今号のトピックス - アジア経済研究所

今号のトピックス
【環境保護・汚染物質排出削減】
1. 環境保護部、2014 年の汚染物質総量削減目標を達成
2.2014 年浙江省の PM2.5 平均濃度 53μg/㎥、2013 年比 13.1%減
3.浙江省が 2015 年環境汚染対策を発表、水、大気、工業、重金属を重点に
4.上海市第 6 回環境保護 3 年行動計画、約 1,000 億元を投資
5.江蘇省大気汚染防止条例、3 月 1 日より施行
【エネルギー全般】
6.2016 年から全国統一の二酸化炭素排出取引を開始、法律策定が急務
【新エネルギー】
7.上海市、2014 年新エネルギー自動車普及台数 1 万台超で全国首位
(2015 年 2 月 12 配信)
【環境保護・汚染物質排出削減】
1.環境保護部、2014 年の汚染物質総量削減目標を達成(1 月 19 日)
1 月 15 日~16 日、北京市で 2015 年中国環境保護工作会議が開催された。会議において、
2014 年政府工作報告で定めた汚染物質総量の削減目標を全て達成したことが判明した。具
体的には、化学的酸素要求量、アンモニア窒素、二酸化硫黄、窒素酸化物の目標削減量は
2013 年比でそれぞれ 2%減、2%減、2%減、5%減としていたが、実際には、2.5%減、2.5%減、
2%減、6%減を実現した。更に、2015 年の削減目標は、2014 年比でそれぞれ 2%減、2%減、
3%減、5%減と定めた。
また、環境保護部の周生賢・部長は、次のように明かした。2015 年は大気、水及び土壌の
汚染防止対策に注力する。「大気汚染防止行動計画」(以下、「大気十条」と略称)を継続的
に実施する。また、関係部門と編纂した「水汚染防止行動計画」(以下、「水十条」と略称)は
国務院の会議の審査を経て公布する。更に、「土壌汚染防止行動計画」(以下、「土十条」と
略称)は基本的に編纂を終了し、時機を見て国務院に報告する予定である。
「大気十条」の徹底に関して、周部長は、大気質は住民の期待と大きな差があり、都市に
おける大気質は、そのほとんどが標準を超えた低質であり、当面、一部地域で重度汚染日が
多発すると指摘した。これらの状況に対応するため、2014 年、中央財政から処理資金 100 億
元を給付し、重点地域として定められた 10 省(区・市)の大気汚染防止を支援した。同時に、
ウルムチ市や蘭州市、銀川市に大気汚染の環境対策資金として 2 億 4,000 万元を給付。更に
蘭州市の大気汚染処理に 2 億元の奨励資金を給付した。
統計データでは、重点地区における 2014 年の PM2.5 平均濃度は、2013 年より削減された。
具体的には、下表を参照。
地域
2014 年の PM2.5 年間平均濃度
(μg/㎥)
2013 年比削減率(%)
北京市
85.9
-4.0
天津市
83.0
-13.5
河北省
95.0
-12.0
上海市
52.0
-16.1
江蘇省
66.0
-9.6
浙江省
53.0
-13.1
珠江デルタ(9 都市)
42.0
-10.6
2014 年、北京市の PM2.5 平均濃度は1㎥当たり 85.9μg で 2013 年比 4%減であったが、
2014 年年初に定めた 5%減の目標を達成することができなかった。長江デルタ地区において、
上海市の PM2.5 平均濃度は1㎥当たり 52μg で 2013 年比 16.1%減。江蘇省は 66μg で同
9.6%減。浙江省は 53μg で同 13.1%減であった。
周部長は次のように紹介した。現在、全国の地級市のうち 338 市以上にモニタリングスポッ
ト 1,436 カ所を設置し、1 年前倒して空気質のモニタリング設置作業を完成した。北京市・天津
市・河北省、長江デルタ、珠江デルタにおける空気質早期警戒プラットフォームもほぼ完成。
大気汚染処理については、2015 年は監督と検証を強化し、重点任務の日常的な検査を実施
し、各地の実施状況に対する年度検証を行う。地域間の協力を強化し、重点産業における基
