江藤隆美先生を悼む 社団法人 全国和牛登録協会 会長理事 福 原 利 一 ベトナム国ホーチミン市という異国の地で江藤 した先見性があることを忘れることはできない。 隆美先生が急逝されたというニュースに接し、万 いずれにしても今回の宮崎県の総合優勝は単に 感の想いで胸が押しつぶされて涙がとまらなかっ 共進会での日本一ということではなくて、和牛子 た。江藤先生には、小生が宮崎大学農学部長時代 牛生産地に永年甘んじていた宮崎県が、肉牛の部 の4年間は農学部同窓会長として、引き続き務め の好成績により、肉牛生産でも全国をリードする た(社)全国和牛登録協会では7年間理事として、 和牛生産県の一つに完全脱皮したことを示すもの いろいろと直接のご指導をいただいた。訃報を耳 であり、第9回全共に課せられた和牛改良の当面 にして改めて御履歴を詳細に調べ、江藤先生の協 の課題を克服したことを実証展示した業績は、日 会における理事歴が実に40年に達することを知っ 本の和牛の生産改良史に燦然と輝く業績である。 た。40年連続して支部長に選出される先生も凄い それは恒に清廉潔白を旨とし、いつも文字通り背 が、40年間変わらず理事として本部に送り出し続 筋を伸ばして、「自信と誇りと愛国心を持て」を けた宮崎県の会員農家の巌をも通す意志の強さに 直言してきた九州男児江藤隆美先生の生涯の業績 は驚愕し、脱帽してしまった。それは江藤先生の として、我々は記憶しなければならないと痛感し 好んで揮毫された「一筋之道」そのものであり、 ている。 正に千年に近い歴史を持つ日本農民の魂の発露で あると感じ入った。 かつて宮崎大学の卒業生歓送会のテーブルで、 経済成長の著しい中国の富裕層に和牛肉を売り込 5年に一度開催される全国和牛能力共進会第9 みたいという中国人留学生の願いには我が意を得 回鳥取大会で宮崎県が見事に総合優勝という快挙 たりと頷いておられたが、将来は全国和牛登録協 を成し遂げた。先生の喪明けを待って行われた祝 会のヨーロッパ総支部のパリ支所勤務をしたいと 賀会で、挨拶に壇上に立った出品農家の方々が涙 いう小生の夢には、とうとう相づちを打っていた と共に揃って口にしたのは、「二番じゃ駄目だ! だけなかったのが今はちょっと残念な思い出とな 一番を目指せ!」という5年前の第8回岐阜全共 った。 終了後の反省会での江藤先生の叱咤激励のことで あった。その先生の熱情に応えた出品者と指導者 先生ありがとうございました。どうぞ安らかに お眠りください。合掌。 が、「伝えよう 熱い想いを 示そう 宮崎牛の 力を めざせ日本一」「すべては日本一のために」 という誠にストレートなスローガンを掲げて、無 心の精進を重ねて勝ち取った勝利なのだと納得し たのである。もちろんその背景には、四半世紀前 振興基金協会(16年4月までは全国肉用子牛価格安 定基金協会)の理事として、また、昭和46年6月か ら平成16年3月まで全国肉用牛協会の顧問として、 当協会の運営等にご尽力いただきました。会員を代 の昭和50年代の後半に全国に先駆けて大型コンピ 表して全国和牛登録協会の福原会長に追悼のお言葉 ュータを導入して、農家の愛牛のデータ管理のス をお願いいたしました。 タートを許容した支部長としての江藤先生の卓越 4 江藤先生には、平成元年から19年間、全国肉用牛
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