「介護技術発表課題」【PDFファイル】 - 第14回かながわ高齢者福祉研究

第 11 回かながわ高齢者福祉研究大会 介護技術発表・対象者プロフィール「鈴木さん」
皆さんは、E 特別養護老人ホームに、1ヶ月前に入職したばかりです。
対象者の鈴木さんは、フロアを変わったばかりで、まだ皆さんに慣れておらず、
皆さんとは、まだあまり親密ではありません。鈴木さんは、以下のような方です。
基本情報
鈴木明子さん(80歳代・女性) 要介護4
認知症高齢者の生活自立度 Ⅱ
家族状況 夫と二人暮らしだったが、夫は10年前に死去 息子2人と娘1人
疾患名: 脳梗塞後遺症(左片麻痺) 老人性振戦
現病歴:H.16年○月、脳梗塞発症し、A病院に緊急入院。リハ目的で○月~○月B病院
に入院、以後 C 老健・D老健に入所。
(平成 20 年、現在の E 特別養護老人ホームに入居した。)
他職種からの情報
生活相談員:息子・娘とも、県内に在住している。キーパーソンは次男で、週に1回
は必ず面会に来ている。長女は夫の両親と同居しており、義母の介護と
子育てで多忙なため、面会の頻度は少ない。
入居まで老健を転々としており、そこで出来た友達に手紙を書くのが楽
しみの一つ。長女に、ここでの生活について、よく手紙を書いている。
フロアを変わったのは、希望していた窓際の部屋が空いたため。
看護師:血圧は 150~140/80 で安定している。
左上肢~手指にわたって痛みがあるが、これは麻痺による不動と感覚障害に
よるもの。湿布等の対応で本人も落ち着いている。
右手に老人性振戦が見られ、少しずつ悪化している。
最近は食欲が低下しており、体重も減少傾向。徐々に体力が落ちてきており、
トイレで排泄時、姿勢を保てず横に倒れてしまっていたことが、最近2~3
回あった。
介護支援専門員:徐々にレベルダウンしてきている。本人は「手紙を書くことをずっ
と続けていたい。友達とおしゃべり出来る毎日を過ごしたい」と希望されて
おり、家族も「出来るだけ今の状態を維持したい」と考えている。
個人因子
◆生活歴~現在まで:
東北地方 A 県の出身。7人兄弟の長女として生まれる。小さい頃は大人しかったが学校
の成績は良く、裕福だったこともあり、高校まで進学する。19歳で見合い結婚。夫の
仕事の都合で35才頃より東京に移り住む。
子育てが一段落してからは、地域の婦人会などの役員を長年担う。夫婦揃って非常に世
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話好きで、仲人経験も多かった。人の役に立つことが、生きがいだった。
夫は 10 年前に亡くなり、
その後一人暮らしをしていたが、平成16年脳梗塞を発症し、
車椅子生活となる。本人は自宅へ帰りたい気持ちが強かったが、子世帯との同居は困難
であったため、平成20年 E 特別養護老人ホームに入居となった。
◆ 趣味:手紙を書くこと・歌を歌うこと・聞くこと
昔は映画を見ることも好きだった。
スポーツをテレビで見るのも好き。今年のロンドンオリンピックは、興味があ
る。
◆ 性格:世話好き おしゃべりが好き
世話好きで、いつも人に囲まれて生活していた。仲人をした人たちとの交流も続い
ており、またこれまで入居していた老健での同室者とも、今でも交流があり、その
人たちに手紙を書くのが楽しみだった。相手から手紙が来ると、とても嬉しそうで
あり、職員に渡して読むよう勧めることもある。
同じ麻痺を持つ人には、
「こうやったら良いよ」と身体の使い方をアドバイスしてお
り、世話を焼き、頼られていた。
最近、以前からあった右手の震え(老人性振戦)ひどくなり、小さい字が書けなく
なり、それを歯がゆく思っている。また、同じ頃から食事量が減り、疲れやすく、
ベッドで横になっている時間が増えた。
環境因子
現在、E 特養に入所中。3階・4人部屋の窓側のベッドである。
ベッドには移動用バーがついている。
まだ、フロアを移動して間がないが、同室者の田中さんとは気が合うようで、居室