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準の達成をめざす。また、石炭燃焼による小規模ボイラーの淘汰を強化。重点産業における
VOCs 処理、ガソリンの品質のグレードアップを継続的に実施する。更に、空気質指数(AQI)
の早期警戒システムを構築し、重度汚染日における応急予備案を完備する。2015 年末まで
に、全ての省都において PM2.5 の成分組成解析を行う。
環境保護部の資料によると、PM2.5 の成分組成解析に関して、北京市、天津市、石家庄市
の 3 市はすでに研究成果を公開している。また、上海市、寧波市、杭州市、南京市、広州市、
深セン市の 6 都市については、研究成果の専門家による論証が行われたという。
「水十条」に関して、周部長は、「水十条」の全面的な実施は、2015 年の業務の重要な内容
であり、次の 6 つの内容を包括していると説明した。
① 汚染物質の排出を全面的に抑制。製紙、捺染、化学工業など、十大重点産業に対す
る特別措置を執り、工業集積地の汚染を集中的に処理する。都市部における生活、農
村、船舶埠頭の汚染源に対して関連する削減措置を策定する。
② 経済構造のグレードアップを推進。旧式の生産能力の淘汰を加速する。水質目標を考
慮し、企業の環境参入基準を厳格化する。産業分布や産業構造、規模を合理化する。
工業用水の循環利用、再生水、海水の利用により循環型の発展を推進する。
③ 節水と水資源の保護に着手。最も厳格な水資源管理制度を実施し、地下水の過度な
採取と水の使用量を抑制する。節水を重視し、重要河川の流量の確保を行う。
④ 水の生態環境を保障。水源から蛇口までの全過程の監督管理メカニズムを構築する。
地下水の汚染防止処理を行い、飲用水の安全を確保する。重点流域の水汚染処理を
実施し、良質河川の源泉を保護する。長江、珠江、渤海湾、杭州湾などの河口におけ
る港湾付近の汚染を重点的に処理する。都市部の臭気のある汚水の処理に力を入れ、
直轄市や省都、計画的独立財政市は 2017 年までに臭気のある汚水を基本的に消滅
する。
⑤ 市場メカニズムを十分に発揮。水道料金の改革、汚水処理費や汚水排出費、水資源
費の徴収政策を加速する。税収政策を健全化し、多様な投資を促進する。トップランナ
ー制度を完備し、貸出や地域を跨る汚染補償制度など、環境汚染の処理に有効な奨
励メカニズムを実施する。
⑥ 各者の責任を明確化。地方政府は地元の環境品質に対する全責任を負い、水環境の
モニタリングネットワークを整備し、全国の水汚染防止事業の協力メカニズムを構築す
る。流域別、地域別、海域別に毎年実施状況を検証する。水質のベスト 10・ワースト 10
の都市及び各省(市・区)の水環境状況を定期的に公開する。
中国における水汚染物質の排出状況に関して、国務院発展研究センターの研究結果は次
の通り。主要流域は安定的に好調であるが、湖の水質が深刻であり、富栄養化の問題が目
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立っている。ダムの水質は安定的に好調であるが、地下水汚染は悪化の傾向にある。また、
沿岸海水の水質は基本的に安定している。水汚染対策の状況については、水の使用量と排
水の排出量は上昇傾向にあり、農業による汚染物質が急増し、汚染抑制の難易度が高まっ
ている。水汚染は単一汚染から複合汚染に転換。主要汚染物質以外の汚染物質の生成量
が継続的に上昇しており、汚染抑制の難易度が高まっている。
土壌汚染に関して、周部長は次のように指摘した。「土十条」の策定を継続的に推進する。
土壌環境はランク別に管理する。農産物の安全と健康の保障を出発点として、農用地と建築
用地を重点とする。「土壌汚染防止法」など、法律規定の策定を急ぎ、土壌の汚染状況につ
いて詳細調査を展開する。汚染現場における環境リスク管理に力を入れ、汚染現場のモデ
ル事業、汚染現場の修復事業を継続的に推進する。現段階では、環境保護部は「土壌汚染
防止法」の提案稿を全国人民代表大会環境資源委員会にすでに提出した。
出所:中国新聞網
2.2014 年浙江省の PM2.5 平均濃度 53μg/㎥、2013 年比 13.1%減(1月 21 日)
