ミャンマー法律情報レポート - 日本法教育研究センター

ヤンゴン大学/名古屋大学 ミャンマー・日本法律研究センター
ミャンマー法律情報レポート
2015 年 6 月
ミャンマー法律情勢(2015 年 6 月)
ミ ャン マー会 計審 議会 法 (Myanmar Accountancy Council
ミャンマーでは,年内に予定される総選挙を前に,関連諸法(人
Law)の制定(6 月 5 日)
民院法,民族院法)の改正のための議論が進んでいる他,連邦議
経済発展に向けた会計士資格取得者の増加,会計学の発展,会計
会で憲法改正案の大詰めの審議が行われた。対外的には,最大与
に従事する労働者のモラル向上,会計の質の維持,国際基準によ
党である国民民主連盟(NLD)党首のアウンサンスーチー女史が
る政府と民間による会計報告,会計に従事する雇用機会の増大を
11 日に中国を公式訪問し習近平国家主席と会談するなどの動き
目的としたミャンマー会計審議会法が制定された。同法は,財務
がみられるが,折しもこのタイミングでミャンマー連邦議会に憲
長官を委員長としたミャンマー会計審議会を設置し,関係省庁等
法修正法案が提出されている。連邦議会では,憲法改正要件を軟
に会計関連の助言する機能を与える。同法の制定により旧法
化させる修正や,大統領の就任要件に関する議論が行われている
(1994 年会計審議会法)は廃止される。
が,これら注目の規定には,大きな修正がなされない可能性が高
い。連邦議会では,憲法修正案が国民の意見に沿わないものとし
選挙法の改正(6 月 17 日)
て,なおも関連の議論が続けられている。
人 民 代表 院 (Pyithu Hluttaw) 選挙 法, 民族 代表 院 (Amyotha
Hluttaw) 選挙法,州管区(Region or State)選挙法が改正され
ミャンマー法律情報(2015 年 6 月)
た。改正では,投票資格者(選挙権者)等について定める各条項
選挙管理委員会 U Thin Aye 議長が総選挙につき声明(6 月 5 日)
において,旧法で「市民(citizen)」,
「準市民(associate citizen)」
連邦選挙管理委員会(UEC)の U Thin Aye 議長は,6 月 5 日の
(純血のミャンマー人ではないが市民法によって市民権申請を
会合で,本年 10 月末もしくは 11 月初旬に予定されている総選
行い認められた者),「帰化市民(naturalized citizen)」,「一時証
挙が延期される場合として,大規模災害の発生か,地域的に安全
明書保有者(holder of temporary certificate)」としていたとこ
が確保されていないときに限られるとする議長声明を行った。同
ろ,「一時証明書保有者(holder of temporary certificate)」を
議長によると選挙区は従来通り 330 とされ,会合においては選
削除した。これにより,いわゆるホワイトカード所有者が選挙権
挙区と投票所の設定につき議論されている。
を失うこととなる。
障 害 者 の 権 利 に 関 す る 法 律 (The Right of Person with
ミャンマーの会社登録数(6 月 29 日)
Disabilities Law)の制定(6 月 5 日)
人民代表院において,1904 年ビルマ会社法及び 1950 年特別
憲法に基づいた障害者の一層の保護と,国連障害者権利条約の規
法に基づき登録されたミャンマーの会社数が 49,074 社である
定の実施,障害者による市民の人権と基本的自由の平等な享受,
ことが報告された。会社数の内訳は私企業が 44,498 社,官営企
政治・社会・教育・保健・経済・文化・市民活動の各分野におけ
業が 199 社,外国会社が 4,299 社,合弁会社が 78 という結
る健常者と同様の参加,国や国民による障害者の名誉と潜在能力
果。
の承認,障害者の生活の安全と向上,障害者の差別を禁止する法
律の保護,障害者の暴力や搾取からの開放,孤児・複数障害者等
の保護などを目的とした「障害者の権利に関する法律」が制定さ
れた。同法実施のため,副大統領を委員長,社会福祉救済復興大
臣を副委員長とする国家委員会の設置を定め,障害者の教育や健
康促進,政治や市民活動への参加,職業機会を促す措置,障害者
の協会の設置等の措置を実施するものとされている。
ミャンマー・日本法律
研究センター:
2013 年 6 月にヤンゴ
ン大学と名古屋大学の
MOU によりヤンゴン大
学内に設置。ミャンマ
ー法の研究,ヤンゴン
大学での講義を通した
日本法発信等の事業を
進めている。ASEAN
地域やメコン地域の法
制度研究も推進予定。
大久保晋吾
名古屋大学法学研究科特任
講師・ヤンゴン大学客員教
員・弁護士。外務省を経て
2014 年 1 月から現職
波多野英治
名古屋大学法学研究科特任
講師・ヤンゴン大学客員教
員。地球環境戦略研究機関
(IGES) , 外 務 省 を 経 て
2013 年 8 月から現職
調査協力
👩 Ja Pu(リサーチアシスタント)
👩 Phyo Wai Moe(アシスタント)
Myanmar-Japan Legal Research Centre in the University of Yangon
Ah-Di-Pa-Ti Road, Yangon University Postal Compound, Kamaryut Township, Yangon, Myanmar
Tel: +95-(0)1-536628, Email: [email protected]