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第17回日本医療マネジメント学会学術総会
ランチョンセミナー14
座長: 公益財団法人田附興風会医学研究所 北野病院
薬剤部部長 尾上 雅英 先生
演題1
『ワルファリンの導入ノモグラム』
虎の門病院 薬剤部 病棟薬剤科長
五十嵐 正博 先生
演題2
『 抗血栓療法における
上部消化管粘膜傷害マネジメント』
大阪医科大学附属病院 消化器内視鏡センター長・講師
竹内 利寿 先生
【日時】 平成27年6月13日(土)
12:00~13:00
【場所】 12F D会場 会議室1202
共催:第17回日本医療マネジメント学会学術総会
エーザイ株式会社
演題1 『ワルファリンの導入ノモグラム』
虎の門病院 薬剤部 病棟薬剤科長
五十嵐 正博 先生
ワルファリン(WF)の通常維持量は1から9mg/日と患者ごとの投与量に9倍以上の差
があるため、維持投与量を安全かつ迅速に決定することが難しく、WF導入時の投与
量の決定は個々の医師の経験に基づいて行われていた。しかし、病棟における全医
師が、WF導入の豊富な経験を有するとは限らないため、循環器専門医がその貴重な
時間をWF導入のためだけに割く必要が生じることがある。このため、日本人用ノモグ
ラムを作成し日常診療の参考にすれば、循環器専門医の負担の軽減と医療の安全
向上の両方に有益であると考えられた。そこで、我々は、過去の臨床経験とHarrison
のノモグラムの両方を参考に、INR に基づき具体的に投与量を指示する独自のノモ
グラムを開発した。本ノモグラムは、初日から毎日5mgを投与して INR がある程度上
昇した時に減量するが、INRが上昇しない時の増量は投与5日目以降とするもので、
INRの変化の度合いで投与量の目安を提案するものである。病棟薬剤師は、1)服薬
指導で患者教育を行い、2)持参薬や薬歴の確認で薬物相互作用によるWFの副作用
を防止し、3)導入ノモグラムを作成することで、WFの適正投与量の実現に貢献してい
る。今回、ワルファリンノモグラムの作成過程を紹介したい。
講演2 『 抗血栓療法における上部消化管粘膜傷害マネジメント』
大阪医科大学附属病院 消化器内視鏡センター長・講師
竹内 利寿 先生
近年、高齢化社会を背景に、心疾患など抗血栓療法として低用量アスピリン(LDA)を
はじめとする抗血栓薬内服者は増加の一途である。一方、LDAの長期投与は消化性
潰瘍および出血を含む消化管合併症の発症率を上昇させることが報告されている。
これまで経験的にジクロフェナックなどの通常のNSAIDsを投与する場合、その胃粘膜
傷害の予防として胃酸分泌抑制薬や胃粘膜保護薬を同時に処方される場合が多い。
しかし、NSAIDsの一種であるLDAによる消化管粘膜傷害の予防という概念は十分に
普及していないと思われる。実際LDAによる消化管粘膜傷害の発生率はどれぐらい
であり、どのようなリスクを有する場合に多いのか?LDAによる潰瘍出血はどのよう
な特徴があるのか?また、本邦の消化性潰瘍診療ガイドラインでのLDAなどの薬物
性潰瘍の治療指針は、薬剤の中止が示されているが、LDAを中止することによる血
栓塞栓症は生命に重篤な状態となりうることを考慮すると、現実的な対応ではないと
考えられる。そのため、LDAの消化管粘膜傷害予防として胃酸分泌抑制薬や胃粘膜
保護薬が必要となるが、そのエビデンスはどの程度あるのか?胃粘膜保護薬で十分
なのか?H2受容体拮抗薬やプロトンポンプ阻害薬は本当に必要なのか?また、予防
投与で長期に胃酸分泌抑制を行うことに弊害はあるのか?これらの疑問点を概説し、
抗血栓療法における消化管粘膜傷害の実臨床での現況と対応を、内視鏡画像ととも
に最新のエビデンスを含めて論じたい。