金繰りに窮している中小企業
に対する支援を目的に設立された銀行である。
・ これまで、他の金融機関では支援が難しい赤字・債務超過先企業に対する融
資のほか、金融円滑化法の施行前からのリスケジュールの実施、近年の中小
企業のニーズの変化に対応した事業再生等の相談機能の充実などに積極的
に取り組み、中小企業支援に努めてきた。
・ また、新銀行は都内業界団体等との連携による、傘下の中小企業等に対する
融資を開始するなど、中小企業が利用しやすいメニューの開発にも取り組ん
だ。
・ この結果、
平成 26 年度末では中小企業向け与信残高は 1,374 億円に伸長し、
中小企業向け与信先数も 1,799 先と増加に転じるなど、
着実にその成果が表
れている。
・ こうした新銀行による中小企業支援の取組により、
多くの中小企業が事業を
継続することができたと認識している。
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紆余曲折はあったものの、これまで多くの中小企業が新銀行東京の支援を受
けていたことは紛れもない事実です。また、足元の実績が伸びているのは、地
域の中小企業による適時適切な資金供給に対する幅広いニーズが、現実にある
ことを示していると思います。今、思いおこせば、私の地元大田区でもどれだ
け息をついだ、息をふきかえした町工場があったことか。
追加出資の 400 億円について、わが党は新銀行から融資を受けている中小企
業を守るため、大局的、長期的見地から苦渋の選択をして、賛成する道を選び
ました。ただいまの答弁で、この追加出資が、都内中小企業の切実な状況を十
分に踏まえた、生きた政策判断であったとの思いを新たにしています。
そして、一時は深刻な経営状況にあった新銀行ですが、これまで、経営再建
に向けて様々な努力を重ねてきました。その成果についても確認しておく必要
があります。
新銀行の経営再建に対する都の認識を伺います。
(Q2)
(A2:部長答弁)
・ 追加出資を受けた新銀行東京は、経営陣や行員の努力により、大幅なコスト
削減を行うとともに、厳格な与信管理を行いつつ、与信残高を伸ばすなど収
益拡大に努めてきた。
・ これらの取組の結果、当期純利益は平成 21 年度に黒字に転換するとともに、
銀行本来の収益力を表す実質業務純益も平成 22 年度に黒字に転換し、いず
れも現在まで黒字を安定的に継続している。また、不良債権比率についても
大幅に低下してきている。
・ 平成 24 年度から 26 年度の中期経営計画においても、
当期純利益の目標8億
円に対し実績は 34 億円、純資産の目標 514 億円に対し実績は 550 億円とな
っている。
・ 中小企業支援に注力しながら、経営目標を超過達成しており、経営再建には
目処が立ったものと認識している。
・ こうした実績を積み上げたことが、今回の経営統合の基本合意につながった
ものと考える。
これまでの経営再建の取組が功を奏し、それが決算にしっかりと現れていま
す。経営陣や行員の努力により、経営再建に目処をつけたことが経営統合の下
地になったということができると私は思います。
そこで、今回の基本合意の枠組みについて、いくつかお尋ねします。
一般に、金融機関が経営統合に至るプロセスにはいくつかのステップを踏ん
でいくことになります。今回の相手方である東京TYフィナンシャルグループ
もまた、昨年 10 月に東京都民銀行と八千代銀行が経営統合して誕生したもの
ですが、この時も、基本合意、最終契約、株主総会での議決を経て、経営統合
へと至っています。
そこで、今回の基本合意というのは、どのような位置づけなのか、そして今
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後はどのようなステップを踏んでいくのか、確認を含めて伺います。
(Q3)
(A3:部長答弁)
・ このたびの経営統合に向けた基本合意では、新銀行東京と東京 TY フィナン
シャルグループが経営統合に向けて協議・検討を進めていくことについて合
意したものである。
・ 言わば、経営統合に向けたスタートラインの位置づけと認識している。
・ 基本合意の締結後、新銀行と同グループは、相互に相手方の資産価値などを
査定するデューディリジェンスと呼ばれる作業を行うこととしている。
・ その結果等を踏まえて、両者の協議の上で、株式交換の内容を含む具体的な
内容が決定され、本年9月に最終契約が締結される予定である。
・ さらに、本年 11 月開催予定の両社の株主総会での承認が得られた後、監督
官庁である金融庁の認可を受けて、来年 4 月 1 日に経営統合を予定している。
経営統合に向けた協議を始めた段階であり、その実現までにはいくつものス
テップを越えていく必要があります。お互いのことを理解し合い、必要な検証
をしっかり行っていかなければなりません。1つ1つの検討を丁寧に、進めて
