第 章 曲線と曲面 曲線の幾何学的性質 接線と法平面の方程式 本項においては 空間曲線の接線と法平面の定義を述べ それら の方程式を決定する. 空間曲線は 次元空間の中に含まれる 次元的点集合のことで ある そのような点集合は 個のパラメーターによって特徴付けら れる ベクトル方程式の場合 ここでは 特に 考える空間曲線がある よって定義される場合を考察する いま 空間 の区間を とする 次元空間における曲線 変数のベクトル関数に を考える 曲線 が 級曲線であるとは 関数 が 区間 において 級であることをいう のとき 特に 連続曲線という ここでは 直角座標系で考えているが これ らの概念は直角座標系のとり方に依存しない. ベクトル表示を用いて と表すとき 方程式 を曲線 のベクトル方程式という 変数という をパラメーターあるいは媒介 のとき 級曲線 このとき 曲線 上の点 条件 が上のように定義されているとする が正則点であるとは すなわち が満たされることをいう また 曲線 上の点 条件 が特異点であるとは すなわち が満たされることをいう 級曲線 が正則点のみからなるとき という. このとき 級正則曲線 級正則曲線 に対して 次の微分法の公式が成り立つ これより のとき ベクトル の向きはパラメーター の増加する方向を向いていることが分る. このとき ベクトル を点 における曲線 の接線ベク トルという. のとき すなわち 特異点においては接線ベクトルは存 在しない. 正則点 において その点を通り その点における接線ベクト ルを方向ベクトルとする直線を接線という.また 接点を通り接線 に垂直な平面を法平面という. したがって 正則点 における接線と法平 面の方程式はそれぞれ次の式で与えられる 関数方程式の場合 例 二つの 級曲面 の交わりとして表される曲線の点 面の方程式を求めよ.ただし 点 における接線および法平 において と仮定する. 解 条件 より 陰関数定理によって点 の二つの曲面の交線は 級曲線になり の近傍で と表される.これらは を満たすから 等式 が成り立つ 両辺を で微分して を得る このとき 仮定 によって 連比 が定まる.したがって 求める接線と法平面の方程式はそれぞれ次 式で与えられる: 曲線のパラメーターの変換 本項においては 曲線のパラメーターの変換について述べる 二つの曲線 が 空間の点集合としては同じであって 単にその上の点の変化の は同一の曲線の二つのパラメー 速さが異なるだけであるとき ターであるとみなすべきである このことは 詳しくいうと次のようになる 二つの 級曲線を とするとき これらがパラメーターの違いを除いて同一であるとは 関数 が存在して 次の条件 を満 たすことをいう は で は 級である でいたるところ正である さらに を満たす が成り立つ ここで 条件 は の代りに でいたるところ負である さらに を満たす という条件で置き換えれば を満たす関数 が 存在するとき 二つの曲線 と は点集合としては同じであるが 向きの逆になった曲線と考えられる このとき 二つの曲線は異な るものと考える ところで 関数 が を満たすとき 逆関数 を考えることによって を曲線 のパラメーターにとる こともできる このように パラメーター からパラメーター へ 移ることをパラメーターの変換という 次に 曲線の弧長 がパラメーターとして用いられることを示す そのために 以下に曲線の長さを求める公式を与える 曲線 は 級であるとする このとき 曲線 の長さ によって求められる いま 区間 の 点 をとり 部分区間 を考える これは によって与えられる 曲線 が正則曲線ならば である このとき は定積分 に対する弧の長さ においていたるところ であるから 関数 は上の条件 を満たす した 級正則曲線ではパラメーターとして弧長 がとれる がって フレネ・セレの公式 本項においては 接線 主法線と陪法線の方向ベクトルの道のりに 対する導関数に対して成り立つフレネ・セレの公式を導き 空間曲 線の曲がりぐあいを示す曲率と捩率 れいりつ について考察する いま 曲線 は き 級正則曲線であるとし 弧長 をパラメーターにとる このと による微分を と表す このとき が成り立つから 定理 が従う ここで がって のとき によって 定ベクトル が従う した は定ベクトル となり これは直線になる