自動車部品のガス焼入れにおける 品質向上 日産自動車 パワートレイン生産技術本部 日産自動車 杉本 杉本 剛 www.nissan-global.com 1 Agenda 1. 自動車部品での浸炭焼入れ熱処理技術 2. ガス焼入れ技術について 3. ガス焼入れシミュレーション技術の開発 4. シミュレーションを用いたガス焼入れ特性の改善 2 Agenda 1. 自動車部品での浸炭焼入れ熱処理技術 2. ガス焼入れ技術 3. ガス焼入れシミュレーション技術の開発 4. シミュレーションを用いたガス焼入れ特性の改善 3 浸炭焼き入れ熱処理とは・・ CVTプーリー 日産 MAXIMA(北米) 変速機 エンジン CVTプーリーの製造工程 鍛造 焼準 浸炭 焼入れ 目的;硬くする; 強度向上 跳ね返り; 変形ばらつき 4 機械加工 焼戻し 修正 研削 修正大 コスト増加 組立て 浸炭焼き入れ熱処理の効果・跳ね返り 浸炭 表面に炭素を しみこませ 高温にし て 温度 980℃ 急冷(焼入れ) する 炭素 + 急冷 → 炭素マルテンサイト =硬い! 処理時間 母相⇒炭素マルテン サイト 体積膨張 0.3~1% 5 変形 表面が硬くなる 3-4hr 冷却ばらつき 変形ばらつきの 発生 Agenda 1. 自動車部品での浸炭焼入れ熱処理技術 2. ガス焼入れ技術 3. ガス焼入れシミュレーション技術の開発 4. シミュレーションを用いたガス焼入れ特性の改善 6 ガス焼入れによる低歪化と問題点 ガス焼入れでは流れを工夫することでより冷却速度を向上させ, 均一に冷却できる可能性がある(時間・空間) R145 ハイポイドギア N2ガス焼入れ 蒸気膜 崩落時間差 位置による 冷却差 温度 温度 油焼入れ Pulley DX Fix Secondary 蒸気膜 時間 7 時間 N2ガス 油焼き 入れ N2ガス焼入れ 時間 悪 良 空間 良 悪 充分 不足 冷却速度 バラツキ 冷却速度 8 ここを改良し, 品質の良い 焼入れを実施する Agenda 1. 自動車部品での浸炭焼入れ熱処理技術 2. ガス焼入れ技術 3. ガス焼入れシミュレーション技術の開発 4. シミュレーションを用いたガス焼入れ特性の改善 9 ガス焼入れでの部品品質解析の流れ START 表面熱伝達率算出 方法の開発 (次項以降) ガス流れ解 析 部品表面での ガス流速を求め る 部品表面での 冷却速度を求 める SFTC DEFORM-HT 部品品質の解 析 10 ガス焼入れ熱伝達率データベース作成 ガス焼入れでの熱伝達率測定装置を作成,これを用い,熱伝達率データベースを作成した. 図1.測定器全体形状 外壁 φ300mm 増速スリーブ 整流キャッ プ IHI製高圧 シールキット 水&電気 → コイル(冷却水管兼用) 内径60mm, 外形80mm 100mm 以上 ジャケット クーラー テストピース 銀φ15mmx60mm 石英ガラススリーブ 内径φ50mm, t=2mm 図2.測定部構造 11 Fig. 銀棒試験片を用いたN2ガスの熱伝達率の導出. (Narazaki et al, 2008) 実部品表面での熱伝達率の同定 -逆問題手法- 実部品の表面熱伝達率を検討する為,実測値より熱伝達率を算出する 開始 実部品での実測冷却曲線 初期 熱伝達率 冷却状態の予測 (逆問題手法) 熱伝達率の 修正 NG 実冷却曲線と 計算冷却曲線の比較 OK Fig. 逆問題手法によ る熱伝達率の導出 終了 12 Fig. 銀棒試験片を用いたN2ガスの熱伝達率の導出. (Narazaki et al, 2008) 部品表面での熱伝達率の同定結果 -逆問題手法- 逆問題手法により,実部品表面の熱伝達率を算出できた Tooth surface Inside diameter surface ④ Tooth bottom ⑥ 0 ③ ② Back face surface ⑤ ① Outside diameter surface 900 ①-Outside diameter ③-Inside diameter ⑤-Tooth bottom 2.5 ②-Back face ④-Tooth surface 2 1.5 1 700 600 400 300 200 0 100 200 400 600 800 Temperature, T /℃ Fig. 実験冷却曲線より算出した 熱伝達率(2.0MPa, 12m/s). 13 1000 ①-Calculated ②-Calculated ③-Calculated ④-Calculated ⑤-Calculated 500 0.5 0 ①-Measured ②-Measured ③-Measured ④-Measured ⑤-Measured 800 Temperature, T /℃ Heat transfer coefficient, h /N/sec/mm/k 3 0 10 20 30 Time, t /s 40 50 60 Fig. 算出した冷却曲線と実測冷却曲線 の比較 熱伝達率同定結果とCFDの結果の比較 実測の熱伝達率は解析結果と傾向の一致を見た Tooth surface Inside diameter surface ④ Tooth bottom ⑥ 0 ③ ② Back face surface ⑤ ① Outside diameter surface Heat transfer coefficient, h /N/sec/mm/k 3 ①-Outside diameter ③-Inside diameter ⑤-Tooth bottom 2.5 ②-Back face ④-Tooth surface 2 1.5 1 0.5 0 0 200 400 600 800 1000 Temperature, T /℃ Fig. 