2014/06/27 表11-1.主な豆類のエネルギーと栄養素含有量(100 gあたりの数値) 第11章 豆 類 このように栄養価に富む豆類はなぜ主食にならなかったのか 麦の栽培とセットになった豆 エンドウ(豌豆) ヒヨコマメ ソラマメ レンズマメ 豆は穀物と常にセットとなって栽培された ツタンカーメンの墓のエンドウは 怪しいが、存在したことは確実 冷涼・乾燥気候を好む 煮込み料理などに利用 中国5世紀、日本9〜10 世紀に伝来 エンドウ(豌豆):栽培開始紀元前6〜8千年、メソポタミア遺跡出土 紀元前数千年前栽培開始 原産地:トルコ南東部 ヒヨコマメ(chick bean) ファラフェル 1 2014/06/27 ファラフェル 豆板醤 ソラマメ 西アジア原産 紀元前4千年頃栽培開始 世界各地で食用 レンズマメ(ヒラマメ) 小麦と同時期に栽培開始 煮込み料理に適す 旧約聖書創世記にも登場 レンズの語源 アジア 米栽培とセットになった豆 大豆 小豆 リョクトウ 大豆 東アジアの食生活の必需品 中国東北部原産、4千年前栽培開始 醤とは塩を加えた保存食 薄口醤油 濃口醤油 小麦/大豆=1 大豆を原料とした 豆醤から味噌や醤油 が誕生した (味噌製造のときに 底に溜っていたのが 溜り醤油の始まり) 小麦>大豆 塩は薄口>濃口 薄口は仕込み時に酒も用いる 金山寺味噌 白醤油 溜まり醤油 現在の醤油は大豆と小麦からつくる 大豆>小麦 2 2014/06/27 緑豆春雨 緑豆糕(リョクトウコウ) 小豆(インド原産、東アジアでのみ栽培) 砂糖との相性が抜群 渋味が強いので洋風料理には不向き 豆汁(トウジュウ) リョクトウ(緑豆) 加工したものを利用することが多い 緑豆モヤシ トウモロコシ栽培とセット 中南米原産 インゲン ラッカセイ インゲン(隠元豆) 多彩な品種→多様な用途 インゲンは万能選手 白あん 金時豆 ラッカセイ(ピーナッツ) 南米原産 インゲンの洋風煮込み サヤインゲンの料理 脂肪含量が50%を超え る変な豆 インゲンの用途は無限(塩味、砂糖味、いずれも可、未熟さやは野菜として利用 可、かつ生育も早い。17世紀にヨーロッパ、アジアに伝来したが急速に拡大 3 2014/06/27 豆と呼ぶが豆でないもの コーヒー豆やカカオ豆は マメ科ではない樹木の実であり 一種のナッツ類である カカオの実 カカオ豆 ラッカセイ(落花生)の名前が 示すとおり、土の中で実る 掘ってみると 豆と穀物を同時栽培する利点 大気 根粒菌(マメ科植物と共生、空気中窒素をアンモニアとして固定) 窒素 炭酸ガス 光合成 土壌 光合成産物 アンモニア レンゲについた根粒菌 根粒菌 マメ科植物が生育した土壌は 根粒菌が存在するため窒素分が豊富 *タンパク質は20種類のアミノ酸がつながって出来ている 摂取タンパク質は、消化 酵素によってアミノ酸単位 に分解され、吸収後に、ヒ トの体タンパク質に組み 立てられる ヒトが要求するアミノ酸バランス に合致 ヒトが要求するアミノ酸バランス に合致しない ヒトの体タンパク質(大部分は筋肉)に似ている(=アミノ酸組成が 似ている)タンパク質はヒトの体タンパク質をつくるのに都合がいい →動物性タンパク質は植物性タンパク質よりも栄養価が高い 摂取タンパク質のアミノ酸バランスはとても重要 4 2014/06/27 穀物 + 豆類 ≒ 肉 一方、豆のタンパク質の多くは、 メチオニン+システインが不足し、 リジンとスレオニンが余っている 小麦タンパク質のアミノ酸の桶 とくにリジンとスレオニンが不足 (=穀物タンパク質に共通) 穀物と豆を組み合わせると互いの タンパク質の欠点が補われ、結果 として栄養価の高いタンパク質を摂 取したのと同じことになる (アミノ酸の捕足効果) 穀物と豆を同時に摂取するのは栄養面で理にかなっている 豆が主食にならなかった理由(1) 加熱していない豆はきわめて消化が悪い 豆が主食にならなかった理由(2) 生で摂食 加熱大豆 豆にはトリプシンインヒビター (タンパク質分解酵素阻害物 質)が含まれている (インヒビターは加熱で壊れる) 豆にはヘマグルチニン(レクチン)が含まれ、これが消化管粘膜毛細血管 の血球を凝集し、最悪の場合は出血を引き起こす(ヘマグルチニンも加熱 で壊れる) 不十分な加熱調理によって、トリプシンインヒビターやヘマグ ルチニンの有害作用の影響を受けた人が少なからず発生 →主食として採用することに躊躇(すでに穀物が存在) 生大豆 非加熱の大豆ではネズミは発育できない 豆が主食にならなかった理由(3) 豆が主食になれなかったのは ソラマメ中毒 1.単位当たり収量が穀物に劣る ソラマメ中成分 赤血球に作用 2.様々な有害成分が含まれており、調理法を誤ると 中毒を起こしたから 赤血球が壊れ(溶血) 貧血となる 生の豆を使う料理はまず存在しない 特異体質のヒトは重症化し死に至ることがある (日本では例なし、中東や地中海地方では高頻度) テンプル騎士団はソラマメ食を禁じていた ピタゴラスはソラマメに対する特異体質であったかも 5
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