LPガス事業団広報 No.201 LPガス保安優良事業者を訪ねて 今回は新潟市に本社を置く「越後プロパン株式会社」を訪 問し、小出薫社長にお話を伺いました。 ───── 訪問先 ───── 越後プロパン 株 式 会 社 小出 薫 社長 jjjjjj 「LPガスを広めるための保安」に取り組む jjjjjj (編):御社はこれまで保安優良LPガス販売 ように感じます。当社でも保安に対する 事業者として、経済産業省や高圧ガス保 意識を高めるために、事故速報を毎日確 安協会などの表彰を受賞されています。 認し社員に徹底して、地道ですが日頃か LPガス保安に対する取り組みについて らLPガス保安の土壌づくりを行ってい お聞かせください。 ます。また、ハード面ではガス警報器や 小出:われわれはLPガスというクリーンな ガス放出防止型高圧ホース、Siセンサ 分散型エネルギーを扱っていて、今後大 ーコンロなどの安全機器の普及を計画的 きな役割を担っていきます。しかし、当 に実施しています。ガス放出防止型高圧 然安全でなければお客さまに使っていた ホースについては、地震対策の一環で重 だけません。保安への取り組みはLPガ 点を置いて設置を進めてきて、平成16 スを拡販するための当たり前の「手段」 年の新潟県中越地震から約10年をかけ で、これをおろそかにすればガスを広め て、今春ようやくすべてのお客さまに取 ることが出来なくなります。当社では、 り付けを完了しました。CO事故対策で 社員全員が足並みをそろえて「ガスを広 は、平成23年までに屋内設置の開放式 めていく」使命感を持って、保安に取り 湯沸かし器や風呂釜、安全装置の付いて 組んでいます。 いないガス機器を一掃しようということ で取り組み、 多大な投資も必要でしたが、 達成することができました。 (編):特に重点をおかれていることや苦労さ れていることはありますか。 小出:販売と保安を両輪で取り組んでいかな (編) :集中監視システムを導入されています ければならないのですが、中小規模の事 が、これはいつ頃から取り組まれている 業者が多いLPガス業界では、組織のト のですか。 ップダウンで保安の意識付けをしていく 小出:平成5年から業務用を中心にスタート ことがより重要になってくると思いま させました。ガス警報器・メーター連動 す。しかし、業界ではこの点は少し弱い 遮断機能を付加したシステムを導入し、 ─ 42 ─ LPガス事業団広報 No.201 現在約1万世帯のお客さまの約30%に 普及しています。ここまでの苦労として は、他社さんも同じだと思いますが、ア ナログからデジタル、光への電話回線方 式の変遷に伴って、システムを変更しな ければならず、ハード面の費用負担が大 保安優良事業者表彰を連続受賞 変でした。お客さまの数も増えたり減っ たりしますので、毎年計画を立てて集中 の安全な使い方の注意点を書いたチラシ 監視システムの設置を進めていますが、 を配送員が持って手渡ししています。特 なかなか普及率が上がっていないのが現 にコンロは、うっかりした消し忘れなど 状です。 でガス事故に直接つながることもあるの で重点的に行っています。併せて、 「お (編):これまで集中監視システムがあったお 手伝いチラシ」を作成して、ガス以外で かげで事故を防げたというような事例は も何か困った事があったらお手伝いをさ ありますか。 せていただくようにして、高齢者のお客 さまとのコミュニケーションを図りなが 小出:業務用のお客さまですが、厨房でガス ら、ガスの安全周知を行っています。 漏れがあって、警報器連動機能でガスを 遮断したという通報がセンターから入っ てきたときは、集中監視のメリットを実 (編) :保安についての今後の課題として挙げ ていることはありますか。 感しました。たとえ深夜でも、お客さま の安全を確保できる点で、非常に有効な 小出:最初に申し上げましたが、あくまで 「LPガスを広めるための保安」ですが、 システムだと思います。 保安に力を入れるほどコストがかかると いうジレンマがあって、経営的にはこの (編):集中監視システムの運用はどのように 辺りのさじ加減がなかなか難しい。業界 されているのですか。 小出:当社では岩谷産業さんの集中監視シス の中には、コストがかかるので保安がお テム「テレセーフ」を導入していて、埼 ろそかになっているところもあるようで 玉県にあるセンターからの通報が入っ す。LPガス業界は小さな会社が多いで て、現場で対応するという形です。リア すが、保安の取り組みや周知活動につい ルタイムでお客さまの状況を把握でき、 ても、もっとお互いに情報交換をするな 事故を未然に防げるという保安面のメリ どして業界全体の保安レベルを向上させ ットと同時に、安定供給という点でもお ていく必要があると思います。 客さまのガス使用量、 ガス残量管理など、 配送効率化の点でも有効です。 (編) :新潟県には冬場に雪の多い地区もある と思いますが、雪害事故についてはいか がですか。 (編):こうした保安への取り組みをどのよう にお客さまに周知されていますか。 小出:当社のエリアでは、これまでのところ 小出:法令で定められた周知以外では、高齢 幸い積雪による供給設備の破損等の事故 者世帯を中心に5月と10月に、コンロ には至っていません。しかし、やはり道 ─ 43 ─ LPガス事業団広報 No.201 路交通網がマヒして配送に支障が出た っています。