第5学年1組 社会科学習指導案 食料に関する今日的な課題を追求し

第5学年1組 社会科学習指導案
授業者 教諭 山田 一樹
研究主題
互いの立場や考えを尊重し 伝え合う児童の育成
~新聞活用のよさを生かした授業づくり~
食料に関する今日的な課題を追求し、考えを深め合う新聞活用
1 単元名
これからの食料生産とわたしたち ~どうなる 日本の食料生産~
2 単元目標
我が国が抱える食料生産の問題点と取組について理解し、安心・安全な食料確保のための食料生産の
努力や工夫について考えることができる。
<育てたい力>
○身近な事象等から課題を設定し追求する力
◎新聞記事や統計資料による情報を収集・整理する力
◎我が国の食料生産には、様々な問題点と取組があることを理解する力
◎安心・安全な食料確保のための食料生産の努力や工夫について考える力
○分かったことや自分の考えをまとめて表現する力
3 単元の評価規準
・自分の生活とのかかわりをもとに、我が国の食料生産の現状と未来について関心をもっている。
(関
心・意欲・態度)
・我が国の食料生産をめぐる問題について、環境への影響、輸入食材の安全性、生産者と消費者などの
観点をもとに、考えたことを適切に表現している。
(思考・判断・表現)
・我が国の食料生産の問題点について、新聞や統計などの各種の資料を活用するなどして必要な情報を
集めて読み取り、図や文章にまとめている。
(観察・資料活用の技能)
・我が国の食料生産は国民生活を支えていることや、これからの食料生産にはさまざまな課題があるこ
とを理解している。
(知識・理解)
4 児童と単元
(1)児童の実態
日頃から男女とも仲よく交流していて、ペアやグループで話し合うときも、互いに話を聞き合い、積
極的に意見を出し合う姿が見られる。しかし、全体で発言する場になると、自分自身を表出することを
ためらう児童がおり、活発な意見交換にならないことがある。
社会科では、教科書や資料集、インターネットなどで調べることに意欲的ではあるが、資料として適
切なものを取捨選択したり、それを読み取って考えたりする力はまだ乏しい。経験不足も原因であるた
め、教師と一緒に丁寧に資料を読むことを積み重ねているところである。
本単元を通して、グループや全体で積極的に発表する力を育てたい。
(2)児童と新聞活用
第5学年では、社会で起こっていることに関心をもたせるために、週に1回自分の興味のある記事を
選び、それについて感想を書く活動を行っている。集めた記事をペアやグループで読み合い、感想や意
見を伝え合う活動も行ってきた。7月にとった新聞に関するアンケートでは、新聞を読む習慣がついて
きたり、新聞を使った学習について面白いと感じる児童が増えてきたりするなど、新聞活用に対して肯
定的に感じている児童が多い。
夏休み中には、社会や総合的な学習の時間との関連から、
「米づくり」
「農業」
「漁業」
「食の問題」な
ど、食に関するテーマについて新聞記事を集め、感想を書いた。しかし、的確な感想を書いたり、記事
を要約して紹介したりする児童は少なく、見出しや写真だけを見て感想を書く児童もいる。
本単元では、児童が収集してきた新聞記事をもとに、食料生産の未来について、問題や取組、工夫に
ついて考えさせていきたい。
(3)単元について
本単元は、これまで行ってきた、農業や水産業の学習をもとに、我が国の抱える食料生産の問題点や
これからの食料生産について、環境や消費者を守るための工夫、食料自給など様々な視点から考え、自
分の意見をもてるようにすることが中心的なねらいである。
学習指導要領で重要視されている「よりよい社会の形成に参画する資質や能力の基礎」を育てるために、
「これからの食料生産とわたしたち ~どうなる 日本の食料生産~」を設定している。本単元では、稲
作や水産業の学習を生かして、日本の食料生産の今後のあり方について具体的に考えさせるようにする。
学習を通して、日本の農業や水産業が国民の生活において食料の確保に重要な役割を果たしていること、
それが生産者や企業、流通業者の工夫や努力によって成り立っていることを正確に理解させたい。そして、
これからの食料生産についてどうすればよいか考え、適切に表現する力を身に付けさせたい。
(4)単元展開の構想
① 食料にかかわる身近な事象からの学習課題の設定
食料は児童にとって身近なものである。自らの食生活の変化や、新聞記事から食料に関する問題を
