抗生物質など天然由来化合物の抗バベシア活性評価と

(様式1-3)
受理年月日
受理番号
帯広畜産大学原虫病研究センター共同研究報告書
平 成 27 年
採択番号
研究部門
研究課題名
診断治療研究部門
原虫病研究センター
内共同研究担当教員
郁男
いわつき
まさと
ほかり
穗苅
きよはら
清原
おとぐろ
乙黒
北里大学 北里生命科学研究所 熱帯病研究センター
正人
いしやま
石山
所属部局等・職名
名
岩月
研究期間
五十嵐
抗生物質など天然由来化合物の抗バベシア活性評価と新規治療•予防薬への応用
氏
研究分担者
29 日
25-共
同 -17
26共同-16
(ふりがな)
研究代表者
5月
センター長代理
北里大学 北里生命科学研究所 熱帯病研究センター
あき
亜紀
特任助教
れい
北里大学 北里生命科学研究所 熱帯病研究センター
玲
研究員
ひろあき
寛章
かずひこ
一彦
いがらし
いくお
五十嵐
郁男
北里大学
北里生命科学研究所 大学院感染制御科学府
和漢薬物学研究室・教授
北里大学 北里生命科学研究所 熱帯病研究センター
研究員
帯広畜産大学原虫病研究センター・診断治療研究部門
教授
平 成 26 年 4 月 1 日
~
平 成 27 年 3 月 31 日
北里大学 北里生命科学研究所 熱帯病研究センター(以下、北里大学)では微
生 物 代 謝 産 物 な ど の 天 然 物 を 創 薬 資 源 と し て in vitro、 in vivo の 抗 マ ラ リ ア お よ
び抗トリパノソーマ原虫活性物質を探索している。今までに数百余種の化合物に
ついて抗マラリアおよび抗トリパノソーマ活性を見出しており、一部の化合物は
リード化合物として種々の誘導体を作成し創薬研究を行っている。
一 方 、 動 物 の neglected disease の 一 つ と し て バ ベ シ ア 症 が 注 目 さ れ て き て い
る。バベシアもマラリア原虫やトリパノソーマ原虫と同様に住血原虫であり、一
目的・趣旨
部の抗マラリア剤、抗トリパノソーマ剤は抗バベシア効果を示すことが明らかに
なっており、抗マラリア、抗トリパノソーマ原虫活性との比較からバベシアの新
たな生物学的知見が得られる可能性も示されている。
このような背景のもと、これまで抗マラリアおよび抗トリパノソーマ原虫活性
物 質 と し て 取 得 し た 化 合 物 の バ ベ シ ア に 対 す る 作 用 を in vitro 培 養 系 に 加 え て in
vivo マ ウ ス 実 験 系 で 検 証 し て き た 。H26 年 度 も 培 養 原 虫 で の 検 討 を 継 続 す る 。更
に 評 価 が 先 行 し て い る 化 合 物 ( BF90673) に つ い て は 大 型 動 物 ( イ ヌ ) で の 検 討
を推進し、バベシア症治療薬としての応用、更にはバベシアの生化学的アプロー
チへのツールとしての可能性を見出す。
(様式1-3)
受理年月日
受理番号
H23 年 度 よ り 開 始 し た 本 共 同 研 究 で は 、北 里 大 学 で 見 出 さ れ た 抗 原 虫 活 性 物 質
について、帯広畜産大学(五十嵐教授)において以下に示した評価系で抗バベシ
ア活性評価を行うことで新たな治療薬シードの発見を目指す。
・ in vitro 培 養 牛 バ ベ シ ア ( Babesia bovis お よ び B. bigemina )
・ in vitro 培 養 馬 バ ベ シ ア ( B. equi お よ び B. caballi )
・ in vivo マ ウ ス バ ベ シ ア ( B. microti ) 感 染 モ デ ル
現在、以下の 3 つのプロジェクトが進行中である。
( 1 ) in vitro 培 養 原 虫 で の 評 価 の 継 続
こ れ ま で に 主 に 数 種 類 の 先 行 評 価 化 合 物 の in vitro 評 価 が 為 さ れ て 来 た 。 H26
年度も新たな候補サンプルと数種類送付しており評価を進めている。また、北里
大学では新たに抗原虫活性物質の取得による次候補の探索を継続している。
( 2 ) BF90673 の 検 討
先 行 評 価 化 合 物 の う ち BF90673 (既 存 の ハ ン セ ン 病 治 療 薬 )が 20mg/kg ( 経 口 )
で 標 準 薬 Ganazeg( 25mg/kg, 皮 下 )と 同 等 の in vivo 抗 バ ベ シ ア 活 性 を 示 す こ と
を見出した。
In vitro 抗 バ ベ シ ア 活 性 ( IC 5 0 )
4.5 µM
B. bovis :
B. bigemina : 3.0 µM
B. caballi :
4.3 µM
B. equi :
0.3 µM
研究経過の
概要
本結果を帯広畜産大学および北里大学の共同出願として国内特許(国内特許
13-138824) を 出 願 し た ( 「 研 究 成 果 の 発 表 」 を 参 照 )。 本 化 合 物 は in viv o 抗 マ