1 月 21 日、浙江省環境保護局は、2014 年にモニタリングを行った大気環境の PM2.5 と水
質の結果を発表した。
PM2.5 について、県レベル以上の 69 都市のうち、舟山市など 10 都市は PM2.5 平均値が
「環境空気質標準」(GB3095-2012)で定められている年平均濃度 2 級基準の 35μg/㎥を下
回り、都市全体数の 14.5%を占めた。11 都市※1 において、PM2.5 年平均濃度は 53μg/㎥で、
昨年より 8μg/㎥低下し、減少率は 13.1%であった。11 都市のうち、PM2.5 の年平均濃度が
最も高かったのは杭州市の 65μg/㎥で、最低は舟山市の 30μg/㎥であった。
河川の水質※2について、浙江省における 145 カ所の測定スポットのうち、水質Ⅰ~Ⅲ類は
98 カ所で全体の 67.5%を占めた。水質Ⅳ類は 21 カ所で全体の 14.5%を占めた。水質Ⅴ類は
12 カ所で全体の 8.3%を占めた。水質Ⅴ類より劣っている劣Ⅴ類は 14 カ所で全体の 9.7%を
占めた。また、水の使用用途に応じた要求を満たした測定スポットは 98 カ所でその達成率は
67.5%であった。11 都市※1 について、測定スポットの水質標準達成率が 100%だったのは紹
興市、衢州市、舟山市、麗水市で、嘉興市は最低の 14.3%であった。嘉興市では 28 カ所の
測定スポットのうち、Ⅲ類は 4 カ所で、全体の 14.3%を占めた。劣Ⅴ類は 7 カ所で、その割合
は全体の 25%を占めた。
※1「11 都市」は杭州市、寧波市、温州市、嘉興市、湖州市、紹興市、金華市、衢州市、舟山市、台州
市、麗水市を指す。
※2 水質は、汚染が軽い順にⅠからⅤ類に分かれる。
出所:浙江省環境保護庁
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3.浙江省が 2015 年環境汚染対策を発表、水、大気、工業、重金属を重点に(2 月 3
日)
1 月 28 日、浙江省環境保護庁は、2015 年度の水、大気、工業、重金属に関する汚染防止
対策について要点を発表した。
水汚染の防止対策について、具体的に以下の対策を講じる。
(1)2015 年汚水処理工作計画の策定、実施を行い、水処理の重点プロジェクトを実施する。
地表水の水質が、ⅠからⅢ類の全体に占める割合を 65%以上とし、Ⅴ類より劣っている水質
(劣Ⅴ類)の全体に占める割合を 2014 年比1ポイント削減する。
(2)銭塘江の水処理をモデルとし、省内の瓯江、曹娥江などの 6 大重点流域の水環境処
理を進める。
(3)飲用水の水源環境保護計画を策定実施し、水道へ供給する飲用水水源地のモデルづ
くりを完成する。
(4)杭州湾や楽清湾、象山湾、三門湾、台州湾の汚染処理を行い、海域の水質の安定化
を保持する。
(5)「1 湖 1 政策」の生態環境保護作業を推進し、太湖や千島湖などの重点湖とダムの生
態環境保護を強化する。
(6)危険廃棄物処理場、ゴルフ場、廃鉱、再生水の農業用灌漑地における地下水の環境
アセスメントを展開する。
大気汚染の防止については、具体的に次の対策を講じる。
(1)2015 年の大気汚染実施計画を策定する。区を置く 11 市の PM2.5 の年平均濃度を 2013
年比で 7%削減する。
(2)工業の排ガス処理を推進する。石油化学産業における揮発性有機化合物の汚染処理
を加速し、LDAR(漏洩検出・修理)システムを普及する。同省における揮発性有機化合物の
調査評価を完成する。電力や鉄鋼、セメント、板ガラス産業の大気汚染処理を完成する。脱
硫脱硝事業と大規模な火力発電ユニットに対するクリーン改修の実施を加速する。
(3)自動車の排ガスについて、黄標車(汚染物質高排出車)を淘汰し、ガソリン品質のグレ
ードアップを推進し、2015 年末までに国Ⅴ基準のガソリン・軽油の供給をめざす。
(4)石炭ボイラーの淘汰を急ぎ、汚染物質を多く排出する燃料の燃焼禁止区域を設け、県
以上の都市は、天然ガスのパイプラインの敷設を実現し、都市建設区域における大気汚染