洗い出し、学習課題と学習計画を立てる。児童とともに課題を設定し、自分たちが解決すべき課題と
して、当事者意識をもって追求させる。
② 課題設定及び追求過程における新聞記事の活用
既習事項や教科書だけでは、現在起こっている食料問題に対して、課題や取組をとらえることは難
しい面がある。そこで、新聞記事に着目させる。
<本単元における新聞記事の活用のよさ>
・現在、我が国で起こっている食料に関する問題や新たな取組について、知ることができる。
・食料に携わる生産者や企業など、さまざまな人の願いや取組、工夫、努力が分かる。
・食料生産に関して、生産者や消費者の意見や話題があり、それらを比較・検討ができる。
・新聞記事から新たな課題を見つけて取材・調査ができる。
・課題に対して、タイムリーな情報収集ができる。
③ 総合的な学習の時間との関連
総合的な学習の時間では、安全で安心なおいしい米を作りたいという願いから、
「米から始まるわた
したちの食」をテーマに米づくりに取り組んでいる。そして、自分たちで米を栽培し収穫する体験か
ら生産者の願いや苦労を実感できるようになってきた。また、自分たちの食生活を見直したり、給食
の残飯や食べ物が捨てられている現実を知ったりすることで、消費者としての立場を再確認するよう
にもなってきた。さらに、米の消費量の減少や輸入の安全性などという米を取り巻く問題がいくつも
あることに気付くようになり、
「もっと米を食べるべきだ」
「米のよさをアピールしたい」などの、米
への思いをもつようになった。
本単元の学習をもとに、地産地消、食の安全などについて、地域に発信していくなど、総合的な学
習の時間にも発展的な活動を位置づけていきたい。
④ 個の問題意識に応じた調べ学習の導入
本単元では、食料生産にかかわる問題や取組について、児童がより深く追求していくために、調べ
学習を行う。そこで、児童が収集した新聞記事をもとに、食料生産にかかわる視点を以下の5つとし
て授業を展開していく。
(ⅰ)地域 (ⅱ)新たな挑戦 (ⅲ)安全
(ⅳ)価格 (ⅴ)後継者
児童がこれらの中から、それぞれの興味・関心をもとに選び、起こっている問題やそれに対する取
組、携わる人の努力や工夫について調べ、食料生産のあり方を追求していく。社会科の指導内容とし
て、児童からの新聞記事だけでは不足する場合は、教師の方から資料を提示するなどして児童の理解
を補っていく。
また、調べた結果をグループで共有し、さらに2クラス合同のポスターセッションを行うことで、
これからの食料生産への見方が広がり、互いの考えを深めていくことができると考える。
5 指導計画<全5時間 本時 1/5>
時
1
本
時
2
・
3
4
・
5
◆主な指導内容 □主な学習活動
◆学習課題の設定
□既習事項から、単元を貫く学習課題を設定する。
・指導上の留意点 ※評価(観点)
・実物投影機を活用し、記事を提示して
注目させる。
※新聞記事の仲間わけから、食料生産の
◆食料生産にかかわる問題の認識
未来について、関心をもったか。 (関
□収集した新聞記事をもとに仲間わけをし、課題解決に
心・意欲・態度)
向けてのキーワードを考える。
【中心課題】
どうなる 日本の食料生産の未来
【課題解決へのキーワード】
・地域 ・新たな挑戦 ・安全
・情報を見やすく掲示し、交流の場を工
・価格 ・後継者
夫する。
※キーワードをもとに自分の課題を考
◆自分が調べる課題づくり
えることができたか。
□キーワードをもとに自分の課題を考える。
(思考・判断・表現)
◆個の課題に応じた調べ学習
・調べることやその方法などについて、
□ポスターセッションに向けての見通しをもつ。
グループで話し合ったり、助言し合っ
□自分が設定した課題について調べる。
たりする場を設定する。
□調べたことをまとめ、食料生産に関して自分の考えを
書く。
※様々な情報を読み取り、まとめること
ができたか。
◆食料自給率と輸入
(観察・資料活用の技能)
◆後継者不足の現状と取組
※自分の課題について調べ、考えをもつ
◆食料生産者の工夫や努力
ことができたか。
◆食の安全の重要性
(思考・判断・表現)
◆環境保全の必要性
◆これからの食料生産の在り方
・互いの主張を聞き、意見交換ができる
□キーワードごとにグループの主張についてまとめる。 場を設定する。
※グループとして主張をまとめること
