2015年度 シラバス

日本女子大学大学院理学研究科数理・物性構造科学専攻(数学分野)
The Graduate School of Japan Women’s University
Graduate School of Science
Division of Mathematical and Physical Sciences, Master’s and Doctoral Course
Ⅰ.講義内容(日本女子大学)
代数構造論Ⅱ(表現論)
ALGEBRAIC STRUCTURE II (REPRESENTATION THEORY)
後期 2 単位
教授
栗原 章
【授業の概要と方法】
Riemann 面、代数曲線、有限体上の代数曲線、合同ゼータ関数、算術的曲線を対象とする。
【授業の到達目標】
到達目標(1) Riemann 面から発展した歴史を理解する。
到達目標(2) 代数曲線上の点の意味を理解する。
到達目標(3) ゼータ関数の重要性を理解する。
到達目標(4) 有限体上での計算に慣れる。
【授業計画】
(1)解析関数、Riemann 面
(9)invariant
(2)代数関数体
(10)偏角の分布
(3)代数曲線と代数多様体
(11))算術的曲線-1
(4)超楕円曲線
(12)算術的曲線-2
(5)genus, Riemann-Roch の定理
(13)算術的曲線-3
(6)有限体
(14)Cartier 作用素
(7)有限体上の代数曲線
(15)有限体上の算術的曲線
(8)Frobenius 写像、合同ゼータ関数
【成績評価の方法】
レポートによる。
【授業外で行うべき学修(準備学修・事後学修等)
】
今までに学んだ代数や解析の復習をしておくことが望ましい。
【使用テキスト】
なし。
【参考書(参考資料等)
】
なし。
【その他(受講生への要望)
】
なし。
幾何構造論Ⅰ(位相幾何学) GEOMETRICAL STRUCTURE I (GEOMETRICAL TOPOLOGY)
後期 2 単位
教授 林忠一郎
【授業の概要】
ホモロジー理論を学ぶ。細かい証明はせずに、定義と定理の意味を説明する。大雑把に言うと、ホモロジー群
は位相空間(図形)の穴の数を数える。高次元などの目に見えない図形であっても、機械的にホモロジー群を計
算することができる。
学部の2年次または3年次のホモロジー群の授業では胞体分割を用いて感覚的に1次元と2次元のホモロジー
群を定義し、行列の基本変形を用いて直接計算する方法を学んだ。学部の授業を履修していない学生もいるので、
それを最初の2回の授業で復習する。
しかし、学部の2年次または3年次で学んだ方法は一般のn次元には通用しない。3角形や4面体の概念を高
次元に拡張したn次元単体というものを考え、単体たちを貼り合わせて得られる図形に対して、n次元ホモロジ
ー群を定義することができる。図形の単体分割は胞体分割の特別な場合であり、計算方法は学部のときと変わら
ない。そして、同じ図形の2つの異なる分割に対するホモロジー群は群として同型になる(位相不変性)
。しかし、
その証明は簡単ではない。
しかし、単体分割できない図形も世の中には存在する。そこで、単体の代わりに単体からの連続写像を考える
と特異ホモロジー群が定義される。これの位相不変性は自明であるが、その代わり、計算するのが容易ではない。
計算にはマイヤー-ヴィートリス完全系列や切除定理を用いる。
コホモロジー群についても話したい。
【授業の到達目標】
1.幾何学的対象(図形)の特徴を代数を用いて捉えるという発想を学ぶ。
2.ホモロジー群を計算できるようになる。
3.ホモロジー群が図形のどのような特徴を捉えるのか学ぶ。
【授業計画】
1.胞体分割を用いた1次元ホモロジー群の感覚的な定
9.マイヤー-ヴィートリス完全系列
義と計算
2.胞体分割を用いた2次元ホモロジー群の感覚的な定
10.コホモロジー群
義と計算
3.単体、単体の向き、単体複体、境界準同型写像、n
11.多様体とポアンカレの双対定理
次元ホモロジー群の定義
4.単体分割された図形の具体例のホモロジー群の計算
12.交差理論の初歩
5.有限生成加群の分類定理
13.n次元特異ホモロジー群の定義
6.Z_2 係数のホモロジー群
14.特異ホモロジー群の具体例の計算
7.相対ホモロジー群
15.n次元特異ホモロジー群の応用
8.切除定理
【成績評価の方法】
