Contact Center Management 2015年2月号 Vol.77 連載記事

実践マネジメント講座
戦略
コンタクトセンターの新たなマネジメント法
第
4
回
コスト/品質管理を徹底管理する
IVRの改善方法
ハッピーハート /TREE
パートナーコンサルタント 牧野
聡
IVR
(Interactive Voice Response System)
はコールセンターにおいて、あって当然とされるシステムのひとつと言えるが、各コー
ルセンターにおいて、果たしてどこまでIVR機能を有効に活かしているのだろうか。導入はしたが、導入後はデータ分析等を実施せ
ずに手付かずにされているIVRが散見される。IVRの機能を再考察し、IVRを有効活用する為の手法を一緒に考えてみよう。
ターへの転送になったものは、当然、
IVRのデータ分析手法
「完了」には含まれない。
る。切断が多いと言う事は、フロー
が適切ではない、あるいはメニュー
「完了率」をKPIとして見ているコー
が不完全(過多、あいまい、不足等)
IVR 導入の大きな目的は、IVR で
ルセンターは以外に少なく、
「完了率」
と言える。コミュニケーターの転送が
顧客対応を完結させて、コミュニケー
の改善に取り組む事もあまりされてい
多ければ、不要な転送メニューが多
ター対応コールを減少させる事にあ
ない。 つまり、IVR を導入したが、
く、本来、IVR で完結可能なものを
る。その IVR を見る KPI は
「完了率」
その後はブラックボックス化されてし
安易にコミュニケーターへ転送させて
である。
「完了率」とは、IVR に入電
まっているのである。
しまっていて、IVR の機能が利用され
された顧客が、IVR の中でメニュー
そのような事がないようにするに
てない事になる。このような分析を行
の最後まで到達終了し、希望された
は、IVR のデータを定期的に抽出、
い、切断、コミュニケーターへの転
用件が完結した割合を見る指標であ
分析する仕組が重要である。IVR は
送の多い箇所を特定、その原因を突
る。途中で切断したり、コミュニケー
各フロー(ツリー)毎に入電数、次フ
き詰め、改善をする事で、IVR の「完
ローへの遷移数、切断数、コミュニ
了率」を向上させる事が大切である。
P R O F I L E
牧野 聡
GEコンシューマー・
ファイナンスにおい
て長年、各種コール
センター・事 務 セン
ター の 新 規 立 ち上
げ、センター長として
運 営 を 行 っ た 後、
コールセンターコンサルタント&トレーナー
として独立。ハッピーハート/TREEなどの
パートナーコンサルタントとして、大手クライ
アント企業のコールセンターのコンサルティ
ング、トレーニングを実施している。
URL http://www.happy-h.biz
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Contact Center Management 2015.2
ケーター転送数などのデータ抽出が
可能である。そのデータから
「完了率」
サービス品質ポリシーの設定
をはじめ、現状の分析を定期的に実
サービス品質のポリシーを設定する
施する事が大切であり、センター KPI
事 も大 切 で あ る。 顧 客 に は Web、
に IVR 完了率は必須で入れるべきで
IVR、コミュニケーター、メールなど、
ある。
さまざまなチャネルが用意されるが、
各フロー毎の入電数、次フロー遷
顧客へのサービス品質を考えた時、
移数、切断数、コミュニケーター転
どのチャネルでどのようなサービス品
送数を見れば、どのフローで顧客が
質を提供・確保するか、しっかり定め
多く切断しているのか、また、コミュ
ておく必要性がある。一番コストがか
ニケーターへの転送が多いのかわか
かるのは、コミュニケーターであるか
(
コンタクトセンターの
新たなマネジメント法
メニュー① -1
メニュー①
)
完了
メニュー① -2
メニュー②
切断
メニュー③ -1
メニュー③
完了
メニュー③ -2
メニュー④
切断
転送
図1 IVR 完了率
ら、
コミュニケーターの位置づけ、
サー
来るので、ブレがなく、設計自体シン
時間等を確認するのもいいだろう。例
ビス品質の中身、範囲を明確化し、
プルなものが可能になる。
えば、本人確認時の生年月日入力は
それを他のチャネルでどのように補
完、提供するかを明確化しなければ
他社との比較調査の重要性
西暦なのか和暦なのか、また、入力
は途中入力(アナウンス中に入力)可
ならない。そのようなポリシーが明確
他社の IVR サービスがどのような
能か不可か、アナウンス時間などを確
に決まっていない事から、どのチャネ
ものか、自社との優劣はどうなのか、
認する。そうやって比較調査してみる
ルの内 容も中途半端で顧 客目線に
顧客目線で比較調査する事も大切で
と、自社 IVR の優れている点と、劣っ
なってなく、結果、コミュニケーター
ある。
ている点が明確にわかる。自社内の
対応で補完する状態になってしまい、
大手企業であれば、IVR メニュー・
分析継続はもちろん大切であるが、そ
コスト高のコールセンター運営が続い
フローを自社ホームページに掲載して
れと並行して他社との比較調査も定期
ていると言うケースも多い。サービス
いるところも多い。自社メニューと比
的に実施する事をお勧めする。
品質ポリシーが明確化されていれば、
較して、他社のメニュー数はシンプル
このように、IVR も導入後の PDCA
IVR のメニュー、フローの設計にお
でわかり易いかも知れない。また、実
を実施して、より良いものに作り上げ
いて、そのポリシーをベースに決定出
際に架電してみて、アナウンス内容・
ていく事が大切である。IVR はコスト
会社名
メニュー数
A社
9
シャープの必要有無 トーンの切替案内
×
×
生年月日入力
初期アナウンス秒数
なし
55 秒
削減と言う点では、非常に効果のある
システムのひとつであり、IVR の完了
率が悪いのは、顧客がコミュニケー
ター対応を希望するから仕方ないと言
B社
7
○
×
なし
58 秒
うのではなく、IVR の使い勝手、中
身に問題があると言う視点で取り組む
C社
7
×
○
なし
62 秒
べきである。
自社
9
○
×
和暦
75 秒
IVR の改善方法についてご相談な
どお困りの事があればお気軽にご連
図2 他社調査例
絡下さい。[email protected]
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