企業の閉鎖・移転の完成などを行い大気汚染の処理を進める。
工業汚染の防止対策については、高エネルギー消費・高汚染産業に対するグレードアップ
を実施する。製革、捺染、化学工業園区の建設を実施し、関連企業をこれらの産業園区に移
転させる。鉛蓄電池、電気メッキ、製革、捺染、製紙、化学工業の 6 大産業に対する処理対応
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の情報を公開し、6 大産業の汚染防止と環境管理ガイドラインの策定を研究する。第 13 次 5
カ年規画(2016~2020 年)における工業汚染防止計画を策定する。特定産業の処理対応を
展開し、企業の分類管理、定期的評価、閉鎖・撤退など、効果的な汚染防止対策を作成する。
また、300 社の企業に対するクリーン生産の審査を完成する。
重金属汚染の防止対策については、重点産業と重点地域の重金属汚染物質の排出量を
大幅に削減し、18 カ所の重点防止抑制区域における重金属汚染の対策を完成する。また、
年度計画を作成し、2015 年末までに、重点地域における重金属汚染物質の排出量を 2007
年比で 15%以上削減。水銀関連の産業に対する対応を重点的に実施し、全ての電気光源企
業の検査を完成する。
出所:浙江省環境保護庁
4.上海市第 6 回環境保護 3 年行動計画、約 1,000 億元を投資(2 月 5 日)
2 月 4 日、上海市政府が開催した記者会見において、上海市環境保護局の張全・局長は、
2014 年、上海市では化学的酸素要素量、アンモニア態窒素、二酸化硫黄、窒素酸化物の排
出量に関して、2011 年比でそれぞれ 9.7%減、11.5%減、21.2%減、23.6%減を実現し、1 年前
倒しで「第 12 次 5 カ年規画」を完成したと発表した。
2014 年の空気質指数(AQI)について、上海市では、優・良の日数の割合は全体の 77%で、
2013 年と比べて 11%増加した。重度汚染と厳重汚染の日数は 2013 年比でそれぞれ 17 日、
2 日減少した。2014 年通年の PM2.5 の濃度は1㎥当たり 52μg で、同 16.1%減であった。
上海市は 2012 年~2014 年に第 5 回環境保護 3 年行動計画を実施した結果、同市の都市
部における汚水処理率は 88%以上に達し、2011 年より約 5 ポイント引き上げられた。また、
生活ごみの無害化処理率は 95%に達した。更に、3,000 台以上の石炭ボイラーをクリーンエ
ネルギーに転換し、石炭消費量はマイナス成長を実現。産業構造調整プロジェクトを 2,100 件
完成し、1,000 社の企業に対してクリーン生産の審査を実施した。
2015 年から開始する第 6 回環境保護 3 年行動計画は現在、意見を募集中。計画では約
1,000 億元を投じ、第 5 回計画より約 35%増額される予定であり、水、大気、土壌、固体廃棄
物、工業、農村農業、生態、循環経済の 8 分野にわたる 220 件のプロジェクトに投入する見通
しである。具体的には、白龍港汚水処理場など、17 基の汚水処理場を改修し、泰和、南翔、
虹橋に汚水処理場 3 基を建設する。また、規則を満たしていない中小規模の養殖場 2,700 社
に対する調整、閉鎖を実施。鎮・村の汚染物質を排出している小規模企業群の閉鎖、取り壊
しを実施し、その目標面積は約 20km2 とする。更に、都市化した地区においては、大型、中型
の飲食サービスを提供する場所の全てに油煙の除去浄化装置の設置を推進。環境汚染の
第 3 者処理モデルを推進する。
出所:上海環境
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5.江蘇省大気汚染防止条例、3 月 1 日より施行(2 月 3 日)
「江蘇省大気汚染防止条例」が 2 月 1 日、江蘇省人民代表大会で可決され、3 月 1 日より
施行されることになった。
同条例は、エネルギー消費源、工業源、自動車・船舶及び非道路移動機械などの移動源、