ここでは 曲線の曲率や捩率を考察するのであるから る曲線あるいは曲線の部分においてだけ考える このとき とおくと は単位ベクトルで あるいは が成り立つ このとき 図 は に直交している 接線 主法線 陪法線 な を点 における曲線 の主法線ベクトルという また を方向ベクトルにもつ直線を主法線という り いま を通 とおくと である このとき は に直交している いま を点 における曲線 の陪法線ベクトルという 点 を 通り を方向ベクトルにもつ直線を陪法線という を通り に平行な平面 すなわち に垂直な平面を曲線 の法平面という また を通り に垂直な平面を曲線 の接触平 面という 最後に を通り に垂直な平面を展直平面という ここで 曲線 の曲率と捩率について述べる いま 曲線 は を位置ベクトルにもつ点の単位球面上に描く 曲線であるとする いま 図 の記号を用いる 図 このとき とおくと 曲線 が成り立つ すなわち は接線方向の 道のりに対する変化率 を表す これによって は曲線の曲がりぐあいを示す量と考え を点 における曲線 の曲率といい られる を曲率半径という このとき は と に直交する これは次のようにして証明される であるから すなわち が と直交することが従う 次に であるから これを で微分して このとき であるから を得る ゆえに したがって は と に直交する これによって は と に直交することが証明された したがって と は 次従属となり と表される ここで は の関数 である であるから は陪法線方向の 道のりに対する変化 率を表す が接触平面の法線ベクトルであるから は接触平面 の法線方向の 道のりに対する変化率を表す を点 にお を捩率半 ける曲線 の捩率 れいりつ といい 径という より が得られる ゆえに が成り立つ 以上を合わせて 次の公式が得られる これを曲線 のフレネ セレの公式という これは 考えている 点 における直交座標系 の道のりに対する変化のぐあい を示している この直交座標系を動座標系あるいは動標構というこ とがある フレネ セレの公式を用いて 曲線上の点に対してとり付 けられた図形 たとえば接線などの変化の状態を決定することがで きる 曲面の幾何学的性質 法線と接平面の方程式 本項においては 空間曲面の法線と接平面の定義を述べ それら の方程式を決定する 空間曲面は 次元空間の中に含まれる 次元的点集合のことで ある そのような点集合は 個のパラメーターによって特徴付けら れる ベクトル方程式の場合 ここでは 特に 考える空間曲面がある よって定義される場合を考察する 変数のベクトル関数に 平面の領域 の各点 定まっているとき 点集合 を に対して空間の点 が 上定義された曲面という 空間の点の直角座標を用いて と表すとき 曲面 は ベクトル方程式によって と表すことがある このとき ベクトル関数 が 上 級 であると き 曲面 は 級であるという 曲面 が 級であるというこ とは座標系のとり方によらない 一般に 曲面というときには少な くとも連続曲面であるものを考えるのが普通である 以後 曲面 は 級 であると仮定する の直角座標 を用いて 曲面 は 次のようにも表される このとき を曲面 のパラメーターという 曲面 上の点 が正則点であるとは 点 て 条件 が満たされることをいう におい また 曲面 上の点 において 条件 が特異点であるとは 点 が満たされることをいう 曲面 の各点 が正則点のとき 曲面 は正 則曲面という このとき このような正則曲面 の法線と接平面の方程式を決定 する 以後 本書においては 級 正則曲面のみを考えるので 単に曲面といえば 級正則曲面のことであるとする が成り立つから 考えている正則曲面 において が成り立つ このベクトルを点 トルという このとき 単位ベクトル をこの曲面 における曲面 の法線ベク の法単位ベクトルという 一般に 曲面 上の正則点 を通り 法線ベクトル を方向ベクトルとする直線を曲面 を通り ベクトル の法線という また 正則点 を法線ベクトルにもつ平面を 点 における曲面 の接平面という したがって 点 に おける の接平面は点 における の法線に垂直な平面である. ゆえに 点 における 次の式で与えられる: の法線と接平面の方程式はそれぞれ 次に 曲面 の接平面の一つの幾何学的性質について述べる 