ガス放出防止型高圧ホース り、容器交換の際に苦労したりすること も地震対策だけでなく、雪害による容器 はあります。県協会でも雪害対策のチラ からのガス漏れ対策にも有効だと思いま シを作成しているので、雪の多い地区の す。 お客さまには配布して事故防止対策を図 jjjjjj 予防的な発想で事業者起因の事故をなくす jjjjjj と思います。集中監視だけでなく、保安 (編):保安について行政への要望や意見はあ に力を入れて投資をした事業者に対する りますか。 メリットが、もう少しあってもいいので 小出:自主保安ということでハード面の設備 はないかと思います。 はそろえるためには、やはりコストがか かりますので、今後どこまで投資できる かという問題はあります。会社の規模や (編) :業界全体の保安の現状について思うこ とはありますか。 地域性も違いますので、個々の会社の実 態に応じた安全機器・設備を備えていく 小出:今業界を見ていると、保安にするべき ことしかできないと思います。また、お 投資を顧客の確保に向けていて、紹介業 客さまが他社に切り替えるということが 者へのマージンや無償工事などで、保安 頻繁にあると、事業者としてもどうして にコストをかける余力がなくなっている も自主保安への投資が消極的になること ように思います。保安にコストをかけづ も考えられます。例えば携帯電話のよう らいのは分かりますが、残念ながらLP に、ある一定の供給契約期間のしばりの ガスは一般的に「危ない」と認識されて ようなものがあれば、安定的な保安への います。もっと保安を大事にしないと、 投資ができると思いますが。自主保安を これから電力・都市ガス市場が自由化さ 進めていく上で、行政にはその辺りの実 れ、ますます競争が激しくなってくる中 状も知っていただきたいと思います。 で果たして生き残れるのか。危機感を感 じています。 (編):国の保安対策指針では、集中監視シス テムの導入が推奨され、普及率は認定販 (編) :LPガス事故の件数も高止まりしてい ます。 売事業者の要件にもなっています。 小出:認定販売事業者制度は、なかなかハー 小出:事故件数については、やはり事業者が ドルが高くて当社も認定を受けていない 予防的な発想を持って事故防止に取り組 のですが、全国的にもあまり認定事業者 まなければ、今後もなかなか事業者に起 の数は増えていないようです。集中監視 因する事故は減っていかないでしょう。 自体は優れたシステムですが、設置に対 期限管理も本来当然のコストなのです するインセンティブが少ないように感じ が、予防的な考え方がないと、設備を更 ます。例えば、集中監視を設置するお客 新して経年劣化による事故を防ぐという さま側のインセンティブなど、さらなる 発想になりにくい。さらに、顧客の切り 普及のためには何か違った施策が必要だ 替えで、設備の管理が難しくなってしま ─ 44 ─ LPガス事業団広報 No.201 うという問題もあります。 (編) :今日までで印象に残っている出来事は ありますか。 (編):改善策としてはどのようなことが考え 小出:苦労話になりますが、以前千葉県のガ ス会社に勤務していたことがあって、当 られるでしょうか。 小出:LPガス業界は小規模な会社が多いの 時はとにかくオール電化攻勢が非常に勢 で、一事業者だけでやれることは限られ いのあった時代でした。電化対抗の営業 ています。各都道府県協会を中心に組織 が毎日ハードで、夜中まで働いていたこ 立った教育や訓練をしていくことで、事 とを覚えています。しかし当時、東京電 業者に起因した事故リスクを減らすこと 力に対抗してガスのPRをしていたベー につながると思います。保安に対する意 スがあったので、情勢が変わった現在、 識は事業者によって温度差がありますの ガスが盛り返すことができているのかな で、全体の保安レベルアップを図るため と思います。その点、新潟県ではガスの に、協会の果たす役割は大きいと思いま PRがまだまだ足りていないと反省して す。 いまして、今後力を入れていかなければ いけないと思っています。 SSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSS 「LPガスを広めるための保安」との考えから、社員全体に保安に対する意識付けを徹底する 越後プロパン。電力・ガス市場の自由化が目前に迫った今、業界の保安の現状に対する危機感を 感じる小出社長の言葉が印象的だった。業界全体の保安に対する意識改革、レベルアップのため に都道府県協会の果たす役割は大きい。今後、 エネルギー市場での競争がより一層激しくなる中、 安全・安心なLPガスがより一層広まることに期待したい。 (会社の基本情報) 社 名 所 在 地 創 立 資 本 金 従業員数 事業内容 : : : : : : 越後プロパン株式会社 新潟市秋葉区滝谷町2番4号 昭和47年(1972年) 1月 2,000万円 41名 LPガス販売、一般高圧ガス の販売、石油類の販売、都市 ガス業務の受託、冷暖房・厨 房関連設備等の販売及びリー ス、太陽光発電システム事業、 住宅リフォーム事業、生活及 び健康関連商品の販売、セキ ュリティ事業ほか 事 業 所 : 本社・新津営業所 五泉営業所・ショールーム 新潟営業所 水原営業所 ─ 45 ─
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