Copyright by ITEC,inc. 2015 平成 27 年度春期 データベーススペシャリスト試験分析速報 2015,4,22 (株)アイテック IT 人材教育研究部 1.試験全体講評 新制度になって 7 回目(従来の試験から通算すると 21 回目)のデータベーススペシャリ スト試験が行われました。平成 27 年度データベーススペシャリスト試験の午前Ⅱ問題は, 新作問題が若干増えました。難易度は,データベースの一部やシステム開発技術,ソフト ウェア開発管理技術がやや難しく,前回よりもやや難といえるでしょう。午後Ⅰ記述式は, 問 1,2 がデータベースの設計,問 3 がバッチ処理の性能設計について出題されました。問 題文のボリュームと設問数は,前回よりやや減少しましたが,3 問とも前回同様にやや難し く,難易度は前回並みだったといえるでしょう。午後Ⅱ記述式は,問 1 がデータベースの 物理設計,問 2 がデータモデル作成について出題されました。ボリュームや設問数はほぼ 前回並みですが,問 1,問 2 ともに前回よりもやや難だったといえるでしょう。 2.午前Ⅰ(共通知識)試験講評 共通知識として出題範囲の全分野から 30 問が出題される午前Ⅰ試験ですが,出題分野の 内訳はテクノロジ分野が 17 問,マネジメント分野が 5 問,ストラテジ分野が 8 問で,出題 数は同じです。 今回の試験は平成 25 年の 10 月に発表された“セキュリティ分野の出題強化”の方針で 行われた 3 回目の試験で,午前試験でのセキュリティ問題の出題数は 4 問で前々回及び前 回と同じでした。 従来どおり,問題は 30 問全てが同時期に実施された応用情報技術者試験 80 問からの抜 粋になっています。今回は用語問題と考察問題が減り,計算問題と文章問題が増えました。 出題内容としては基礎理論の計算問題がやや難しく,その他の分野もあまり出題されない 内容が幾つかあり,全体としては少し難しく感じられた問題だったといえます。 今回の試験で新傾向問題といえるものとしては次の問題で,前回よりも増えています。 問 5 物理サーバのスケールアウト 問 8 拡張現実の例 問 13 JIS Q 31000 における残留リスクの定義 問 14 NIST 定義によるクラウドサービスモデル 問 25 IT 投資ポートフォリオの目的 問 26 コモディティ化の説明 3.午前Ⅱ(専門知識)試験講評 平成 27 年度の午前Ⅱ問題は,共通キャリアスキルフレームワークのデータベースから 19 問(前回と同数)が出題され,残りは,セキュリティから 2 問,コンピュータ構成要素, システム構成要素,システム開発技術,ソフトウェア開発管理技術から各 1 問が出題され -1- Copyright by ITEC,inc. 2015 ました。午前Ⅱは,新作問題が若干増えましたが,従来通り,既出や類似問題も多く見ら れます。データベースでは,問 2(会計取引の仕訳のデータモデル) ,問 8( “社員取得資格” に対する左外結合の SQL 文) ,問 11(観測数を 0 とするデータを明示的に挿入する SQL 文) ,問 18(NoSQL における結果整合性)が新作問題と思われますが,残りの 15 問は既 出・類似問題でした。データベース分野以外では,システム開発技術の 1 問とソフトウェ ア開発管理技術からの 1 問が新作問題のように思います(デーベーススペシャリスト試験 では初出題) 。データベースの出題分野は,データモデルが 3 問,正規化が 2 問,SQL が 3 問,関係代数が 2 問,データ操作が 1 問,トランザクション処理が 6 問,データベース応 用が 2 問であり,今回は各分野から満遍なく出題されました。 データベースでは,新作問題の問 2(会計取引の仕訳のデータモデル),問 8(“社員取得 資格”に対する左外結合の SQL 文) ,問 11(観測数を 0 とするデータを明示的に挿入する SQL 文) ,問 18(NoSQL における結果整合性)などがやや難しかったように思います。ま た,システム開発技術の問 24(アーキテクチャパターンのブローカ)やソフトウェア開発 管理技術の問 25(マッシュアップの例)もやや難しく,全体的には難易度は前回よりもや や難といえるでしょう。 4.午後Ⅰ試験講評 平成 27 年度の午後Ⅰ記述式は, 問 1 がデータベースの設計 (正規化とデータベース設計) , 問 2 もデータベースの設計(データベース設計と SQL) ,問 3 がバッチ処理の性能設計につ いて出題されました。問題文のボリュームと設問数は,3 問とも前回よりやや減少していま す。問 1 は,前回同様に,正規化とデータベース設計の問題でした。問 2 は,前回はデー タベースアクセスの同時実行制御が出題されましたが,今回はデータモデル作成をメイン としたデータベースの設計の問題が出題されました。問 3 は,前回の問 2,問 3(運用・性 能評価・SQL)と同様に,バッチ処理の性能設計について出題されました。午後Ⅰの問題 は,前回は 3 問ともやや難の問題でしたが,今回も同様の傾向であり,午後Ⅰ記述式は全 体的には前回並みの難易度だったといえるでしょう。 問 1 データベースの設計 設問 1 は,全ての候補キーの列挙と部分関数従属性・推移的関数従属性の有無・その具 体例,正規形名と第 3 正規形でない関係の第 3 正規形への分解,設問 2 は,図 2 の空欄 a ~d への属性名の記入,図 1 へのリレーションシップの記入,表 2 中の空欄ア,イに入れる 更新処理の内容記述,設問 3 は, “出荷”, “出荷明細”の不具合によって実現できない出荷 業務の業務内容,不具合を解消した関係スキーマについて出題されました。