ラ リ ア お よ び 抗 ト リ パ ノ ソ ー マ 原 虫 活 性 を 実 施 し た と こ ろ 20 mg/kg( 経 口 )で も
治療効果を示さなかったことからバベシアに対して高い原虫特異性を有すること
が 明 ら か に な っ た 。H26 年 度 は 本 化 合 物 に つ い て 論 文 投 稿 の た め に 追 加 の 実 験 を
実施した(「研究成果の概要」を参照)。本化合物については高次評価としてイ
ヌを用いての治療実験を計画している。
さ ら に BF90673 の 類 縁 化 合 物 で あ る BF90477( B. caballi に 対 す る in vitro 抗
バ ベ シ ア 活 性 : IC 5 0 = 6.4 µM ) に つ い て マ ウ ス バ ベ シ ア ( B. microti ) 感 染 モ デ
ル系を用いて評価を進めている。
( 3 ) BF00324 の 検 討
先 行 評 価 化 合 物 の う ち BF00324( 北 里 大 で 取 得 し た 抗 マ ラ
リ ア 活 性 物 質 ) が in vitro 抗 バ ベ シ ア 活 性 を 示 す こ と を 見 出
した。これまでに構造活性相関を明らかにするために
BF00324 誘 導 体 ラ イ ブ ラ リ ー の 整 備 ( 保 有 量 確 認 な ど ) を 実
施した。
(様式1-3)
受理年月日
受理番号
プ ロ ジ ェ ク ト 毎 に H26 年 度 の 成 果 を 以 下 に 示 す 。
( 1 ) in vitro 培 養 原 虫 で の 評 価 の 継 続
BF90673 に 良 好 な 抗 バ ベ シ ア 活 性 が 認 め ら れ た こ と か ら 同 様 の phenazine 骨
格を有する化合物として北里大学で購入もしく発酵法による調製した 3 化合物
に つ い て 帯 広 畜 産 大 学 に お い て in vitro 評 価 を 進 め て い る 。
( 2 ) BF90673 の 検 討
BF90673 は 経 口 に お い て 標 準 薬 で あ る ganazeg と 同 等 の 抗 バ ベ シ ア 活 性 を 示
す こ と が 明 ら か と な っ た 。 H26 年 度 は 論 文 投 稿 の た め の 追 加 実 験 を 実 施 し 、 以 下
の 点 を 明 ら か に し た ( 五 十 嵐 教 授 )。
・ BF90673 は 抗 バ ベ シ ア 活 性 を 示 す 濃 度 で は 血 球 細 胞 に 影 響 を 与 え な い
研究成果の
概要
(間接的に抗バベシア活性を示す訳ではない)
・ In vivo 感 染 実 験 に お い て BF90673 は バ ベ シ ア を 完 全 に 排 除 で き な い
こ の た め 実 用 化 に 向 け て BF90673 と 他 剤 で 併 用 効 果 が 出 る か を 検 証 す る 必 要
が あ る と 考 え ら れ る 。ま た 論 文 投 稿 の 追 加 実 験 と し て 北 里 に お い て も ganazeg( 試
薬 で は な く 実 際 に 治 療 に 用 い ら れ て い る 塩 ) の in vitro 抗 マ ラ リ ア 原 虫 活 性 を 評
価 し た 。 本 化 合 物 に つ い て は 帯 広 畜 産 大 学 に お い て BF90673 の イ ヌ で の 安 全 性
および感染モデルでの評価をどのように実施できるかを模索している。
ま た BF90673 の 類 縁 体 で あ る BF90477 に つ い て マ ウ ス バ ベ シ ア( B. microti )
感染モデル系を用いて評価を進めている。
( 3 ) BF00324 の 検 討
構 造 活 性 相 関 を 明 ら か に す る た め の BF00324 誘 導 体 ラ イ ブ ラ リ ー の 整 備 ( 保
有量確認など)を完了した。
前 年 度 ま で に バ ベ シ ア 症 の 治 療 剤 及 び 予 防 剤 に 関 す る BF90673 の 用 途 特 許 を
帯 広 畜 産 大 学 と 北 里 大 学 の 共 同 で 出 願 し た ( 国 内 特 許 13-138824)。
H26 年 度 は 本 特 許 に つ い て は JST 支 援 を 受 け た 上 で PCT 出 願 を 行 っ た
研究成果の
発表
( 2014/7/1 出 願 )。 国 際 調 査 報 告 ( 2014/8/27) に お い て 指 摘 さ れ た 点 に つ い て 反
論 す る た め に「 意 見 書 」を 提 出 し た( 各 国 移 行 の 際 に JST 支 援 を 受 け る 為 に は 反
論 は す る べ き で あ る た め )。
ま た 特 許 で 出 願 し た 内 容 お よ び H26 年 度 に 実 施 し た 追 加 実 験 の 結 果 を 併 せ て
論文に投稿を準備中。