いただきたいと思います。特に株主総会での統合の承認に向けては、大株主で
ある都だけでなく、他の株主の皆様にも十分理解していただけるよう、丁寧な
対応が必要だと思います。
次に、基本合意では、新銀行と東京 TY フィナンシャルグループは中小企業
支援という共通の経営目標を持ち、中小企業支援をより一層進めるとして、同
グループの持つ店舗網や顧客ネットワークと、新銀行の有する都と連携した中
小企業支援のノウハウを集結することにより、多様化・高度化する顧客ニーズ
に応え得る金融サービス機能の拡充を図っていく、ことなどを掲げています。
経営統合によって、中小企業への金融サービスの内容が充実していく、これ
が求められる姿だと思います。どのような金融サービス機能の拡充を目指して
いるのか、伺います。また、今、取引している企業への目配りも忘れてはなり
ません。既存の取引先の融資がどうなるのか、併せて伺います。
(Q4)
(A4:部長答弁)
・ 新銀行東京は、
信託を活用した独自商品や行政との連携に関するノウハウな
どに強みをもつ一方、東京 TY フィナンシャルグループは都内だけで 122 店
舗を擁し、さまざまな商品や多くの顧客を抱えている。
・ 顧客のニーズに合わせて、双方のノウハウやネットワークを活用し、相互に
商品やサービスの提供を行うことにより、
より一層の金融サービス機能の拡
充が図られるものと考えている。
・ また、
新銀行とお客様との間で締結されている既存の融資の契約については、
統合後においても、その内容が変わることはなく、新銀行及び同グループか
らは、経営統合によってこれまでの取引方針を大きく変更することはない、
と聞いている。
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まず、今回の経営統合後も、新銀行の既存の取引先の融資に変更がないと確
認できたことは、大変重要な点であると思います。
そして、新銀行東京は現在、信託銀行としての免許を活用して、公共工事を
受注する中小企業の資金繰りを支援する独自の商品を扱っていますが、今の1
店舗という体制では、その他の商品の開発や、顧客の開拓には、自ずと限界が
あります。
新銀行の強みと東京 TY フィナンシャルグループの強みを活用することによ
って、これまで新銀行だけでは汲み取れなかった中小企業のニーズを新たに掘
り起こしていくことも期待できるということで、ぜひ、両者の強みを活かす経
営統合となってもらいたいと思います。
次に、経営統合の形態について伺います。基本合意では、東京TYフィナン
シャルグループが完全親会社、新銀行は完全子会社となる形での株式交換を実
施することになっています。
都は現在、新銀行の大株主ですが、株式交換により、都の株主としての立場
はどのようになるのか、伺います。(Q5)
(A5:部長答弁)
・ 都は現在、新銀行東京の議決権を持つ普通株式の約 84%と、残余財産の分
配等で優先権を持つ優先株式のすべてを保有している。
・ 今回の基本合意によれば、両社が株式交換を行うことにより、都は保有して
いる新銀行の株式に応じて東京 TY フィナンシャルグループの株式の割当を
受けて、同グループは新銀行の株式をすべて取得する。
・ その結果、都は同グループの株主となるとともに、新銀行は、同グループの
100%子会社となることが想定されている。
経営統合による株式交換で、都は新銀行東京の株主から東京 TY フィナンシ
ャルグループの株主に変わるということです。
追加出資の際に都議会が付した付帯決議では、追加出資 400 億円を毀損させ
ないように監視することを都に求めており、わが党の代表質問に対して知事は、
400 億円の確保が経営統合の前提であると、答弁されました。
都は現在、追加出資した 400 億円を株式として保有していますが、今回の株
式交換で、これがどのような取扱いとなるのか、伺います。
(Q6)
(A6:部長答弁)
・ 新銀行東京の株式には、普通株式と優先株式の二種類があり、現在、都は、
追加出資の 400 億円を、
日々の株価の変動を反映しない優先株式として保有
している。
・ 株式交換の具体的な内容については今後、新銀行と東京 TY フィナンシャル
グループとの間で協議が行われることとなるが、都としては、新銀行の優先
株式と、同グループの優先株式とが交換されることを想定している。
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都が保有する新銀行東京の優先株が、東京 TY フィナンシャルグループの優
先株に置き換わるということで、この株式交換がどのように行われるかが、追
加出資した 400 億円の確保に直結するということになります。優先株という株
式の特性を踏まえ、400 億円が確保されるよう、しっかりと協議を進めていた
だきたいと思います。
