明治期東京における住所照合システムを用いた史資料の地図化

D09
Research Abstracts on Spatial Information Science
CSIS DAYS 2015
明治期東京における住所照合システムを用いた史資料の地図化
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石川 和樹 1,中山 大地 2
首都大学東京 都市環境学部,2 首都大学東京
Email: <[email protected]>
(1) 目的: 明治期の史資料には,住所の表記がしば
しば見られる.これらの住所を空間情報としてデ
ータ化できれば,これまで時間のかかる作業であ
った歴史住所の地図化を,GIS を用いて容易に
行うことが可能となる.そこで本研究では,明治期
の住所に対して住所照合(アドレスマッチング・ア
ドレスジオコーディング)を行い,住所を位置座標
に変換することで,明治時代の住所の地図化を
試みた.住所を位置座標に変換する際には,筆
者が開発した「明治期東京住所照合システム」を
用いた.これは,昭和 61 年(1986)発行の「東京
郵便局 東京市十五區番地界入地圖(明治 40 年
調査)」を用いて作成した住所データベースをもと
に,入力された住所を位置座標に変換するシス
テムである.
(2) 方法: 「国立国会図書館近代デジタルコレクショ
ン」にて公開されている史資料から明治時代の住
所を抽出し,csv 形式の住所リストを作成した.こ
のファイルをシステムへ送信すると,座標データ
を伴った住所リストに変換されて返ってくる.その
座標データに基づき,ArcGIS10.2.2 上でポイント
データを作成し地図化を行った.
(3) 結果: 本研究では,国立国会図書館近代デジタ
ルコレクションより,全国書籍商名簿(1907 年発
行)を用いて地図化を行った例を示す.この書籍
は,当時の全国の書店情報を網羅したもので,そ
の中から東京市 15 区内の住所のみを抽出して地
図化を行い,国土地理院の地理院地図にオーバ
ーレイした.図 1 は東京市全域の書店の分布を示
したものである.現在でも書店が多く立地すること
で有名な神田神保町周辺をはじめ,日本橋や京
橋周辺でも書店の集中している地域が確認できる.
一方,本所区や深川区などでは書店がほとんど立
地していなかったことがわかる.図 2 は神田神保
町周辺を拡大したものである.図 1 のような広域の
地図では確認できないより詳細な書店の位置が示
されていることがわかる.
(4) 使用したデータ:
「国立国会図書館近代デジタルコレクション 全
国書籍商名簿(1907)」(2015 年 9 月 10 日閲覧)
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/900109
(5) 参考文献:
人文社編集部編(1986)「東京市十五區番地界
入地圖」,人文社.
図 2: 神田神保町周辺における書店の分布
図 1: 東京市全域における書店の分布
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