氏名 所属 役職 項目 テーマ 瀬戸内海周辺海域を対象とした巨大高潮

研究者
氏名
内山 雄介
所属
神戸大学大学院工学研究科市民工学専攻
役職
准教授
項目
指定 ②港湾、海岸及び空港における大規模災害発生後の対応に関する研究
テーマ
瀬戸内海周辺海域を対象とした巨大高潮・高波災害評価技術の開発
近年、地球温暖化の進展などの影響によって台風や暴浪災害が激甚化・頻発化している。人口と資産
が集積した瀬戸内海沿岸域には、大阪・神戸・広島・高松などのスーパー中枢港湾・特定港や、臨海工
業地帯が広範に存在しており、大型化する台風等に伴う高潮や高波による災害が危惧される。
研究内容の 本研究では、津波に比べると立ち遅れている本海域における高潮・高波災害の再解析・予測技術の確
重要性
立を目指し、多段ネスティングによる高解像度領域海洋モデルをべ一スに、気象庁海上風・波浪推算な
どを統合した新しい高潮・高波解析システムの開発を行う。
本研究開発の成果は、瀬戸内海周辺海域に位置する各港湾区域等における高潮・高波被害の詳細
な分析や、長期的には予報・予測システムの確立へと直接寄与するものである。
研究内容
2013年のレイテ島高潮災害ではレイテ湾の広域地形との共振、2001年の長崎高潮災害(あびき)では
低気圧擾乱と高潮長波とのプラウドマン共鳴によって高潮偏差が数倍に増幅され、被害が拡大した。
従来の高潮モデルでは、気象外力や地形の表現が不十分であるため、高潮被害の甚大化に最も寄与
する共振・共鳴現象が十分な精度で評価できず、その結果、高潮偏差が大幅に過小評価されるケース
が多かった。
研究計画・
共振・共鳴機構を精緻に考慮するためには、台風経路を長時間追跡するために解析領域を十分大きく
方法の妥当
設定する必要がある一方で、小スケールの気象・地形情報を取り扱う必要があり、大型計算機を用いた
性
超高解像度数値モデリングが求められる。また、台風接近に伴って発達する波浪は沿岸域で平均海面
を上昇させ、高潮偏差をさらに増幅させる。そのため、台風下の強風に伴って発達する高波の評価だけ
ではく、高潮偏差の高精度化に対しても波浪の同時評価が必要である。
本研究では、波一流れ相互作用解析システムに対して新たに吸い上げの効果を導入することにより、
大気一波浪一海洋を結合した超高解像度高潮解析システムを開発するものである。
高潮・高波の同時解析を行う際に必須となる波浪の影響を考慮した3次元海洋流動モデリング技術
(ROMS-WEC)においては、最先端の技術レベルにある。また、多段ネスティングによるダウンスケール
研究内容の
海洋モデリング技術においても申請者のグループは我が国で最も精力的に実施しているという点で類を
独創性
見ない。これらの要素技術の統合と、気圧偏差モジュールの組み込みにより、高潮・高波解析システム
が構築されるという点で極めてユニークである。
将来的には、瀬戸内海全域に対する高潮・高波予報システムへの展開をイメージしている。境界条件・
初期条件を与えるJCOPE2システム、海面フラックスを与える気象庁GPV-MSMでは、現時点において最
研究内容の 長で72時間後までの予報値を提供している。
波及効果 本システムの効率的な運用が可能となれば、これらの外部データを用いた高潮・高波の72時間先まで
の予報が原理的に可能である。より正確な予報を行うためには、高精度に再解析(過去の再現)を実施
できるシステムの構築が必要となるが、本研究はそれを意図した研究開発である。