実施報告書

別紙様式1
平成26年度 新任女性教員スタート支援経費(平成26年
度以降に採用された本学女性教員のための研究助成)実施報告書
平成
所 属 部 局・職名
札幌校 講師
氏
本庄 十喜
名
27 年
3月
31 日
《新任女性教員スタート支援経費を受けて得られた効果等について》
この度本支援経費を受給させて頂いたことにより、北海道各地に広範囲にわたって存在
する強制連行・労働関係の追悼碑や関連施設のいくつかを直接訪れ調査することが可能と
なった。調査を進める過程で、当初予定していた札幌や室蘭等のみならず「中国人殉難者
慰霊碑」のある仁木町や、朱鞠内湖付近にある「笹の墓標展示館」の存在を知ることがで
き、それらを直接訪れることができた。
「笹の墓標展示館」は、旧真言宗大谷派光顕寺本堂
(1934 年落慶)で、朱鞠内の雨竜ダム建設工事や名雨線(旧深名線)建設工事によって犠
牲となった労働者が付近の共同墓地等に埋葬前夜安置された寺であった。1976 年に本堂か
ら朝鮮人犠牲者の位牌が発見されたことにより、檀家や「空知民衆史講座」のメンバーら
によって強制連行・労働の歴史の「掘り起し」と遺骨の返還運動が始まることになる。そ
の後 90 年代に廃寺になるも上記メンバーらの尽力により展示館として生まれ変わり、現在
では日韓の若者の交流の場ともなっている。
本支援経費によって、
「笹の墓標展示館」の館長・田中富士夫氏や「札幌郷土を掘る会」、
「民衆史道連」の事務局をつとめる小松豊氏にお話を伺うことができた。さらには、多く
の関連文献を入手することが可能となり、明治大学中央図書館や国立国会図書館所蔵の関
連資料調査も複数回詳細に行うことができた。
本研究分野は、先行研究に乏しいため、まずは関連資料を収集するとともに、それらを
精査・分析する必要がある。さらに、実際の担い手にお話を伺うことをとおして、それら
を歴史に位置づける作業が寛容である。地道な作業であり、当事者への聞き取りは信頼関
係を築くことが大切であることからも複数回を要するが、この度の支援により、それらの
活動が非常に円滑に進んだ。
報告者は本学が初めての専任職であり、以前は物理的な面からも調査研究活動が非常に
困難であった。専任職に就けただけでも幸甚であるのに、その上このような充実した制度
を利用することができて大変ありがたい。末筆ながら、この度の経費支給に心から感謝を
申し上げたい。この度の調査活動を契機に、2015 年度以降も本研究を継続しながら、論文
等として成果を発表し、学界や本学にも何らかの形で貢献することを目指したい。
別紙様式1