一般に 正則点 において 曲面 上の正則曲線に接するベクト ルを曲面 の点 における接ベクトルといい これを方向ベクトル とし 点 を通る直線を の接線という. したがって 特に 上の曲線 変数 定数 と 定数 変数 の接ベクトル と は曲面 の接ベクトルである さらに 一般に の関数 があって が 内を動くとき は曲面 上の正則曲線 になっているとする このとき この曲線の接ベクトルは となる は接ベクトル と の 次結合であるから 垂直である ゆえに これは接平面上にある 逆に 接平面上にあるベクトル は の形に表されるから 点 の ゆえに 次の定理が成り立つ を通る曲面 上の正則曲線 における接ベクトルである に 定理 曲面 上の正則曲線の接線ベクトル とゼロベ におけ クトル の全体よりなる実ベクトル空間は 次元空間 る の直交補空間である 曲面 の点 における接平面は 通る平面である の直交補空間に平行で 点 を 関数方程式の場合 いま 変数の 級関数 によって定義される曲面を このとき 関数方程式 が与えられたとき 関数方程式 級曲面という によって定義された 次元空間における 級曲面 の法線と接平 面を定義し それらの方程式を決定する. 曲面 上の点 が の正則点であるとは 条件 が満たされることをいう.ここで とおいた. また 曲面 上の点 条件 が満たされることをいう 正則点 におけるベクトル 表す. が の特異点であるとは の正規化を と このとき ベクトル を曲面 の点 における法線ベクトル といい ベクトル を法単位ベクトルという さらに ベクトル を方向ベクトルとし 点 を通る直線を法線という.また 点 を 通り の法線に垂直な平面を点 における の接平面という ゆえに 点 における の法線と接平面の方程式はそ れぞれ次の式で与えられる: 次に 曲面の接平面の一つの幾何学的性質について述べる 一般に 正則点 において 曲面 上の正則曲線に接するベクト ルを曲面 の点 における接ベクトルといい これを方向ベクトル とし 点 を通る直線を の接線という. いま 正則点 を通る 上の任意の正則曲線を とする.ここで が成り立つから を得る.これは点 とする.このとき において に関して微分して における の接線ベクトル がベクトル と直交することを意味している. 逆に を と直交する でない任意のベクトルとす る.このとき において を接線ベクトルにもつ を通る 上の 正則曲線が存在することを示す. いま を と直交し となるベクトルとする. 以下において 実際にこのようなベクトル は存在することを証 明する. いま このような があったとすると ベクトルの系 は完全正規直交系になる このベクトルの系がこの向きに正の基底 であるとすると となるから この関係によって を決めればよい. すなわち 求めるベクトル が に等しいとすると このベクトルのノルムを計算して 等式 を得る ゆえに 式より 等式 を得る したがって となり 式を満たす.すなわち の存在が証明された 式を満たすベクトル このとき とすれば であるから 曲線 を考えると 曲線 の点 における接線ベクトルは となる.すなわち は 上の正則曲線 ゆえに 次の定理が成り立つ の接線ベクトルである. 定理 正則曲面 上のある正則曲線の接線ベクトル とゼロベクトル の全体よりなる実ベクトル空間は 次元空間 における の直交補空間である 曲面 の点 における接平面は 通る平面である 例 曲面 上の点 面と法線の方程式を求めよ. 解 関数 の直交補空間に平行で 点 が であるとすると 曲面の方程式は を における接平 と表される このとき が成り立つ このとき 平面の方程式は だから 接 すなわち となる また 法線の方程式は となる 曲面上の曲線の長さの公式 本項において 曲面上の曲線の長さの公式を述べる 正則曲面 は ベクトル方程式 によって定義されているとする ここで 正則曲面 上の曲線 の長さ は 公式 で与えられる このとき は 平面の領域とする であるから を 次の内積 によって定義すると 公式 が成り立つ ゆえに 長さ で与えられる は 公式 を曲面の第一基本量という 伊東由文著「ベクトル解析」より 年 月 日
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