技術情報 創薬研究・医薬品開発支援システム SYMMETRY:がん領域における 予測モデルの選択と構築 Prous Institute SYMMETRYは、作用機序、安全性、ADME、適応症、経路解析、ケモゲノミクスを予測する 多数のモデルを搭載し、探索段階から開発研究、承認までのプロセスの各段階において意思決定を支援し ます。Prous Institute社では、モデルの検証例や新たに追加された予測モデル、SYMMETRYによる解析例 を掲載したレポート(SYMMETRY Report)を定期的に発行しています。ここでは2013年のレポートから、米 国がん研究協会年次総会(AACR 2013)の情報に基づくがん領域の予測モデルの選択と構築について紹介 します。 ■ 学術会議からの情報収集 PI3K/AKT/mTOR経路とRAS/RAF/MEK/ERK経路およ SYMMETRYの予測モデルは、文献、特許、学術会議な び表1の標的タンパク質に加えて、AACR 2013では多く どから収集された生物医学データを解析することにより の作用機序が引用されました(表2)。その中には新規の 構築されています。ここでは、学術会議の情報からどの 標的タンパク質も含まれます。 ようにSYMMETRYの予測モデルを選択し構築するのか 表2 その他の作用機序と標的タンパク質(一部掲載) を説明します。 ACK1 阻害剤 炭酸脱水酵素 DDR1 阻害剤 がんは病気に関連した第2位の死亡原因であり、新し ERRβ 調節薬 HIF-1 阻害剤 IKB 阻害剤 い治療薬が積極的に開発されています。米国がん研究協 JNK 阻害剤 KCNJ2 阻害剤 LPAAT-β 阻害剤 MAPK 阻害剤 PDK1 阻害剤 RET 阻害剤 SYK 阻害剤 Tak1 阻害剤* Wee1 阻害剤 会(AACR)の年次総会で報告された知見を分析して得ら れたがん治療分野の最新知識から、がん研究の潮流を 明確にし、最も適切なモデルを構築することが可能です。 * Tak1は新規の標的タンパク質 AACR 2013では、6,000以上の抄録が提出され、基礎科学、 SYMMETRY Reportでは、AACR 2013で発表された化 橋渡し研究、臨床試験およびポピュレーションサイエンス 合物を作用機序と標的タンパク質でグループ化していま の最新の研究について約600の講演がありました。 す。表3にPI3K/AKT/mTOR経路に分類された化合物を示 Prous Institute社では、AACR 2013から176の化合物を します。 作用機序と共に収集しました。合計で少なくとも79の標 的タンパク質が提示されました。最もよく研究されていた のはPI3K(Phosphoinositide 3-kinase)でした。次いで、 mTOR(mammalian target of rapamycin)でした。 PI3K Inhibitors AZD8186 BAY80-6946 BKM120(buparlisib) BYL719 CAL101 CLR1502 Dactolisib(BEZ235)GDC-0032 GDC-0068 ■ 標的タンパク質と作用機序の解析 GDC-0941 GS-1101 GSK1059615 HS173 PF-4989216 PWT-458 トのがんにおいて最も頻繁に調節異常を引起すキナー Quinacrine SAR245408(XL147)SAR245409 SAR260301 X370 PI3K/AKT/mTOR経路とRAS/RAF/MEK/ERK経路は、ヒ ゼ・カスケードです。AACR 2013のレポートを解析したと ころ、PI3K/AKT/mTOR経路に関連して活性をもつ化合物 の引用は約165件、RAS/RAF/MEK/ERK経路に関連する化 合物の引用は約60件でした。また、両経路に関連する過 去20年間の特許情報を調べたところ、PI3K/AKT/mTOR AKT Inhibitors AZD5363 BAY10001931 BAY1125976 CCT129254 GDC-0068 GSK690693 MK-2206 Perifosine Triciribine mTOR Inhibitors 経路については2005~2012年までの7年間で特許数が AZD8055 Baicalein Dihydroartemisinin 大幅に増加しましたが、RAS/RAF/MEK/ERK経路は殆ど Everolimus Kawain KU63794 変化がありませんでした。 mCC-223 MLN0128 PP242 Rapamycin Temsirolimus Torin 2 PI3K/AKT/mTOR経路とRAS/RAF/MEK/ERK経路以外で 引用回数が多かった標的タンパク質を表1にまとめました。 表1 引用の多かった標的タンパク質(括弧内は引用数) HDAC(8) EGFR(14) PARP(9) HER(9) BTK(8) ALK(8) c-MET(7) Src kinase(6) PIM kinase(6)VEGF(5) Mcl(5) FLT(4) FAK(4) Exportin 1(3) IGF1R(3) HSP90(3) CRM1 (3) CDK (3) ABL(3) 10 表3 作用機序とターゲットで分類した化合物 BCL(3) Aromastase(3) AACR 2013で発表された情報は、がん治療領域にお ける重要な標的タンパク質を選択するために非常に有 用です。SYMMETRYには、その情報を最大限に利用した 予測モデルが搭載されています。また、AACR以外にも 重要な学術会議における情報を整理し、最新の予測モ デルを提供しています。
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