改正労働安全衛生法に基づく「ストレスチェック制度」について

改正労働安全衛生法に基づく「ストレスチェック制度」について
皆さん初めまして!ファイナンシャルプランナーの船津正明と申します。
今回は本年12月から必須となったストレスチェック制度について解説していきます。
私の専門外の分野ではありますが、単なる制度説明ではなく職場のマネジメントや
リーダーシップを強化する為のヒントにして頂ければ幸いです。今回で最終回です。
ストレスチェックの意義を考え、前向きに活用する
もし部下が、ストレスチェックで「高ストレス状態」との評価結果を受けて、産業医の
面接指導を経て専門医に紹介され、休養が必要になったことも、部下の不調が早めに見つ
かって重症化せずに済んだと考えることも出来ます。また、上司である自分が気付かない
不調が、タイミング良く発見されたとも言えます。そして、何が部下を「高ストレス状
態」にしたのかを考えることも出来ます。他の部下達にも影響している職場のストレス
要因がないか、上司である自分のサポートが乏しくなっていないかを再検討することも
出来ます。これを機会に、他の部下達の本音をじっくり聞き出すこともできるでしょう。
精一杯頑張るより、意見を良く聞いてもっと効率的な方法がないかと、仕事の手順や手続
きを考えるチャンスかも知れません。人事からの部下の件で連絡が来ることを、管理職と
して対立軸で見るような考え方では、同じ企業のリソースを活用して、相乗的に生産性を
向上させることは出来ないでしょう。これからの経営層や管理職に求められる視点は、
「ストレスチェックは職場ストレスを再考する機会であると捉える」こと、そして、
「定期的に見直すキッカケ」になるという考え方であるはずです。
ストレスチェックは、「ブラック」か「ホワイト」かのリトマス試験紙
私は、ストレスチェック制度は「その企業のメンタルヘルスに対する考え方が露呈する
鏡のようなものだ」と思います。ストレスに感じることを口にしてもかまわない環境な
ら、ストレスチェックを受けることを避ける人は出ないはずです。高ストレス状態だと評
価された人でも、そのことで差別や偏見を受けないと会社側を信頼出来るなら、結果を開
示し医師の面接指導を受けたいと、上司にもきちんと報告出来るでしょう。上司が信頼出
来れば、ストレスチェックを受ける以前に、仕事のストレス要因や周囲のサポートについ
ての悩みを打ち明けることが出来るはずです。心身のコンディションの悪化を招く程の急
性のストレス反応が認められる状態であれば、そのことを上司にだって相談出来るので
す。
そして、不調となった人が社内にいて、どのように扱われているかを見れば、自分がそ
うなった場合のことも、理解しやすいでしょう。もしも、そうした人がぞんざいに扱われ
ているのを目撃すれば、
「高ストレス状態」との結果をひたすら隠そうとするのではない
でしょうか?そういう風通しの悪い職場環境にしてはいけないと思います。
■神戸ビジネスメールマガジン ― KCCI■
ところで、人事部門や健康管理部門に関わったことがない人はご存知ないかもしれませ
んが、一般定期健康診断と同じように、ストレスチェックも、厚生労働省の出先機関であ
り、いわば労働問題の警察に当たる労働基準監督署に対する報告義務が会社側にありま
す。
その中で会社側は、毎年、次の項目をストレスチェックの実施時期とともに報告するこ
とになっています。
① ストレスチェックの対象人数
② ストレスチェックの受検人数
③ 面接指導の実施人数
対象人数で受検人数と面接指導の実施人数を割ると、その会社の傾向が一目瞭然となり
ます。ストレスチェックを受けた人の中で「高ストレス状態」と評価される人の割合は、
当初から5%から10%くらいだと想定されています。受ける人と面接指導を希望する人
がともに高い企業では、この制度の趣旨どおりに、[真剣に取り組もうとしている]のが
分かります。従業員を大切にしようとしている、いわゆる「ホワイト企業」の可能性が高
いのです。何故なら、気軽に受検でき、素直に面接指導を希望出来るからです。
一方、受検率と面接指導を受ける人の割合がともに低い企業は{真剣に取り組む気がな
い}のです。会社側から見れば、なるべく受けないように仕向けたい、従業員から見れ
ば、不利益を被る心配があるから受けないということです。従業員を使い捨てにするいわ
ゆる「ブラック企業」の可能性があります。
経営層や管理職として、ストレスチェックを実施すれば、これまでオブラートに包んで
いた、あなたの会社と職場のメンタルヘルスの状況、労務的に言えば労使関係、リーダー
シップやマネジメントの視点で言えば信頼関係が明確になるという点を、しっかりと押さ
えておく必要があると思います。
ストレスチェックと医師による面接指導を受けるよう奨励する
好むと好まざるとにかかわらず、将来にわたって、毎年ストレスチェックは継続しま
す。リスクと損失を最小にしてコンプライアンスを守る為には、従業員や部下達にストレ
スチェックを受けることを奨励し、素直に感じたまま回答するよう伝えておくのが一番で
す。
もしも「高ストレス状態」との評価結果であれば、産業医等による、面接指導を積極的
に受けるように、日頃から勧めておくのがよいでしょう。医師や保健師等に躊躇なく相談
し、必要なら専門的な治療を受け、療養すれば良いという、オープンな態度を示し続ける
のがふさわしい対応なのです。もしも、こうした対応が綺麗事だと感じるなら、次のよう
な判例を知っておくとよいと思います。過重労働によるメンタルヘルス不調で、長期療養
後に解雇された人が解雇無効と損害賠償を求めた裁判で、2014年3月に最高裁判所の
判決が出ました。会社側(経営層と管理職等)は、従業員や部下からの申告がなくても、
■神戸ビジネスメールマガジン ― KCCI■
残業等による健康への影響がないようにする安全配慮義務を負っている。また、不調の
想定されるような場合には、従業員や部下達は申告しづらいことも理解した上で、業務を
軽減する等の措置を講じる必要がある。
(要約)
会社側にとってストレスチェック制度の最大の課題は、従業員や部下の、急性のストレ
ス反応や仕事のストレス要因、周囲のサポートの状況が毎年点数化され、蓄積されていく
点です。この最高裁判所の判例を見る限り、ストレスチェックの結果や面接指導のことを
知ろうが知るまいが、従業員や部下への配慮義務は免れないとされているのです。
そうであればストレスチェックをどんどん受けて貰って、正直に回答し、心配なら専門
家に相談し、そして「高ストレス状態」なら医師の面接指導を受けるよう、積極的に勧め
ていったほうが得策ではないでしょうか。このように、職場でストレスチェックを行う意
義をよく考え、オープンに捉えてストレスチェックの受検を勧めていくというのが、これ
からの経営層や管理職の取るべき対応であると思います。
具体的にストレスチェックに対応されている各種法人の中でインターネットでも分かり
やすいサイトがありましたので興味のある方はご参照下さい
http://www.mymenu-promotion.com/
最後まで読んで頂き有難うございました。
船津正明 FP 事務所
代表 船津
正明
〒658-0047
神戸市東灘区御影 3-2-11-307
TEL
E-mail
Web
090-9011-7431
[email protected]
http://funatsufp.com
Blog https://kobeblog.net/u/579504a/
■神戸ビジネスメールマガジン ― KCCI■