粉じん、その他の汚染源について、それぞれ大気汚染防止措置を規定している。
そのうち、工業源の汚染防止措置に関しては、次のような措置が盛り込まれた。
・同省人民政府は高汚染の新規・拡張工業プロジェクトリスト、高汚染工業産業調整リスト、
高汚染生産ライン設備の淘汰リストなどに関して定期的に制定、修正を行い、社会に公開す
る。
・工業園区などの工業集中区では、大気汚染物質のモニタリング測定システムを設置し、環
境保護部門がオンライン測定を行う。
・揮発性有機化合物を排出する生産経営活動は、密閉化したスペース・設備の環境の中で
実施し、排ガスの収集処理システムを設置し、日常的に使用する。造船など密閉できず屋外
での生産活動を行う場合は、揮発性有機化合物の排出削減に有効な措置を取る。石油、化
学工業、有機溶剤の生産・使用企業は、漏洩検測/修複(LDAR)制度を確立し、パイプライン
や設備に対して日常的なメンテナンスを行う。江蘇省環境保護部門では重点的に抑制する揮
発性有機化合物のリストを公布する。
・悪臭排ガスを排出する化学工業、石油化学、製薬、製革、接着剤の精錬、バイオ発酵、飼
料加工などの企業は、先進的な技術や生産ライン、設備に更新を行い、悪臭排ガスを削減す
るとともに、期限内に見直しを行わなかった企業に対しては、生産の制限、停止、閉鎖を実施
する。
江蘇省では、自動車と二輪車の保有台数を全体的に抑制する措置を執る方針で、抑制措
置の実施前に意見徴収を行い、人民代表大会常務委員会の審議を経て、措置の実施日より
30 日前に公開すると定めている。
法律責任について、企業が汚染物質排出許可証を取得せず大気汚染物質を排出している
場合又は排出基準、排出総量を超えた大気汚染物質を排出している場合は、汚染物質排出
行為の停止又は生産の制限・停止を行い、最高 100 万元の罰金を科す。改善しない場合は、
企業責任者の拘留実施など、改正前より厳しい処置を執る。
出所:江蘇省環境保護庁
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【エネルギー全般】
6.2016 年から全国統一の二酸化炭素排出取引を開始、法律策定が急務(2 月 9 日)
このほど、中国二酸化炭素排出取引サミットが開催された。サミットにおいて、国家発展改
革委員会気候司国内政策・約定履行処の蒋兆理・処長は次のように述べた。中国は 2016 年
から全国レベルの二酸化炭素取引市場を開始する。全国統一市場は、初期において、「5+1」
産業(電力、冶金、非鉄、建材、化学工業及び航空サービス業)の二酸化炭素排出量が年間
2 万 6,000 トン以上の企業を対象として取引を実施する。取引量は 30~40 億トンに上る見通
しである。
対象産業に航空サービス業が盛り込まれていることに関して、中央財政大学気候エネル
ギー金融研究センターの陳波・主任助理は、次のように語った。航空業は二酸化炭素の排出
量が多く、国際的な問題となっており、国内でもプレッシャーを受けている。国際民間航空機
関(ICAO)は航空業の二酸化炭素排出削減の取り組みを開始し、2020 年以降、同業界でカ
ーボンニュートラルを実現する目標を掲げている。
将来的に、二酸化炭素の取引サービス機関は中国国内で 7~10 カ所が必要である。また、
二酸化炭素排出取引市場の確立は 3 段階に分けて推進する。
①2014 年から 2015 年は準備段階とし、国務院法制弁法室とのすり合わせにより行政法規を
早急に公布する。また、主管部門の関連付則や技術標準、温室効果ガスの計算方法に係る
標準などを策定し公布する。
②2016 年から 2020 年は運営段階とし、うち、2016 年から 2017 年までは試行運営を行う。主
に公布した政策法規に則って、31 省(区・市)及び新疆生産建設兵団を全国規模での二酸化
炭素取引排出枠に導入し、割当量の割り振りを実施する。また、2017 年から 2020 年は、全国
的に二酸化炭素の排出取引システムを実施し、取引制度の調整と整備を行う。
③2020 年以降は安定段階とし、主に取引項目を増やし、多様な取引モデルを実施する。また、
