経胸壁心エコーを契機に診断に至った unroofed coronary sinus の 1 例

80
経胸壁心エコーを契機に診断に至った unroofed coronary sinus の 1 例
◎田中 諒 1)、大谷 拓也 1)、舩坂 弘子 1)、藤森 玲子 1)、山岸 美幸 1)、中村 和恵 1)、藤森 和樹 1)、唐木 幹次 1)
諏訪赤十字病院 検査・輸血部 1)
【はじめに】unroofed coronary sinus は冠静脈洞(CS)と左
合併は認めなかった。
房の隔壁が部分的もしくは完全に欠損している稀な疾患で、
【手術所見】右房切開にてアプローチ。拡大した CS 右房
心房中隔欠損症(ASD)冠静脈洞型とも表現される。今回、
開口部を覗くと、すぐ頭側に 20mm 大の欠損孔を認め、欠
経胸壁心エコー(TTE)を契機に unroofed coronary sinus と
損孔から左房が確認された。ウシ心嚢膜パッチを用いて欠
診断に至った症例を経験したので報告する。
損孔を閉鎖した。術後経過は良好である。
【症例】49 歳女性。動悸、浮動感を主訴に前医を受診。前
【考察・まとめ】過去に報告されている unroofed coronary
医で施行した TTE では右心負荷所見と ASD 一次孔欠損型
sinus の症例を調べ得た範囲では、TTE を契機に発見された
が疑われた。心臓カテーテル検査では Qp/Qs=3.7 であり手
症例は少ない。本症例では心窩部四腔断面において、拡大
術適応と判断され当院心臓血管外科に紹介された。
した CS 右房開口部が一次孔欠損と似たエコー像を呈した
紹介時に当検査室で施行した TTE では、右心負荷所見の他
が、プローブの角度調整や他部位からのアプローチで詳細
に CS 右房開口部の拡大、傍胸骨短軸像と心尖部二腔像に
な観察をすることで鑑別が可能であった。TTE による詳細
おいて左房と CS 間の欠損孔を認めた。カラードプラでは
な形態・血行動態評価をきっかけに、他のモダリティによ
欠損孔に左房から CS へ流れるシャント血流を認めた。前
る精査につながり診断に至った症例を経験した。先入観に
医にて指摘された一次孔欠損を積極的に疑う所見は認めな
とらわれず詳細な観察・評価に努めることの重要性を再認
かった。以上から unroofed coronary sinus の疑いとして報告。
識した。
TTE 後に施行した 3DCT と MRI においても、左房と CS 間
の欠損孔が確認されたことから unroofed coronary sinus と診
断され手術施行となった。なお、CT では左上大静脈遺残の
連絡先:0266-52-6111(内線 2218)