や食堂でおしゃべりをしている様子を見かけるようになった。
心身機能
◆身体面:
・ 左片麻痺が重度残存していている。
・ 左上肢は固まっており、座位では肘が屈曲し、胸に押し付けられている。
・ 左上肢は、職員が胸より上に持ち上げると、
「痛い」と訴える。
・ 左指も強く握りしめられている。
・ 左下肢は股関節・膝関節は固く、膝関節は十分に曲げ・伸ばしが出来ない。そのため、
立ち上がる際、左下肢に十分に体重をかけることが出来ない。
・ 左足関節は固まっており、十分に曲げることは出来ない。
・ 座位では、円背で仙骨座りである。
・ ベッド上で、右手で手すりを握っていれば、そのまま座位姿勢を 10 秒程度保つことが
出来る。
・ 座位時、左下肢は動くが、
「足を後ろに引いてください」と言わない限り、左足はやや
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前に投げ出したように位置している。
・ 座位姿勢は右に傾いており、手すりを持っていても5分以上座っていると、「疲れた」
と右後方へ倒れてしまう。
・ 舌・頬の動きが悪く、言葉はゆっくりで、やや不明瞭。
・
右手指には、安静時・動作時、ともに震えが見られる。
・
やや耳が聞こえにくい
◆精神面:
・ 年相応の物忘れが見られるが、生活に支障は見られない。
・
不安や納得のいかないことが重なると、痛みや身体の不調の訴えが多くなる。よく話
を聞くことで解消することが多い。
活動
◆コミュニケーション:
・
職員や入居者に積極的に話しかける方である。自分のことを話すことが多いが、人の
話しを聞くことも好き。
・ 口や舌・頬の動きが悪いため、ややゆっくりではあるが、職員・入居者には十分伝わる。
・ 職員と話すことが好きで、話すと長くなるため、職員もじっくり時間をとるよう配慮し
ている。
◆基本動作:
通常姿勢:自操式の車椅子を使用。車椅子座位時、円背・仙骨座りが著明となる。左手は
身体の前面にあり、肘が曲がり体に押しつけられていることも多い。
寝返り:ベッド柵を右手で持って体を引き寄せ、体を側臥位にもってくることが出来る。
ベッド上起き上がり:声かけで頭部を右に向け、ベッド柵を右手で持ち側臥位になり、足
をベッドから下ろすことまで出来るが、動作がゆっくりであるので、起き上がりまでは
出来ず、上半身(~下半身)の起き上がりを介助している。
座位保持:きちんと座っていれば、ベッドの手すりを握らなくても 10 秒程度であれば、座
位保持可能。ただし、体力が低下しているので、長時間は難しい。また、感覚も悪く、
注意力が低下していることもあり、座位が傾いても自分で立て直そうとしない。安定し
た座位姿勢の確認が必要。
靴は、右足は自分で履けるが、左足は支持なしの座位が安定しないため、介助が必要
車椅子への移乗:声かけでベッドの手すりを右手で持ち、体を前傾し、右足に体重を移す
ことは出来る。右手で手すりをつかみ、右足に体重をかけて立ち上がろうとするが、左
膝・足関節の緊張が増して、身体を押してしまい、不安定になる。
そのため、左下肢を出来るだけ曲げる声かけ・介助。身体を支える介助が必要となる。
車椅子操作:右のブレーキ・フットレストの上げ下げは、自分で出来るが、左のブレーキ
については声かけが必要。左膝が曲がりにくいため、左のフットレストは介助する。
円背・仙骨座りであることが多く、ひどい場合は調整する。
車椅子駆動:右手・右足を使って進もうとするが、うまく曲がることはできない。そのた
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め、手すりがある場所では、手すりを引っ張って移動している。
◆食事:職員が食事をセッティングする。右手でスプーンを使って食べているが、震えが
あるので、口元でこぼしてしまうことも多い。咀嚼・嚥下も悪いので、普通食は食べ
られない。最近は食欲が無く、残すことが多くなってきている。