レポートによる。試験は行わない。
【授業外で行うべき学修(準備学修・事後学修等】
配布するプリントを自分で読む。授業のノートを見直す。レポート課題に取り組み、提出する。
プリントの問題を解く。分からないときは、学生仲間で議論したり、林の研究室に質問しに来る。
証明を知りたい場合は、下記の本を調べる。
【使用テキスト】
なし。
【参考書(参考資料等)
】
以下の本を図書館で探して下さい。
C.ナッシュ、S.セン著、「物理学者のためのトポロジーと幾何学」、マグロウヒル
田村一郎著、「トポロジー」、岩波全書
河田敬義編、「位相幾何学」、岩波書店
服部晶夫著、「位相幾何学I」、岩波講座 基礎数学
【その他(受講生への要望)
】
無地のノートと色ペンを3色以上用意して下さい。
幾何構造論Ⅲ(リーマン多様体) GEOMETRICAL STRUCTURE III (RIEMANNIAN MANIFOLDS)
前期 2 単位
講師 藤田玄
【授業の概要】
可微分構造を兼ね備えた位相空間として多様体の定義をし、
その例を解説したうえで接空間や写像の微分など関連する基本的な概念を説明する。
引き続き、多様体上の付加構造として、Riemann 計量、シンプレクティック構造、
Lie 群の作用についての解説をする。
【授業の到達目標】
・多様体の定義を理解する。
・多様体の例をあげられるようになる。
・多様体上の幾何構造としてのRiemann計量、シンプレクティック構造、群作用について理解する。
【授業計画】
1. 位相空間論の復習
9. シンプレクティック多様体とその例
2. 多様体の定義
10. 中間まとめ
3. 多様体の例
11. Lie 群と不変計量
4. 接ベクトルと接空間
12. Lie 群の例と古典群
5. 多様体の間の滑らかな写像とその微分 13. 群の作用と軌道空間
6. Riemann 計量と Riemann 幾何学
14. 等質空間とその構造
7. Riemann 接続と曲率テンソル
15. まとめ
8. 曲面論と Riemann 幾何学の関係
【成績評価の方法】
中間および期末レポート
【授業外で行うべき学修(準備学修・事後学修等】
線形代数、多変数の微積分および位相空間論について復習しておくことが望ましい。
【使用テキスト】
特に指定しない。必要に応じてプリントを配布する。
【参考書(参考資料等)】
・松本幸夫「多様体の基礎」東大出版
・服部晶夫 「多様体のトポロジー」 岩波書店
・小林俊行、大島利雄「Lie 群と表現論」岩波書店
解析構造論 I(エルゴード理論) ANALYSIS STRUCTURE THEORY I (ERGODIC THEORY)
後期 2 単位
准教授 夏井 利恵
【授業の概要】
古典統計力学に端を発している「エルゴード理論」とよばれる数学理論について学ぶ。
エルゴード理論は、確率論、数論、関数解析、幾何学など様々な分野と密接な関りを持っている。
本授業では、エルゴード理論入門として基礎的な内容を紹介する。
【授業の到達目標】
1.エルゴード理論の土台にある、確率論、測度論、力学系理論についてより深く理解ができる。
2.エルゴード理論入門として、その基礎について理解ができる。
【授業計画】
1. 確率空間
9. 保測変換のエントロピー
2. 保測変換と flow
10. Shannon-McMillan の定理
3. 同型問題
11. Kolmogorov 変換
4. エルゴード定理
12. Sinai の定理
5. エルゴード性と混合性
13. Bernoulli 変換
6. エルゴード分解
14. Markov 変換
7. S-表現
15. まとめ
8. Rohlin の定理
【成績評価の方法】
レポートとテストで各50%ずつ。
【授業外で行うべき学修(準備学修・事後学修等】
エルゴード理論は確率論、測度論などを基礎としているので、これらの復習を期待する。
【使用テキスト】
エルゴード理論入門 十時 東生著 共立出版 他
【その他(受講生への要望)
】
出席、並びに、講義への参加度など積極的な意欲を評価する。
数理構造論 III(関数方程式)
MATHEMATICAL STRUCTURE III (DIFFERENTIALEQUATION)
前期 2 単位
教授 愛木 豊彦
【授業の概要】
偏微分方程式を取り扱う方法の一つに,関数空間上の取り扱いがある。本講では,まず,線形な境界条件を