実験値冷却曲線より算出した 熱伝達率(2.0MPa, 12m/s). 14 31.8m/s 0m/s Fig. CFDによるガス焼入れ時の 流速分布計算結果 熱伝達率同定結果と流体解析結果の比較検証 流体解析結果と熱伝達率同定結果は良い相関を見た 3.65 ①-Outside diameter ③-Inside diameter ⑤-Tooth bottom 2.5 2 ④ Tooth bottom ③ 1.5 ②-Back face ④-Tooth surface Tooth surface Inside diameter surface Back face surface Log(heat transfer coefficient× temperature), Log(h ×T) /kW/m2 Heat transfer coefficient, h /N/sec/mm/k 3 ⑥ 0 ② ⑤ ① Outside diameter surface 1 0.5 0 0 200 400 600 800 Temperature, T /℃ Fig. 実験値冷却曲線より算出した 熱伝達率(2.0MPa, 12m/s). 15 1000 3.6 y = 0.7589x + 2.5557 2 R = 0.9854 3.55 3.5 3.45 h=C・(PV)0.7589 3.4 3.35 3.3 3.25 0.9 1 1.1 1.2 1.3 1.4 Log(quenching pressure×flow velocity), Log(P ×V )/ MPa・ m/s Fig. 算出した熱伝達率とCFDによる (P)× (V)値の相関 熱伝達率導出結果の適用例 Slow 歪の予測 Fast Fig. Deformation of back face. Z 0 Fig. Runout of circulated direction. 16 Fig. Lead deformation. Agenda 1. 自動車部品での浸炭焼入れ熱処理技術 2. ガス焼入れ技術 3. ガス焼入れシミュレーション技術の開発 4. シミュレーションを用いたガス焼入れ特性の改善 17 ガス焼入れシミュレーションの適用例 シミュレーションを用い,ガス冷却装置の冷却風導入部位の形状を検討 し, 冷却速度の向上方法を検討した 要求特性;内部硬さ 入口メッシュサイズ変更による渦発生での熱拡散現象の活用 従来条件; メッシュサイズ小 渦による 材料 熱輸送 冷却速度 メッシュサイズを ワーク配置位置に 渦が発生する条件 にした ガス流 位置0mm 位置250mm 改良条件 ;メッシュサイズ大 開口率縮小による流速向上 0 渦粘性 -0.05Pa・s 流速向上による 熱輸送量向上 開口部位の限定による噴流化 噴流(鉛直流)に より熱熱境界層 を吹き飛ばす 熱境界層 18 効果の検証 –流れの様子 可視化 PIV法解析と同等の結果がPIVによる実態流れ可視化でも観察できた 側面によどみが発生 ☆点での流速4.3 m/s 従来条件 流速・巻き込みが大 ☆点での流速11.5 m/s 改良条件 PIV(Particle Image Velocimetry); 流体中に微小粒子を流体中に混ぜ,流れを可視化する手法 19 効果の検証 –流れの様子 可視化ガス導入法の変更により,冷却速度が向上し 冷却順序が変化した 焼入れ条件 1MPa 50Hz N2 測定条件 ノビテック サーメラ NR-300 焦点距離 50mm 絞り全開 従来条件 改良条件 73sec 44sec (▲40%) 冷却の様子 1050℃ →500℃までの 冷却時間 20 効果の検証 –流れの様子 可視化- ① ② ③ ④ ガス導入法の変更により,冷却速度が向上し 冷却順序が変化した Temperature [℃] ① ② ③ ④ 0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 55 60 65 70 Time [s] 従来条件 1000 950 900 850 800 750 700 650 600 550 500 ① ② ③ ④ Temperature [℃] 1000 950 900 850 800 750 700 650 600 550 500 0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 55 60 65 Time [s] 改良条件 焼入れ条件 1MPa 50Hz N2 測定条件 ノビテック サーメラ NR-300 焦点距離 50mm 絞り全開 21 まとめ • ガス焼入れでの熱伝達率をデータベース 化し,CFDを併用することで,ガス焼入時 の熱処理品質シミュレーションを実現し た. • 開発技術を用い,実部品にて焼入れの冷 却速度と冷却の均一性を向上させる方法 を見出した. 22 END 23
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