英語部報 第2号[736KB pdfファイル]

第56回岡崎市スピーチフェスティバルに寄せて
の
審査員長 愛知学院大学教授
杉浦 正好
今年もスピーチフェスティバルが8月22日(金)に岡崎市総合学習センターで盛大に開催されま
した。前回に劣らず立派に開催されたことに、参加した児童や生徒はもちろんのこと、指導や運営に
関わった先生方のご尽力に敬服しています。
今回は中学生の部に限定してコメントしたいと思います。全体のレベルは確実に上がっており、高
校生の英語スピーチと比較してもそん色はありません。内容は十分に推敲されており、入念な練習の
跡がうかがわれます。その一方で、無難な内容がほとんどで、心に残るスピーチが少なかったような
気がします。理由を考えてみますと、1つは語彙の問題があるような気がします。中学生の語彙力を
はるかに超えた原稿は内容的には立派に見えますが、中学生としての説得力が薄れているような気が
します。スピーチを聴きながら、本人の想いから乖離しているように思えてしまいます。中学校英語
教科書がその1例ですが、難しい語彙を使うよりは、易しい語彙を使いこなすほうが難しいものです。
もう1つの理由は、中学生の生活から出てきた内容でないと、やはり違和感があります。社会問題を
扱う場合は、中学生の日常生活から派生したエピソードを活用すれば説得力がありますが、抽象的に
問題を扱うと、木に竹を接ぐことになりかねません。エピソードをどのようにふくらませるかがキー
ポイントではないでしょうか。
昨年も指摘しましたが、スピーチの基本的な機能は「人の心を動かす」ことです。その条件として、
inspiring (感動的なもの)
、informative(新しい情報を提供するもの)
、enjoyable(聞いて楽しいも
の)の要素を含めると効果的です。すべての条件を満たす必要はありませんが、少なくとも1つは必
要です。今回は、inspiring や informative の要素を含めたスピーチが多く、enjoyable なスピーチは少
なかったようです。日本人はスピーチをまじめに考えすぎて、enjoyable の要素を入れるのを躊躇する
傾向があります。スピーチに enjoyable の要素を含めて、
「人の心を動かす」ようになるとさらによい
でしょう。
話が脇道にそれますが、中日新聞(2014 年 9 月 10 日 33 頁)によれば、
「教育への公費 日本最下
位」という見出しがありました。要するに、経済協力開発機構(OECD)31ヵ国中で総生産に占
める公的支出の割合が最低であるという残念な内容です。一方、同日の中日新聞西三河版(20 頁)に
よれば、岡崎市は全市立中学校にタブレット端末を配り、10 月 1 日から英語・数学・理科の 3 科目の
授業に活用するとの報道がありました。生徒 2 人に1台程度が確保されるとのことです。愛知県内の
自治体では初めての試みであり、どのように活用されるか注目されます。スピーチフェスティバルは
どうしても少数の生徒に限られざるを得ませんが、タブレットが岡崎市の中学校英語教育の底上げに
つながることを期待しています。
第 56 回 岡崎市小中学生英語スピーチフェスティバル
小学校の部 指導講評 高橋 美由紀先生
中学校の部 審査員
杉浦 正好先生、白井 直美先生
Mr. Alex Villareal Quema, Mr. Gary Thomson, Mr. Lee Harvey Alexander
Trying hard
Lee Harvey Alexander
The speakers did a really great job, don’t you think? Their efforts, and the hard work of the
organizers, impressed me again this year. In fact, the 2014 Okazaki Speech Festival was broadly
the same as in previous years. (I have attended for 7 years now.) But in one way, this year’s
event was different from before. It’s a shame to say that there were a large number of English
mistakes in the speeches this year, which is very different from previous events. It’s the ALTs’
job to correct grammar and usage before the students memorize their speeches, but it seems
that this year we did not do our job to the same high standard as before. Is this because there
wasn’t enough time to check the speeches? Or because we have so few experienced ALTs in
Okazaki now? I don’t know the reason. But I know that the wonderful students of Okazaki will
keep doing their best to make the Okazaki Speech Festival an excellent event. We must try
hard, too!
