年休の計画的付与制度の実務

<H27 年 6 月 30 日発行>
今月のテーマ
年休の計画的付与制度の実務
~計画的付与の内容、方式、必要な手続きとは?~
ポイント1
松沢社会保険労務士事務所
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付与日数のうち5日を除いた残りの日数が、計画的付与の対象とできます。
年次有給休暇の日数のうち、5日は、個人が自由に取得できる日数として必ず残しておかなければなりませ
ん。
このため、労使協定による計画的付与の対象となるのは年次有給休暇の日数のうち、5日を超える部
分となります。
前年度取得されずに次年度に繰り越された日数がある場合には、繰り越された年次有給休暇を含めて5
日を超える部分を計画的付与の対象とすることができます。
ポイント2
計画的付与制度は、さまざまな方法で活用されています。
(1)企業もしくは事業場全体の休業による一斉付与方式
・ 企業、事業場全体を一斉に付与する方式です。
・ 製造部門など、操業をストップさせて全従業員を休ませることのできる事業場で活用されます。
(2)班・グループ別の交替制付与方式
・ 班・グループ別に付与する方式です。
・ 流通・サービス業など、定休日を増やすことが難しい企業、事業場で活用されます。
(3)年次有給休暇付与計画表による個人別付与方式
・ 個人別に導入することができる方式です。
・ 夏季、年末年始、ゴールデンウィークほか、誕生日や結婚記念日など、従業員の個人的な記念日を優
先的に充てるケースも多いようです。
ポイント3
計画的付与制度は、さまざまな時期に活用できます。
(1)夏季、年末年始に計画的に付与し、大型連休とします。
・ わが国では、盆(8月)、暮(年末年始)に休暇を設けるケースが多く、これらの休暇に計画的付与の年
次有給休暇を組み合わせることで、大型連休とすることができます。
・ この方法は、企業もしくは事業場全体の休業による一斉付与方式、班・グループ別の交替制方式に多
く活用されています。
(2)ブリッジホリデーとして3連休、4連休を設けます。
・ 暦の関係で休日が飛び石となっている場合に、休日の橋渡し(ブリッジ)として計画的付与制度を活用
し、連休とすることができます。
・ ブリッジホリデーとして休日が飛び石となっている合間に年次有給休暇を取得させることは、事前に年
単位で休日、休暇の計画を立てることを可能にします。
・ この方法は、企業もしくは事業場全体の休業による一斉付与方式、班・グループ別の交替制方式に多
く活用されています。
、
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(3)メモリアル休暇制度を設けます。
・ 従業員本人の誕生日や結婚記念日、子供の誕生日などを「メモリアル休暇」とする方式です。
・ あらかじめ日にちが確定しているので、計画的付与を実施しやすくなります。
・ この方法は、年次有給休暇付与計画表による個人別付与方式に活用されています。
★大手スーパーA社では、年休の計画的付与制度(6日)を活用して「メモリアル休暇」と「多目的休暇」を
設けています。従業員一人ひとりの年次有給休暇のうちの6日間について、次のような形で年度始め
に計画を立てるように奨励しています。
名 称
日 数
内 容
メモリアル休暇
3日
誕生日、結婚記念日等を含む連続3日間
多目的休暇
3日
自由に設定する
(4)閑散期に年次有給休暇の計画的付与日を設け、休暇の取得を促進します。
・ 業務の比較的閑散な時期に年次有給休暇を付与することです。
・ 年間を通じて業務の閑散が定期的にある場合には、閑散な時期に計画的付与を実施することによっ
て、業務に支障がきたさないで年次有給休暇の取得率を向上させることができます。
★電気機械器具メーカーB社では、閑散期である1~2月の土曜日(4日間)を計画的付与日に指定し、実
質的な労働日数を減少させています。
ポイント4
計画的付与制度の導入に必要な手続きとは?