伴う楕円型方程式に対する境界値問題を紹介した後,その問題の解を記述する弱形式を定義する。そして,
弱形式に対する解の存在や一意性を議論する。解の存在には,ヒルベルト空間におけるリースの定理を利用
する。また,変分形式による非線形境界条件等の取り扱いについても考察する。
【授業の到達目標】
到達目標①楕円型方程式に対する弱形式の意味が理解できる。
到達目標②リースの定理を用いた解の存在証明が理解できる。
【授業計画】
1. 楕円型方程式に対する境界値問題の導出
9. リースの定理を用いた境界値問題の解の存在証明
2. 境界値問題の弱形式
10. 非線形境界条件の意味と変分形式
3. 弱微分の定義と基本的性質
11. 単調作用素の基本的性質
4. ソボレフ空間の定義と基本的性質
12. 単調作用素の近似
5. ヒルベルト空間の基本的性質
13. 単調作用素を用いた変分形式に対する解の存在証明
6. ヒルベルト空間における線形作用素
14. 単調作用素を用いた変分形式に対する解の一意性
7. ヒルベルト空間における射影作用素
15. 変分形式の応用としての障害物問題
8. ヒルベルト空間におけるリースの定理
【成績評価の方法】
レポートによって評価する。
【授業外で行うべき学修(準備学修・事後学修等】
毎回,講義ノートを作成し,不明な点は次回の講義で,質問すること。
【使用テキスト】
授業時にプリントを配布します。
応用数理 I(確率論) APPLIED MATHEMATICAL SCIENCE I(PROBABILITY THEORY)
後期 2 単位
教授 今野良彦
【授業の概要】
確率論と確率過程の基礎概念をやさしく丁寧に講義することを目的とする。
【授業の到達目標】
① 件付期待値について説明ができる。
② 離散時間マルチンゲールについて説明ができる。
③ 連続時間確率過程について説明ができる。
④ 伊藤解析の基礎的な事項について説明ができる。
【授業計画】
1.ガイダンス.確率空間についての復習
2.事象の条件付確率
3.離散時間確率変数の条件付き期待値
4.任意の確率変数の条件付き期待値
5.完全加法族の条件付き期待値
6.条件付き期待値の性質
7.離散時間マルチンゲール:フィルトレーションについて
8.離散時間マルチンゲール:停止時間について
9.離散時間マルチンゲール:最適停止定理について
10.マルチンゲールの不等式について
11.マルチンゲールの収束定理について
12.連続時間確率過程について
13.伊藤積分について
14.伊藤の公式について
15.総まとめ
【成績評価の方法】
レポートで評価。
【授業外で行うべき学修(準備学修・事後学修等】
復習をしっかりとすること。
【使用テキスト】
Zdzislaw Brzezniak and Zastawiak 著「Basic Stochastic Processes」
、Springer
数理情報科学 I(計算数学 I)
MATHEMATICAL STRUCTURE OF INFORMATION THEORY I (COMPUTATIONAL ATHEMATICS
I)
前期 2 単位
教授 東海林 まゆみ
【授業の概要】
流体中を一定の速度で動く物体の周りの粒子がどのような軌道を描いて動くか、という問題を考える。固定した
物体の周りを流れる流体粒子の運動に関しては種々の研究がなされているが、
上記のような非定常問題に関して
はあまり研究結果は多くない。
本講義ではこのような問題を考える際に必要な基礎理論を簡単に紹介し、
下記の具体例の計算方法と数値計算結
果を紹介する。
【授業の到達目標】
到達目標①:流体力学の基礎を理解すること。
到達目標②:偏微分方程式と分岐問題の数値シミュレーションの一端に触れること。
【授業計画】
1.イントロダクション:流体力学とは
9. 完全流体中を動く球周りの粒子の運動-理論
2.さまざまな用語とその定義
10.上記の数値シミュレーションと結果の紹介
3.完全流体の力学
11.Stokes 流中を動く球周りの粒子の運動-理論
4.縮まない流体の渦無し運動
12.上記の数値シミュレーションと結果の紹介
5.縮まない流体の2次元の渦無し運動
13.Brinkman 流中を動く円柱周りの粒子の運動-理論
6.等角写像の応用と様々な流れ
14.上記の数値シミュレーションと結果の紹介