体力が落ちてきているので、右手の震えがひどい場合は、本人に聞いて介助を行うこ
ともある。
なんとか好きなものをお出しし、
「食べたい」と思っていただきたい。彩りの良いもの、
季節のものなど、工夫のある食事は食べようと思うようだ。
◆排泄:尿・便意ともにあり。
起立介助・ズボンの上げ下ろし等の介助を行う。
最近下剤が合わず、便の失敗が数回あり、本人も気にしている。
◆更衣:
以前はスカートしか着たことが無かったが、車椅子生活になってズボンを履くように
なった。
靴下は脱いで寝ている。
右手が震えるので、小さなボタンなどは苦手。
朝は身体がこわばっており、着替えると疲れてしまうので、朝食が終わって、日中に
着替えるのが習慣。
「出来る更衣は自分で行う」というのが職員と一緒に決めた課題。しかし、不安なこ
とがあると身体の痛みや疲れ・震えになり、出来ることも出来なくなってしまう。
◆入浴
座位で可能な浴槽を使用して入浴している。
座位が不安定なので、洗体・洗髪はほぼ全介助。
最近は体力が落ちているので、入浴後は居室ベッドで横になって休む。
参加
・ 以前は、日中、入居者・職員とおしゃべりするか、手紙を書いて過ごしていたが、
最近はベッドで横になっていることが多くなってきている。
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第11回かながわ高齢者福祉研究大会 介護技術発表プロフィール「田中さん」
基本情報
田中菜穂子さん(80歳代・女性) 要介護4
◆ 家族状況
認知症高齢者の生活自立度 Ⅱ
夫と二人暮らしだったが、夫は 15 年前に死去。以降独居
県内に娘(長女・次女)夫婦が在住
◆ 疾患名:
変形性膝関節症(両) 左大腿骨頚部骨折
◆ 入居まで: K 県出身。高校卒業後、上京し会社員の夫と結婚、2人の娘をもうける。
夫婦仲が良く、夫の退職後は、日本中を夫婦で旅することが夢だったが、
平成4年夫は脳梗塞で倒れてしまう。その後、夫を自宅で介護するが、変
形性膝関節症が悪化。杖~押し車が無いと歩けなくなる。平成9年、夫の
状態が急変し亡くなり、以後独居となる。
平成18年、自宅のトイレで転倒、左大腿骨頚部骨折し、車椅子生活とな
る。自宅で一人暮らすのは不安、という本人の希望もあり、平成 22 年 E
特別養護老人ホームへ入所となった。
◆ 趣味:旅行・読書・歌を歌うこと。 新聞は毎日読むのが今でも習慣。
体を動かすことも好きだった
◆ 性格:穏やか・我慢強い・優しい
性格は穏やかで、入居者とトラブルを起こしたことはない。
やや耳が遠いけれど、人とおしゃべりするのは好き。
文句やグチを言わないので、職員も田中さんと話すことで救われることが多い。
◆ 生活状況
車椅子を使用。駆動・操作は自立。
立位が出来ないので、車椅子移乗には、お尻を上げる・腰を支える介助が必要。
最近同室となった鈴木さんと、仲良くなりたいと思っている。
やや難聴であるため、職員はやや大きな声で…と心がけている。
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第11回かながわ高齢者福祉研究大会 介護技術発表課題
会場:501(午前の部)20分
【移動介助】の課題
○状況
ベッド横に標準型車椅子が置いてあり、鈴木さんは毛布を掛けて寝ている。
ベッドには、ベッド柵がついている。
職員は起床の準備のために訪室する。
○課題
鈴木さんが、朝ベッドから起きて、車椅子に移り、
ご本人の望む簡単な更衣をするまでの介助をしてください。
(鈴木さんは、元々朝食を食べてから着替える人であるため、
日中の装いは、朝食後に手伝います。)
○配置図
テーブル
※ テーブル・ 鈴木さん ・ベッドの位置は変更が有り得ます
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第11回かながわ高齢者福祉研究大会 介護技術発表課題
会場:502(午前の部)20分
【ノロウィルス発生時の対応 食堂】の課題