次に、基本合意では、新銀行と東京 TY フィナンシャルグループは、都内の
中小企業の育成・支援のために、都と幅広い連携について検討していく、とし
ています。他県でも、地域により連携内容は異なるようですが、地方公共団体
と金融機関との間で幅広い連携を行っている事例があるようです。
都はこれまでも、信用金庫、信用組合を含め、数多くの都内金融機関と連携
し、制度融資などの仕組みを通じて、中小企業への金融支援策を展開していま
す。こうした支援に加え、志を同じくする金融機関が、都と連携して経営支援
や販路の開拓など様々な中小企業支援に取り組んでいくことは、施策の幅を大
きく広げることになると考えます。
そこで、基本合意に掲げられた、都と新銀行、東京 TY フィナンシャルグル
ープとの連携について、都はどのように捉えているのか伺います。(Q7)
(A7:部長答弁)
・ ご指摘の通り、
都は都内の金融機関と連携して制度融資を始めとする金融支
援策に取り組んでいる。
・ 都は、多数の中小企業と密接な取引関係を持つ、地域の金融機関と連携する
ことにより、中小企業支援を推進していくことが可能となると考えており、
新銀行東京もそのためのチャネルの1つであった。
・ 今回の基本合意においては、
例えば中小企業向け制度融資の推進、
創業支援、
事業再生支援、
海外展開支援などの中小企業支援策に関する都との連携につ
いて幅広く検討していくとしている。
・ こうした連携は、新銀行のこれまでの設立理念や、これまでの取組を受け継
いでいくためには重要なことであると考えている。
・ 都としても、今後、その具体的な内容について検討していきたい。
具体的な内容についてはこれから、ということですが、中小企業支援のチャ
ネルの1つが充実されることは、中小企業支援の更なる推進に役立つものと考
えます。都は連携についてもしっかりと検討し、幅広い中小企業支援に取り組
んでもらいたいと思います。
先日の本会議で舛添知事は、中小企業支援において金融機関の力を活用する
ことが不可欠だと答弁されました。都が東京 TY フィナンシャルグループの株
主となることで、金融機関との幅広い連携が可能となりますが、それをどう生
かして更なる中小企業振興に繋げていくかは、今後の都の課題だと言えます。
ぜひ、しっかりと取り組んでいただきたいと思います。
最後に、今回の経営統合に当たっての、かって新銀行東京の執行役員として
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(H23 年 8 月~H25 年 7 月)経営再建と中小企業を支援する現場に立ち、いわば
苦薬をともにしてきた山本局長の所見を伺います。
(Q8)
(A8:局長答弁)
・ 東京の活力の源泉である中小企業の支援は、都の最重要課題の1つである。
・ 中小企業支援を設立理念として開業した新銀行東京は、
その後経営危機に陥
ったが、400 億円の追加出資を議会に認めていただいたことにより、資金繰
りに苦しむ数多くの中小企業の事業の継続が可能となるとともに、新銀行の
経営自体も、寺井前社長をはじめとする経営陣や行員の努力もあり、再建に
目処をつけることができた。
・ 中小企業支援をより一層実効あるものにしていくためには、
個々の中小企業
との接点が多く、長年にわたる取引関係を通じてその実情を熟知した地方銀
行や信用金庫、信用組合などの金融機関の力を欠くことができない。
・ 新銀行と東京 TY フィナンシャルグループは経営統合に向けた検討を開始し
たところであるが、
同グループの持つネットワークと金融サービス機能によ
り、都の中小企業施策をより効果的に展開することができるものと考える。
・ 今回の経営統合により、新銀行の設立理念が継承されることで、中小企業振
興の一層の発展に資するものとなることを確信している。
ここまで、新銀行東京の果たしてきた役割、今後の経営統合への道筋を明ら
かにしてきました。局長からも、今回の経営統合は、都が撤退するということ
ではなく、引き続き中小企業支援のために新たな金融グループを活用していく
という決意を伺うことができ、大変心強く感じました。
最後に一点、金融機関ばかりではなく、会社を動かすのは“人”であると私
は考えます。経営統合に合わせて、万が一、人員整理などが行われれば、新銀
行の行員のモチベーションは下がり、せっかく中小企業支援の更なる推進のた
めにと選択した経営統合が「画に描いた餅」ともなりかねません。行員の雇用
問題にも十分な配慮をいただくことを要望しておきます。
今回の経営統合が、中小企業振興をますます発展させるものとなることを大
いに期待し、その実現に向けて「金融監理部」はしっかりと交渉のゆくえを注
視していくよう精力的に取り組まれることを求め、質問を終わります。
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