基本構想■第3章 まちづくりの視点 只見町は、今まで地域の人たちが様々な試練や困難があっても、その時々で知恵を出し 合い、合意形成の過程を経て、地域づくりに取り組んできました。その歴史が、現代に生 きる私たちにつながっています。 高度成長時代を迎えた昭和40年代以降、物質的に豊かな生活を求めて、父母や祖父母は、 現金収入を得ようと懸命に働いてきました。 その結果、子どもへの高等教育や電化製品、自動車など一定の欲望や利便性は獲得する ことができました。これからもこのような生活が続くものと思っていました。 しかし、国の借金が膨大になり、その解消策として税源移譲の伴わない三位一体改革が 進み、合わせて「民間にできることは民間に」の合言葉のもと行政の分野にも市場主義の 思想が取り込まれようとしています。 わたしたちの側にも反省すべきことはあります。地域で生きていくために必要なものと、 都市と同じものを享受しようとする欲望を、一緒に考えていたのではないかということで す。 山村地域の良さと都市の良さを改めて考えないで、都市は良いもの、山村地域はやむを 得ないものと思ってはいなかったでしょうか。 都市に住みたい人や都市に住みたい時期は都市に暮らし、山村地域に住みたい人や山村 地域に住みたい時期は山村地域に暮らすということでいいと思います。 しかし、都市で暮らすことと山村で暮らすことは大きく違います。 「市場原理(採算性 重視)」で成り立つのが都市で、山村地域は市場原理だけでなくお金に代え難い「人との 結びつき」で成り立つ地域です。 本人や家族・親戚でできること、隣組や集落でできること、地区でできること、町、県、 国それぞれの段階で行うものがあるはずです。昔は家族や集落で行っていたものを、現在 は町が行ったりしています。(介護、道路維持補修など) 12 その時代時代でそれぞれの役割分担は変化してきます。行政がやるのがいいのか、地区・ 集落でやるのがいいのか、誰がやればいいのか、お互いの役割分担を明確にする時代です。 それには、その時代に住民が本当に必要としているものをきっちり認識することが、何 より大切だと思います。それは日頃から、家庭や集落、町を観察することによって、自ず と見えてくるものと思います。それが生活観です。 今の商売は、 「安くてよい物」でも売れない時代です。消費者は高くてもストーリー性(い われ)のあるものを買う傾向にあります。「もの」(素材そのもの)ではなく、「こと」(素 材に係わる事柄)を買っています。「今だけ」、 「ここだけ」、 「これだけ」という「旬」、 「地 域限定」、 「数量限定」というようなものです。本当に必要なものは当然ですが、買ってい るつもりで買わされている物が多くはないでしょうか。 与えられる情報ばかりで判断し、いろんな関わりも含めて考えることが苦手になり、先 人が持っていた 「進取の気概」、 「知恵」が乏しく、小さくまとまる癖がついてはいない でしょうか。反対の言い方をすれば、いかに精神的に満たされることを求めている人が多 いかということになると思います。もう一度足元を見つめ直し、今どこに立っているのか 確認する必要があります。 高度情報化社会の到来は、相互の意思疎通が今まで以上に大切になるということです。 情報収集までが行動を起こす前段で、その情報から根拠のある判断をすることが非常に大 切になります。それは判断に至る意欲的に学ぶ姿勢と、率直な意見交換から育ち、それを 体験・体感する人が増えることが結果的に町の社会資本の充実につながるはずです。只見 町の豊かな大自然と合わせ、人材は町の資本・資源となります。その延長線上に、産業の 振興、雇用など町の未来が見えてくるものと確信します。 最後に、このようなまちの姿を何よりも温かく、時には厳しく包み込んでくれるのが只 見の大自然です。しかしここ数十年、生活基盤整備や産業振興のために自然を傷つけてき たことも事実です。今後のまちづくりが環境破壊に結びつかないように、より良い環境づ くりの視点が全ての指針の根底を成していることを明記したいと思います。 1.地域づくりは人づくりにあり、地域を愛する人づくりの推進 2.都市的価値観を追い求めず、山村の価値観を求める 3.先人から受け継いだ助け合い、相互扶助意識の継承 4.家族・集落・地区・行政の役割の明確化 5.ニーズに合った行政サービスと行政の効率化 6.自ら進んで物事に取組む意欲的な姿勢 7.情報に惑わされない分析・判断能力の向上 8.率直な意見交換と合意形成 13
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