企画書

「猛禽類保護の進め方」の改訂を考える
・・・希少 猛 禽 類 の 絶 滅 危 険 度 の顕 著 な 低 下 を め ざ し て ・・・
高橋誠
1.2 ・ 本 田 智 明 2 ・ 根 本 理 2
1: イ ヌ ワ シ の 森 俱 楽 部
2:日 本 猛 禽 類 研 究 フ ォ ー ラ ム
・ 「 猛 禽 類 保 護 の 進 め 方 」は 、1990 年 代 前 半 に 全 国 各 地 で 開 発 事 業 と 猛 禽 類保
護 の 問 題 が 頻 発 し た こ と か ら 、環 境 庁( 当 時 )が 1996 年 イ ヌ ワ シ 、ク マ タ カ
およびオオタカの三種を対象にその間の調整を図るためのガイドラインとし
て刊行されました。
・ 「進め方」の刊行により、事業者をはじめ一般の方々のイヌワシやクマタカ
な ど に 対 す る 理 解 と 保 護 意 識 が 深 ま り 、また 、1997 年 に 環 境 影 響 評 価 法 が制
定され、その生態的地位や希少性などから指標動物として評価対象になるこ
とが多いことから、その生態の研究や保護対策の検討・実施が進んできまし
た。
・ し か し 、や や も す れ ば こ の 三 種 だ け に行 政 や 開 発 事 業 者 お よ び 社 会 一 般 の関
心が集まったこと、生態等に関する知見の蓄積が少ないなかで刊行されたた
め専門家の判断に委ねられる事項が多いこと、また、開発行為との調整に力
点が置かれ、種や個体群としての保護の観点が不十分であるなど改善を要す
る課題もあるように思われます。
・ 2010 年 は 、
「 生 物 多 様 性 の 損 失 速 度 を 顕著 に 減 少 さ せ る 」と い う 生 物 多 様 性
条 約 上 の 目 標 年 (2010taget) に 当 た っ て い ま す 。
し か し 、2006 年 12 月 に 環 境 省 が 発 表 し た レ ッ ドリ ス ト の 第 二 次 見 直 し 結 果
では、オオタカが絶滅危惧Ⅱ類(絶滅の危険が増大している種)から準絶滅
危惧種(生息条件の変化によって絶滅危惧に移行する可能性がある種)にラ
ンクが一つ下がったものの、イヌワシやクマタカのランクは変わらず、反対
に新たに里山を中心に生息するサシバがランク外から絶滅危惧Ⅱ類にランク
されなど、わが国の猛禽類を取り巻く状況は依然として厳しいものがありま
す。
・ 現 在 、 環 境 省 で は 、「 進 め 方 」 刊 行 後 の イ ヌ ワ シ 等 の 調 査 研 究 結 果 な ど を 踏
ま え 2010 年 を 目 途 に 「 猛 禽 類 保 護 の進 め 方 」 の 改 訂 を 行 う 予 定 で す 。
・
猛禽類の生態の調査研究および保護対策の推進については、日本鳥学会で
も こ れ ま で 研 究 発 表 や 自 由 集会 が 開 催 等 さ れ て き ま し た が 、
「 進 め 方 」が これ
まで果たしてきた役割を考えると、その改訂は今後の希少猛禽類の保護にあ
たって重要なことと考えられます。
ついては、この機会に希少猛禽類の近い将来での絶滅の危険性の顕著な低
下を目指して、改訂版がより一層有意義なものになるよう関係者と議論を行
いたいと考えています。
以上