知の日比谷 - 東京都立日比谷高等学校

校長室だより
知の日比谷
第
平成28年5月20日発行
40
号
発行責任者
東京都立日比谷高等学校長
武 内
彰
4年ぶりに本校グラウンドへ戻った体育大会
体育大会を企画・運営する体育実行委員たちが身に付けるおそろいのポロシャツの背面
には「原点回帰」とプリントされていた。これは大規模校舎改修工事のために外部会場で
行われてきた体育大会が、本校グラウンドに戻ってきたことを意味している。私は4年前
に見た本校での体育大会を思い出しながら、久しぶりに自校で開催する体育大会を見守っ
た。平成28年5月18日(水)
、降雨のため1日順延とはなったが、体育大会が開催され
たのである。
日比谷生たちは、どの種目においても一生懸命である。クラス選抜リレー、クラス全員
リレー、棒引きなど、全員が全力疾走をしている。どの種目でも全力で取り組む姿が見ら
れるのは嬉しい。やはり、生徒たちにそれだけの思い入れやこだわりがあるからなのだと
思う。また、リレーにおいて最後にゴールする生徒に対しても温かな拍手が送られていた。
お互いに全力で取り組むからこそ、相手に敬意を払うことも自然にできるのだろう。
今年、特に感じたことが2つある。1つは、エール交換の質が向上したことである。あ
る保護者も「日比谷らしい、締りのあるいいエール交換でしたね。」とおっしゃっていたが、
同感であった。青、白、赤、黄色の各団共に個性があり、甲乙付け難い内容であった。各
団をリードする団長たちによる選手宣誓が開会式で行われたが、全員の気合いが込められ
た、メッセージ性のある、そしてユーモアも盛り込まれた立派な宣誓であった。4人の団
長たちのリーダーシップが優れていたことも要因の一つなのであろう。
もう一つ感じたことは最後に述べたい。
体育大会の一週間ほど前のことである。委員の一人が校長室へやってきた。「今年の体育
大会では安全に騎馬戦を行うために、一騎に一人の審判(教員が担当する)をつけたいの
です。まだ、十分に集まっていないのですが、校長先生にお願いしてもよろしいでしょう
か。
」と言う。私に依頼に来るとはさぞかし困っているのだろう。即座に「いいよ。」と答
えた。
「男女ともだね。
」と確認すると、彼女は「そうです。」と言って、審判上の注意が記
載されたプリントを渡してくれた。昨今、小中学校における組み体操での事故が話題にな
っているが、生活指導部が騎馬戦における事故を防止するために、生徒たちに働きかけた
結果、多くの審判を配置することになったようである。こうして私も審判の一員として、
一騎を担当することになった。女子の騎馬戦では無事に務めることができたが、男子の騎
馬戦ではちょっとした体験をすることとなった。組み合って倒れそうになる生徒を抱えよ
うと両手を出したが、受け止めた瞬間にほかの騎馬が倒れてきた。生徒を守ることはでき
たが、自分の身体は地面に倒れこんだのである。両膝を多少すりむき、シャツの背中が汚
れたくらいで済んだので問題はなかった。男子はやはり迫力があるし、力も強い。無事に
終えることができて何よりであった。
強い陽射しの中、多くの保護者の方や地域の方に見守られ、生徒たちは精一杯活動した。
どの種目においても真剣な顔がいたるところに見られた。最終種目のクラス選抜リレー(決
勝)では、生徒たちの声援が大きく鳴り響いた。私はこの瞬間が大好きである。体育大会
のクライマックスである。走る選手たちの耳にも届いたことだろう。最終種目にふさわし
い見ごたえのある内容であった。
特に感じたことのもう一つについて述べたい。それは体育実行委員の生徒たちである。
体育大会が終了し、全校生徒が下校したころに、複数名の委員が校内の廊下を清掃してい
たのである。私が声をかけると、
「どうしても土ほこりが入ってしまい汚れてしまったので。
」
と言う。本校では一足制のため、上下履きの区別がない。千人近い全校生徒がグラウンド
から校舎内に入れば、どうしても土を持ち込んでしまう。それを看過できなかったのであ
る。自分の種目に出場した上に、委員としての仕事も担い、たいそう疲れているにもかか
わらず、箒を手に持ち、黙々と掃いているのである。自分が高校生の時にこういう行動が
とれたであろうか。委員たちの視野の広さや責任感に強さに感謝せずにはいられなかった。
翌日、始業前の教室からは発声練習の歌声が聞こえてきた。どこのクラスであろうか。
今年度二つ目の三大行事である「合唱祭」への取組が始まったのである。