Another Great Speech Festival
Gary Thomson
This year’s Okazaki English Speech Festival was another great day. I would like to say thank
you to all the people who helped organize it. All of the students did a fantastic job with their
speeches. There were some great topics and they tried to speak from their hearts. One issue I
did find this year was the pronunciation. Some speeches were hard to understand. I think one
reason is we don’t spend enough time practicing with junior high students. When I started
teaching in Okazaki I used to go to the junior high a lot more than the elementary schools to
practice for the speech festival. Now I go to the elementary schools more than junior high. It is
something to think about for next year. One thing I do know is our students will keep doing their
best to make it a great festival. We should make sure they get all the help they can get.
BRAVO!
Alex Villareal Quema
It was indeed a privilege to be among the panel of judges in the recently concluded Okazaki
Speech Festival. Many of the speeches rendered by the students were of high level. The topics in
some of the speeches were relevant in today’s global society while some were quite interesting
and rather “witty.” The way by which the students conveyed their ideas and intrigued the
audience with their speeches was really commendable. It was obvious that each and every
participant prepared well. To the students…“A round of applause!” I also would like to thank
and congratulate the organizers and all those who came and supported the event. BRAVO!
「 人の中で人は育つ 」
新香山中学校
鹿田 晋
7月初旬、ジョーダンさんがニューポートビーチから
交換留学生としてやってきた。
「日本のじめじめとし
た『夏』は苦手だけれども、お祭りの『夏』は大好き
です。
」と彼女は心境を語ってくれたので、ぜひ日本の
『夏』を味わってもらおうと、いくつか企画した。ま
ず、
『YUKATAを着よう!』だ。同じクラスの女
子生徒と「I know how to wear YUKATA.」
「I’ll show
you.」など先に習う不定詞を用いて会話に花が咲いた。
次に『七夕』も近かったので、学年集会を開き、歓
迎会と『みんなと一緒に短冊を作りましょう!』とい
う活動を行った。一緒に「きらきら星」を歌い、
歓迎のメッセージを贈り、全員とコミュニケ-ショ
ンが取れる機会をもった。
短冊に願いごとを書く時
間になると、本校の生徒とジェスチャーを交えて会
話する姿があり、いい時間がもてたと感じた。交換
留学生との交流で一番の収穫は、生の英語に触れた
ことでも、
英語で会話を交わせたことでもなく、
「人
を思いやる心」を育めたことだ。放課の時間に女子
<
生徒がジョーダンさんの元に集まり、彼女に「大
丈夫? 困っていない?」と気を配る場面が多くあった。言語の壁を越えた、思いやりの美しさを感
じた。
「 好奇心が勝る瞬間 」
北中学校
石原 佳世
