サンプリングをどれぐらいの速さで行うか?

LeCroy Application Brief
No. LAB 429
サンプリングをどれぐらいの速さで行うか?
サンプリング・レートが時間測定の不確実性に与える影響
サンプリング・レートが時間測定の不確実性に与える影響
タイミング・ジッタを測定する
ときに共通して起きる問題は 、
「測定の不確実性を最小限に抑え
るためには、信号をどれぐらいの
速さでサンプリングしたらよ い
か?」ということです。答えは比
較的簡単です。測定帯域幅の 10
倍以上の速さでサンプリングすれ
ば、サンプリング・レートによる
不確実性は最小となります。この
ことは、基本的なテストで証明す
ることができます。まずタイミン
グ・パラメータをヒストグラム化
し、そのヒストグラムの標準偏差
をさまざまなサンプリング・レー
トにおけるタイミングの不確実性
の目安とします。
図 1:主要な統計パラメータである p@lv(period at level)パラメータ
による測定
図 1 に、ある特定のレベルにあ
周期の測定を様々なサンプリン
キスト条件を満たしていません。
る周期(period at level)を解析す
グ・レートで繰り返し行うと、サ
このサンプリング・レートでは、
るためのタイミング測定の代表例
ンプリング・レートが標準偏差に
測定値の標準偏差が大きく、測定
を示します。信号源は 50 MHz の
与える影響が分かります。図 2 に、 精度が低いことを示しています。
方形波です。サンプリング・レー
p@lv(period at level)パラメー
サンプリング・レートを高めると、
トが 8 GS/s のとき、ヒストグラム
タを使用して行ったテストの結果
標準偏差が下がり、測定の確実性
の標準偏差(シグマ、σ)は 2.8 ps
を示します。このテストでは、信
が増していきます。サンプリ ン
です。標準偏差は、測定したパラ
号の振幅やトランジション(通過) グ・レートをアナログ帯域幅の 4
メータの平均値からの分散を表し
時間など、その他すべての設定値
∼5 倍に高めると、測定値の標準
ています。物理的には、シグマは
は固定してあります。
偏差は急激に低下していきます。
パラメータ(この場合は信号の周
しかしその後は、標準偏差の低下
期)の rms ジッタです。測定を数
図 2 のデータは、レクロイ社の
率はあまり変わらなくなります。
多く行えば、パラメータの平均値
LC584AXL と LC684DXL を使用
サンプリング・レートをアナログ
はそのパラメータの真の値に近づ
し、それぞれ 1 GHz と 1.5 GHz
帯域幅の 8∼10 倍に高めると、測
きます。また、標準偏差は、その
のアナログ帯域幅で捕捉したもの
定の確実性の改善曲線はフラット
平均値がどれほど信頼できるかを
です。サンプリング・レートは 1
になり、それ以上サンプリング・
示す指標でもあります。ガウス分
GS/s∼25 GS/s まで変化させてい
レートを高くしてもほとんど確実
布では、全測定値の 68%が±1σ
ます。図 2 に示されている結果は
性の改善には影響しなくなります。
の範囲に入ります。標準偏差が小
予想通りです。1 GS/s の低いサン
さいほど、平均値に対する確実性
プリング・レートでは、データが
この結果は、ほとんどのタイミ
が高いことを表します。
アンダーサンプリングされ、ナイ
ング測定に共通して当てはまりま
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す。サンプリング・レートを測定
帯域幅に対して高くすれば、測定
Period Uncertainty As A
Function Of Sample Rate
の不確実性を減らすことができま
トを帯域幅の約 8∼10 倍に高める
と、効果は薄れてきます。さらに、
それ以上サンプリング・レートを
高めても、確実性はほとんど改善
しません。
Standard Deviation
Of P@lv (ps)
す。一般に、サンプリング・レー
40
35
30
25
20
15
10
5
0
LC684DXL Sigma of
P@lv (ps)
LC584AXL Sigma Of
P@lv (ps)
0
5
10
15
20
25
30
Sample Rate (GS/s)
図 2:サンプリング・レートを関数とした p@lv(period at level)パラメ
ータの標準偏差のプロット図