○状況
食堂には、職員1名と利用者2名がいる。
利用者の「鈴木さん」と「田中さん」は穏やかに話しをしている。
利用者同士の仲は良いのですが、同じ居室では無い。
職員は食堂で片付けをしている。
○課題
夕方4時過ぎ、食堂で「鈴木さん」と「田中さん」が穏やかに過ごされていた時、
突然、鈴木さんが嘔吐されました。
事業所周辺ではノロウィルスが流行しているため、
ノロウィルスによる嘔吐症状と考えます。
鈴木さんと田中さんの気持ちに配慮しながら、
ノロウィルス感染拡大を防ぐ対応をしてください。
○留意点 施設で実際に行っていることを発表してください。
(ただし、「居室に誘導して衣類を着替える」ことまでは不要です。)
○配置図
職員
鈴木
田中
※ 利用者の位置は変更が有り得ます。
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第11回かながわ高齢者福祉研究大会 介護技術発表課題
会場:501(午後の部)30分
【ノロウィルス発生時の対応 居室】の課題
○状況
ナースコールが鳴ったので訪室してみると、
利用者の鈴木さんが、ベッドに横になっており、
口元~枕周囲には吐瀉物が飛び散っている。
田中さんの他に、居室には3人の方が就寝中だったが、
うち1人が起きており、鈴木さんの様子を心配そうに窺っている。
ナースコールは、起きている同室者の田中さんが押してくれたようだ。
○課題
夜間帯(午後10時頃) ナースコールが鳴ったため訪室してみると、
利用者の鈴木さんの口元~枕元には吐瀉物が飛び散っていました。
事業所周辺ではノロウィルスが流行しているため、
ノロウィルスによる嘔吐症状と思われます。
鈴木さんや同室者の田中さんの気持ちに配慮しながら、
ノロウィルス感染拡大を防ぐ対応をしてください。
○配置図
鈴木さん
職員
田中
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第11回かながわ高齢者福祉研究大会 介護技術発表課題
会場:502(午後の部)30分
【レクリエーション】の課題
○状況
食堂と機能訓練室を兼ねたスペースに
利用者8名(独歩2名・杖歩行3名・車椅子3名)が集まっている。
利用者の多くは認知症があるが、ゆっくり説明すると理解出来る。
車椅子利用者2名と杖歩行者1名は片麻痺の障害があり、片手しか使えない。
利用者はレクリエーションを楽しみにしており、非常に協力的である。
自己紹介・ウォーミングアップの体操・手遊びなどは終わっている。
難聴のある方も数名います。( 大きな声であれば聞こえます)
○課題
利用者の方、全員が一緒に楽しめるようなレクリエーションを行ってください。
レクリエーションには、鈴木さん・田中さんが参加します。
施設から道具を持参することは構いませんが、
あまり高価な道具は汎用性に欠けます。
どの施設でも使えそうなレクリエーションを行ってください。
○配置図
サブ
リー
ダー
※ 配置図は、皆さんで決めていただいて結構です
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第11回かながわ高齢者福祉研究大会 介護技術発表課題
会場:502(午後の部)20分
【介護食の展示と食事介助】の課題
○状況
スタート地点は食堂入り口の設定。
テーブル・椅子が置いてある鈴木さんの席まで誘導をするところから始める。
食事は別のテーブルに準備してある。
鈴木さんは、朝食はしっかり食べている。
○課題
朝食後居室で過ごした鈴木さんを、食事の席まで誘導し、
昼食を美味しく食べていただけるよう、介助をしてください。
また、鈴木さんの食事(献立・器・食形態等)に関する工夫点も説明してください。
○配置図
鈴木さんの食事が準備してある
テーブル
食堂
入り口
鈴木さんの
食事用の席
※ 配置図は、あくまでイメージです
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