設問 1 は正規 化についての出題でしたが,設問 2,設問 3 は前回の設問 2 と同様にデータベース設計の問 題でした。設問 3 は前回のような関係代数演算は出題されませんでした。問 1 は,従来の データベース設計の問題(従来は問 2 だった)に置き換わったような印象です。難易度的 -2- Copyright by ITEC,inc. 2015 には,前回並みといえるでしょう。 問 2 データベースの設計 設問 1 は,図 2 の空欄 a~h への外部キーの記入,図 1 へのリレーションシップの記入, 設問 2 は,図 3「案件の集計用の SQL 文」中の空欄ア~シに入れる適切なテーブル名又は 列名,受注見込額の合計と売上見込額の合計(①と②の SQL 文)が一致しない理由につい て出題されました。前回の問 2(同時実行制御)はやや難の問題でしたが,今回の問 2 もデ ータモデルに関する業務ルールがやや難であり,難易度的には前回並みといえるでしょう。 問 3 バッチ処理の性能設計 〔売上登録処理の現状調査及び見直し〕の空欄ア~キに入れる適切な字句,ジ 設問 1 は, ョブ 2 を多重処理するとデッドロックが発生する理由,ジョブ 1 のソート順変更後にジョ ブ 2 で“利用残高”テーブルの読み込まれるページ数が減った理由(読み込まれるページ 数とページ数が減った理由) ,設問 2 は, “CKPT”テーブルのテーブル構造,同期を取る処 理を図 3 のどの番号の後に挿入すべきかその番号,図 3 の③の SELECT 文の WHERE 句 において不要な述語とその理由,他のトランザクションに排他ロック待ちタイムアウトを させないために N 行更新するごとに同期を取らなければならないがその N を見積もる計算 式(T,A,B,C を用いて空欄 a,b に適切な式を入れる)について出題されました。今回 の問 3 は,前回の問 2,問 3(運用・性能評価・SQL)と同様の問題であり,前回同様にや や難でした。難易度的には前回並みといえるでしょう。 5.午後Ⅱ試験講評 平成 27 年度の午後Ⅱ記述式(事例解析)は,問 1 がデータベースの物理設計,問 2 がデ ータモデル作成の問題でした。問 1 は,前回に引き続き,物理設計の問題でした。問 2 は, 前回はどちらかというとデータベース設計系の問題でしたが,今回は従来の問 2 と同じよ うなデータモデル作成の問題が出題されました。問題文のボリュームと設問数は,問 1,問 2 ともに前回とほぼ同程度でした。問 1 は,物理設計の問題としては標準的な問題であり, 前回よりもやや難易度アップといえるでしょう。 問 2 も業務内容が前回よりも複雑であり, 問 1,問 2 ともに前回よりやや難だったといえるでしょう。 問 1 データベースの物理設計 問 1 は,地域医療情報システムを対象にした物理設計についての出題でした。設問 1 は, 結合対象テーブル数を最小にするために一つのテーブルに列を追加(テーブル名と列名), “患者基本”テーブルのデータ所要量を求める記述の空欄 a~e の穴埋め(適切な数値) , 表 6 の“患者詳細”テーブルの定義表の完成と参照制約定義の対象とすべきテーブル名, “オ ーダ”の実装についての案に関する表 4(内結合,和結合)の完成及び検査制約の空欄イ, -3- Copyright by ITEC,inc. 2015 ウの穴埋め,設問 2 は,表 8 と表 9 の問合せの実行結果でどのような場合に集計値の相違 が発生するか,表 2 処理 6 の(c)に該当する患者 ID の集合を得るための集合演算,表 13「処 理 1~6 の参照テーブル(作成中) 」の完成,設問 3 は,表 14(索引による探索対象ページ 数試算値)の完成,表 15(物理分割案の探索対象ページ数試算値)の完成,物理分割の案 ①について区分内索引として患者 ID をキーとするクラスタ索引を使用した場合に試算値が 案 Y と異なった理由について出題されました。今回の問 1 は,前回の問 1 と同様の問題で あり,物理設計の問題としては標準的な問題でしたが,前回がやや平易な問題だったこと から,難易度は前回よりもややアップといえるでしょう。 問 2 データベースモデル作成 問 2 は,部品在庫の倉庫管理を対象にしたデータモデル作成の問題でした。設問 1 は, 図 1 の“入荷予定,入荷,入庫に関するトランザクション領域”の概念データモデルの完 成,図 2 の“入荷予定,入荷,入庫に関するトランザクション領域”の関係スキーマの完 成,設問 2 は,図 1 の“マスタ及び在庫の領域”について〔現行システム及び現行業務に 対する変更内容〕を反映した概念データモデルの完成,その領域に追加したエンティティ タイプの関係スキーマの記述,図 2 の“マスタ及び在庫の領域”について変更すべき関係 スキーマの関係名と新たに必要となる属性名,図 1 の“引渡要求,出庫,引渡に関するト ランザクションの領域”について〔現行システム及び現行業務に対する変更内容〕を反映 した概念データモデルの完成,設問 3 は,表 2 中の太枠で示した“マスタ系のデータの移 行”の完成(空欄穴埋め) ,表 2 中の空欄 a~c の穴埋めについて出題されました。今回の 問 2 は,業務内容が前回よりも複雑であり,難易度的には,前回よりやや難といえるでし ょう。 以上 -4-
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