7. 完全流体中を動く円柱周りの粒子の運動-理論 15.数値計算に関する注意(とくに二重指数関数型数値積
8. 上記の数値シミュレーションと結果の紹介
分公式について)
【成績評価の方法】
レポート課題提出(0.8)と授業中の質疑応答など(0.2)による総合評価。
【授業外で行うべき学修(準備学修・事後学修等】
毎回講義ノートを復習し、疑問があれば次回の講義の際に質問すること
【使用テキスト】
とくになし
【参考書(参考資料等)
】
今井功著:流体力学(前篇)
、裳華房
岡本久著:ナヴィエ‐ストークス方程式の数理、東京大学出版会
数理情報科学 III(計算機代数)
MATHMATICAL STRUCTURE OF INFORMATION THEORY III(ALGEBRA FOR COMPUTATION)
前期 2 単位
教授 中島徹
【授業の概要】
楕円曲線とは特異点をもたない平面 3 次曲線であり、その上の点には数の場合と類似の加法を定義すること
が可能である。楕円曲線は数学や情報分野の幅広い分野と関係するが、この講義では近年発展の著しい楕
円曲線の暗号への応用について解説する。
【授業の到達目標】
①楕円曲線上の点の加法の計算ができるようになる。
②有限体上の楕円曲線の有理点の意味を理解出来るようになる。
③楕円曲線を用いた暗号の構成について説明できるようになる。
。
【授業計画】
1. イントロダクション
9. 複素数体上の楕円曲線
2. 公開鍵暗号
10. 有限体での楕円曲線
3. RSA 暗号
11. 楕円曲線の有理点
4. 有限体
12. 楕円曲線暗号
5. El Gamal 暗号
13. 楕円曲線暗号の解読
6. 平面曲線
14. 楕円曲線での離散対数問題
7. 楕円曲線
15. フォローアップ
8. 楕円曲線での加法
【成績評価の方法】
授業中に出す課題と期末のレポートの結果を総合的に判断して評価する。評価の比率は、課題 50%、レポート 50%。
【授業外で行うべき学修(準備学修・事後学修等】
授業で配布する代数学 III の講義録を読んでおくことが望ましい。
【使用テキスト】
授業中に資料を配布する。
【参考書(参考資料等)
】
「数論アルゴリズムと楕円暗号理論入門」N.コブリッツ著 (シュプリンが―ジャパン)
【その他(授業外に行うべき準備学修など受講生への要望)
】
コンピューターを使用する可能性があるのでコンピューター室のアカウントを取得しておくこと。
数理情報科学 VI(計算数学 IV)
MATHEMATICAL STRUCTURE OF INFORMATION THEORY VI (COMPUTATIONAL
MATHEMATICS IV)
前期 2 単位
教授 金山寛
【授業の概要】
数値解析の研究遂行に必要な内容を授業形式で行う.
【授業の到達目標】
数物科学科で数学を3年間にわたって学び深めてきた.特論では学んだ数学が関連する諸科学・諸部門でどのよ
うな意味・関連をもっているかを広く学び,数学を実際に使えるようにすることが目的である.
大学院の授業では、この目的をさらに一歩進めることを試みる。
【授業計画】
1. Poisson 方程式の境界値問題と FDM, FEM, BEM の特徴 9. 抽象的変分問題 その 3 (弾性力学への応用その 3)
比較
2. 1 次元の FEM
10.抽象的変分問題 その 4 (非圧縮性粘性流への応用
その 1)
3. 2 次元の FEM
11.抽象的変分問題 その 5 (非圧縮性粘性流への応用
その 2)
4. FEM プログラミング
12.抽象的変分問題 その 6 (非圧縮性粘性流への応用
その 3)
5. 連立 1 次方程式の解法
13.抽象的変分問題 その 7 (静磁場解析への応用その
1)
6. 各種要素等のやり残し部分
14.抽象的変分問題 その 8 (静磁場解析への応用その
2)
7. 抽象的変分問題 その 1 (弾性力学への応用その 1) 15.後期のまとめ
8. 抽象的変分問題 その 2 (弾性力学への応用その 2)
【成績評価の方法】
授業での報告, 課題への取り組み態度などを総合的に評価する.
【授業外で行うべき学修(準備学修・事後学修等】
Linux 環境における C プログラミングは自習にゆだねることが多い.
【使用テキスト】
1. 菊地 文雄: 有限要素法概説[新訂版], サイエンス社, 1999
2. 田端 正久: 偏微分方程式の数値解析, 岩波書店, 2010