ニューポートビーチからコナー君が来ました。生徒たちにとっ
ては ALT 以外の外国人と会う初めての機会でした。実際に会う外
国人は ALT のようにクリアな英語を話すわけではありません。英
語の知識が未熟な生徒たちにとって、わからない単語が会話の中
に出てきて、話すスピードも速く、聞き取れないこともたくさん
ありました。しかし、今まで英語を話すことに対し消極的だった
生徒たちが何とかして英語でしゃべってみよう、伝えよう、とす
る姿勢が少しずつ表れてきました。ジェスチャーを交えたり、
知っている英語をひたすら使ってみたり…。
ネイティブから見れば不格好で間違いだらけの英語でし
たが、生徒たちの気持ちは十分伝わるものでした。
また、ニューポートビーチの先生方が北中を訪問した際、先生たちの話を一生懸命聞き、友達と
相談しながら少しでも理解しようと、自分の力で質問してみようとい
う生徒たちの姿を見ることが出来ました。英語を間違えたり、失敗し
たりすることよりも、質問したいという好奇心の方が勝っていた瞬間
でした。
コナー君と過ごす最後の日、クラスのある子が「もっとコナーと話
せばよかったな。もっと知りたいこともあった、英語でしゃべりた
かった」と言いました。これをきっかけに、英語で話すことを恐れず、
挑戦する生徒たちの姿勢を大切に英語指導をしていきたいです。
授業改善に向けて
今年度、
『言語習得理論を学び、実際の授業に生かす』を年間テー
マとして設定し、石川佳宏先生(北中)を講師にお招きして自主研
修会を行っています。英語が話せるおかざきっ子を育てていくため
に、効果的な言語活動について考えていきたいと考えました。前半
2回は言語習得の理論について学び、9月下旬に開催した第3回の
研修では、実際の授業の映像を見ながら、効果的な言語活動につい
て考察しました。今後は下記の日程で自主研修会を開催していく予
定です。日々の授業を振り返り、言語活動について考えるよい機会
となります。
子供が既習表現の中からどの表現を使うかを自ら考えて会話する言語活動を考えていま
す。授業改善に向けて一緒に勉強していきましょう。これまでに参加されていない先生方でも学べま
すので、ぜひご参加ください。
<今後の予定> 10月24日(金) 18:00~
総合学習センター
11月28日(金) 17:30~
総合学習センター
ICT を使った英語の授業
月報「岡崎の教育」4月号に今年度の岡崎の教育についての指針が示されました。それを読んだ時、
「え?
タブレットを英語で使うの?」と驚かれたことでしょう。時は瞬く間に流れ、2学期に入りました。そし
て全中学校にタブレット PC、各学年の指導案、そして資料(2学期用)が配付されました。コンセプト
は「機械が苦手な先生でも操作できるタブレット活用」です。しかし、実際に自分もやってみると、タブ
レットを起動させる前段階の、教室環境を整えることに四苦八苦しました。それと同時に葵中学校の整っ
た環境を思い出し、葵中学校の先生方の、表には見えない努力の軌跡に敬服ました。
タブレットPCを自由に使いこなせるようになるまでは、忍耐と努力が必要です。一度やってみて「で
きない」と諦めず、学習情報の先生に相談しながら、共にがんばっていきましょう。生徒の「学びのスタ
イル」を変えることは「自分の指導力を振り返り、向上させる」きっかけとなるはずです。
おすすめの本
「英語で伝えたい ふつうの日本」
(著:江口裕之・Stuart Varnam-Atkin
発行所:DHC 本体価格:1,890 円)
扇子、相撲、生け花・・・のように王道の日本文化と
言われるものは取り扱っていません。本書は「なぜ
トイレ専用のスリッパがあるの?」
「なぜ日本人はプ
レゼントをすぐには開けたがらないの?」
「なぜ結婚
式ではお金をプレゼントするの?」など、私たち日
本人が特に深く考えずに何気なく過ごしている生活
について、外国人が質問攻めにする本です。それを
J さんが日本古来の考え方を基にしながらわかりや
すく説明してくれるので、古来の云われを知らない
日本人こそ「へ~」と深くうなずいてしまう一冊で
す。しかもCDに録音されているので、車の中で聞
き流せるのが大きなポイントです。日本人としての
アイデンティティに関する教育の充実が求められて
いる今、私たちの知識も豊富にして、英語指導をす
る上でのアイディアが広がれば、
とても素敵ですね。
英語科指導員 岩津中学校 都筑 香理
今後の予定
10月24日(金) 英語科自主研修会
18:00~
at 総合学習センター
10月25日(土)愛知県中学生英語弁論大会
9:40~
at 光ヶ丘高等学校
10月29日(水)英語活動授業研究協議会
13:10~
at 本宿小学校
11月5日(水)東西三河中学校
英語スピーチコンテスト
西三河大会
12:30~
at 高浜市中央公民館
11月26日(水)英語主任会
15:30~
at 総合学習センター
11月28日(金)英語科自主研修会
17:30~
at 総合学習センター