そのほかの国際的な二酸化炭素取引市場との連結を模索する。
2011 年 11 月から、中国では北京市、天津市、上海市、重慶市、広東省、湖北省、深セン市
の 7 省・市において二酸化炭素排出権取引の試行を相次いで開始した。2014 年 6 月時点で、
参加企業は合計 1,919 社、割当量は約 12 億トンある。石油化学工業市場のコンサルティング
を手掛ける安迅思(ICIS)の統計によると、各地で二酸化炭素の排出権取引の試行が始まっ
てから 2014 年末時点で、二酸化炭素の取引総量は 1,514.5 万トンに達し、そのうち湖北省は
最多の 670 万トンに達した。
全国統一の取引市場の開始まで、わずか 1 年ほどの間に、二酸化炭素排出取引に係る法
律策定、排出量の割当、排出量の計算方法、企業登録システムの完備などの準備作業を済
ませる必要があり、多くの問題を解決しなければならない。
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深セン二酸化炭素排出権交易所の関係責任者によれば、取引において企業側の二酸化
炭素排出権取引に対する認知度が低く、準備段階及び取引の履行において消極的であると
いう。この問題に対応するため、同責任者は、具体的に以下の 3 点を実施する必要があると
判断している。
①全国統一市場を確立するためには、まず二酸化炭素市場の制度設計や法律策定を行うこ
と。
②二酸化炭素の排出量に係るデータ収集を重視し、企業向けの研修やデータの簡素化を強
化すること。
③取引製品の種類を豊富なものとし、炭素金融(カーボン・ファイナンス)で市場取引の発展
を模索すること。
出所:新華網
【新エネルギー】
7.上海市、2014 年新エネルギー自動車普及台数 1 万台超で全国首位(1 月 26 日)
上海市経済信息化委員会によれば、上海市は 2014 年、公共バス、行政、物流、環境衛生、
レンタカー、個人向けに 10,886 台の新エネルギー自動車を普及し、前年比 18.7 倍増に達した
という。うち、プラグイン式ハイブリッド車は 8,481 台、電気自動車 2,405 台であった。現時点で、
上海市の新エネルギー自動車の販売台数は全国で首位となった。
現在、上海市では約 20 社が 40 種類以上の新エネルギー自動車を販売している。2015 年
1 月までに、新エネルギー自動車の販売台数は 11,464 台に達した。
販売台数では全国首位となったが、上海市の新エネルギー自動車市場は多くの問題を抱
えている。上海国際汽車城の関係者は次のように述べた。航続距離に対して心配するユー
ザーは少なくない。現在、電気自動車の航続距離は 120~200km であるが、今後 150~
200km を達成できれば、受け入れられやすい。
電気自動車の販売台数を増加させるとともに、充電施設の増設も求められる。これに関し
て、上海市新エネルギー自動車推進弁公室の劉建華・処長は、次のように述べた。現在、電
気自動車に対する認識の高まりに伴い、充電スポットの提供に協力する住宅団地の管理業
者も現れている。しかし、住宅団地によっては駐車スペースが限られているため、充電設備
の設置が難しく、また、住宅団地の管理業者は、自動車の性能、充電パイルの設置に対する
理解が不足しており、また、安全や管理面での懸念を有していることから、充電パイルの設
置に対して積極的でない。
上海市発展改革委員会と上海市交通委員会では、北京市や深セン市などの経験を踏まえ
て、住宅団地の管理業者に充電施設の設置受け入れを求める関連政策を策定する動きもあ
9
る。
出所:上海市経済信息化委員会
ジェトロ上海ニューズレター
エネルギー・環境レポート(2015 年 2 月号)
中国上海市延安西路 2201 号上海国際貿易中心 21 階
TEL:021-6270-0489(EX.1306、1300)
作成者 ジェトロ(日本貿易振興機構)上海事務所 経済信息部 張培葉、鈴木貴詞
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