◆ポスターセッション
ができたか。
□1、2組合同のポスターセッションを行う。
(思考・判断・表現)
※食料生産についての様々な課題があ
ることを理解したか。
(知識・理解)
6 本時の学習
(1)ねらい
食料生産にかかわる新聞記事を仲間分けする活動を通して、学習課題を設定する。
(2)展開の構想
本時では、我が国の食料生産の未来について考えていくための学習課題をつくる。
まず、米づくりと水産業の学習から、
「水産業で働く人が減っている」
「生産量や消費量が減って
いる」
「魚の輸入量が増えている」などを想起させ、現在の食料生産の状況をどう思うか、児童に
問いかけ、食料生産の未来への関心を高める。また、ワークシートを配付し、学習の見通しを立て
ておく。
次に、収集した新聞記事を紹介し合う活動から学習課題を設定する。そのきっかけとして、導入
で示した「水産業で働く人が減っている」ことを取り上げ、このことに関連した記事を児童から紹
介させる。後継者問題を糸口にして仲間分けしていく。新聞を紹介させる際には、実物投影機を活
用し、児童の紹介した記事を全体に大きく提示する。また、仲間分けをしたものに、キーワードを
つける。日本の食料生産の問題やそれに対する取組を一目でわかるようにし、自分の課題づくりに
つなげたい。分類されたキーワードは次のようなものが期待される。
「地域」
「新たな挑戦」
「安全」
「価格」
「後継者」
最後に、5つのキーワードから自分が調べていく課題をつくり、学習計画を立てる。その際、移
動黒板(または、パネル板)を使用し、キーワードごとにまとめ、自分や友達の新聞を見たり、話
し合ったりすることができるようにしておく。学習計画では、課題について「調べること」
「調べ
る方法」についてワークシートに記入する。個人で学習計画を作成したのち、課題別のグループで
集まり、自分の調べることとその方法について紹介し合う。グループごとにポスターにまとめるこ
とを伝え、グループで協力して活動させていく。
(3)展開
時間 ◆指導内容
5
○学習活動
・予想される児童の反応
・教師の支援 ※評価(観点)
◆単元の学習課題づくり
・掲示物から、既習事項を想起させる。
○米づくりや水産業の学習から食料生産についての問題を ・現在の食料生産の状況をどう思う
振り返る。
か、児童に問いかけ、食料生産の未
・水産業で働く人が減っている。
来への関心を高める。
・生産量や消費量が減っている。
・ワークシートに単元の学習課題を
・水産物の輸入量が増えている。
書かせる。
どうなる?日本の食料生産の未来
新聞記事を紹介し合い、食料生産の問題や取組を見つけよう。
◆食料生産についての新聞記事の紹介
○食料生産についての新聞記事を紹介する。
・米づくりをする人が高齢化してきて、働く人が減ってきま
した。
20 ・自分たちの地域で採れたトマトを、トマトジュースにして
売っています。
・レタスを畑ではなく、ドームの中に栄養の入った水を張っ
て、その上で育てています。
・無農薬にこだわって作った野菜を直売所で売っています。
・アメリカの干ばつの影響で、日本の食品が値上げになる可
能性があります。
・新聞記事を紹介させ、それと関連し
た記事をつなげていく。
・キーワード別に、黒板に貼る。
・どこに分類するか分からないものに
ついては、全員で考えさせる。
※新聞記事の仲間わけから、食料生産
の未来について、関心をもったか。
(関心・意欲・態度)
自分の調べる課題を決めて、学習計画を作ろう。
◆自分の課題選択 学習計画の作成
○出てきた課題の中から、自分の調べる課題を決める。
・生産者を増やすための取組には、他にどんなものがあるか。
・低価格の食材は本当に良いのだろうか。
18 ・本物の土づくりとは、どのようにするのか。
・なぜドームで育てているのか。
・地元で採れたものを使う良さは何か。
○課題別グループで、調べたいことと調べ方について話し合
う。
・農協の人に聞いた方がいいよ。
・インターネットで調べてみようよ。
2
◆本時の振り返りと次時の活動について
○本時を振り返り、次時の活動について知る。
・もっと調べたいことや疑問に思った
ことなどを挙げるように伝える。
・ほかの課題に変えても良いことを伝
える。
・キーワード別のグループでまとめる
ことを伝える。
※キーワードをもとに自分の課題を
考えることができたか。 (思考・
判断・表現)