Japanese Psychological Review 2014,Vol. 57, No. 4, 529 - 539 空 想 の 友 達 ―― 子どもの特徴と生成メカニズム ―― 森 口 佑 介 上越教育大学・科学技術振興機構 Imaginary companion : Childrenʼs characteristcs and creation mechanism Yusuke MORIGUCHI Joetsu University of Education/ Japan Science and Technology Agency During early childhood, children enjoy interacting with an invisible friend or a personified object (e. g., a puppet), which is referred to as an imaginary companion (IC).The phenomenon of having an IC is commonly observed in young children, and nearly half of them enjoy interacting with the ICs as they would with a real friend. Researchers suggest that having an IC is pretend play. However, how children create an IC is still unclear. In the present article I review recent evidence of childrenʼs IC and its relations to personality, social environment, cognitive function, and socio-cognitive skills of the children, and propose a possible developmental mechanism of creating an IC. Specifically, I propose that both social environment, socio-cognitive skills, and narrative skills may contribute to the creations of an IC. Key words : imaginary companion, pretend play, preschool children, theory of mind, development キーワード:空想の友達,ふり遊び,就学前児,心の理論,発達 米国においても『フレンズ』のようなコメディや, 1.は じ め に 『パラノーマルアクティビティ 3』のようなホラー 映画において,子どもが目に見えない存在と相互 子どもが独り言を言っている。ピアジェもヴィ 作用する様子は幅広くみられる。このような存在 ゴツキーも子どもの独り言には着目していたし, のことを発達心理学の領域では空想の友達と呼ぶ。 日常的にはよく見られる光景だから,それほど不 本論文では,近年の空想の友達に関する研究につ 思議なことではない。だが,もう少し耳を澄ませ いてレビューし,それらの知見を基に空想の友達 てみよう。子どもはただ独り言を言っているだけ の生成メカニズムについて議論する。 ではなく,誰かに話しかけているようだ。しかも, 2.空想の友達とは 子どもが相づちをうっていることを考えると,そ の誰かも子どもに話しかけているらしい。周囲に は誰もいない。幽霊だろうか,今流行りの妖怪だ ろうか。 空想の友達は,心理学の領域においては,19 世 紀末からその存在が報告されており,20 世紀初 このような子どもの様子は,実は珍しいもので 頭から子どもを対象にした研究の中にも姿を現す はない。我が国では『GOGO モンスター』など ようになった。この領域でしばしば引用される の漫画や『となりのトトロ』などの映画において, Svendsen による空想の友達の定義を原文のまま ― 529 ―
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