(1)就業規則に規定する
計画的付与制度を導入する場合には、まず、就業規則に次のように定めることが必要です。
(規定例)
会社は、年次有給休暇の取得を促進するために、各人が有する年次有給休暇のうち5日を除く残日数に
ついて、従業員代表との労使協定に基づき計画的に付与する。
(2)労使協定を締結する
・ 実際に、計画的付与を行う場合には、就業規則の定めるところにより、従業員の過半数で組織する労
働組合又は労働者の過半数を代表する者との間で、書面による協定を締結する必要があります。
・ この労使協定は、所轄の労働基準監督署に届け出る必要はありません。
労使協定で定める項目とは?
① 計画的付与の対象者
計画的付与の時季に育児休業や産前産後休業などに入ることがわかっている者や定年などあらか
じめ退職することがわかっている者については、労使協定で計画的付与の対象者からはずしておき
ます。
② 対象となる年次有給休暇の日数
年次有給休暇のうち、少なくとも5日は従業員の自由な取得を保障しなければなりません。
したがって、5日を超える日数につき、労使協定の基づき計画的に付与することになります。
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③ 計画的付与の具体的な方法
a) 事業場全体の休業による一斉付与の場合
⇒ 具体的な年次有給休暇の付与日を定めます。
b) 班別の交替制付与の場合
⇒ 班別の具体的な年次有給休暇の付与日を定めます。
c) 年次有給休暇付与計画表等による個人別付与方式の場合
⇒ 計画表を作成する時期とその手続きなどについて定めます。
④ 対象となる年次有給休暇を持たない者の扱い
事業場全体の休業による一斉付与の場合には、新規採用者などで「5日」を超える年次有給休暇の
ない者に対して、次のいずれかの措置をとります。
a) 特別休暇を設けて、付与日数を増やします。
b) 休業手当として、平均賃金の60%を支払います。
⑤ 計画的付与日の変更
あらかじめ計画的付与日を変更することがあることが予想される場合には、労使協定で計画的付与
日を変更する場合の手続きについて定めておきます。
【グループ別付与方式の協定例】
1.各課において、その所属の従業員をA、Bの2グループに分けるものとする。
その調整と決定は、各課長が行う。
2.各従業員が保有する平成〇年度の年次有給休暇のうち、5日分については各グループの区分に応じ
て、次表のとおり与えるものとする。
Aグループ
Bグループ
8月5日~9日
8月12日~16日
3.従業員のうち、その保有する年次有給休暇の日数から5日を差し引いた日数が「5」に満たないものにつ
いては、その不足する日数の限度で、第2項に掲げる日に特別有給休暇を与える。
4.この協定の定めにかかわらず、業務遂行上やむを得ない事由のため指定日に出勤を必要とするとき
は、会社は従業員代表と協議の上、第2項に定める指定日を変更するものとする。
【個人別付与方式の協定例】
1.当社の従業員が保有する平成〇年度の年次有給休暇のうち、5日を超える部分については、6日を限
度として計画的に付与するものとする。なお、その保有する年休の日数から5日を差し引いた日数が「6」
に満たないものについては、その不足する日数の限度で、特別有給休暇を与える。
2.年休の計画付与の期間およびその日数は、次のとおりとする。
・前期 ⇒ 4月~9月の間で3日間
・後期 ⇒ 10月~翌年3月の間で3日間
3.各個人別の年休付与計画表は、各回の休暇対象期間が始まる2週間前までに会社が作成し、発表す
る。
4.各従業員は、年休付与計画の希望表を、所定の様式により、各回の休暇対象期間の始まる1ヶ月前ま
でに、所属課長に提出しなければならない。
5.各課長は、前項の希望表に基づき、各従業員の休暇日を調整し、決定する。
6.この協定の定めにかかわらず、業務遂行上やむを得ない事由のため指定日に出勤を必要とするとき
は、会社は従業員代表と協議の上、第2項に定める指定日を変更するものとする。
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