弦の振動からわかること

弦の振動
●固有振動
物体にはそれぞれ振動しやすい固有の振動数があり、その振動数を固有振動数といいます。⽯を
ハンマーで叩くと⽯によって⾊々な⾼さの⾳を発しますが、そのときの⾳の⾼さがその⽯の固有振
動数です。ピ〜ンと張った弦はその⻑さや張⼒、材質によって固有振動数が決まっています。
弦の⻑さ
●弦の振動は両端が節
ピンと張った弦を弾くと、右図のような波が発⽣します。弦
が空気を振動させ⼈間の⽿に⼀定の⾼さの⾳が聞こえます。こ
れらの波のうち、腹が1つの振動を基本振動、腹が2つの振動
を 2 倍振動、腹が3つの振動を 3 倍振動、…といいます。弦の
腹
節
基本振動
2 倍振動
固有振動数は複数あり、それらの振動は同時に起こっています。
3倍振動
●弦の⻑さと波⻑の関係
弦の⻑さを L
、n 倍振動(n=1,2,3,…)での波⻑を λn と
します。
・基本振動(n=1):波⻑ λ1,
L=
・2 倍振動(n=2):波⻑ λ2, L =
・3倍振動(n=3):波⻑ λ3,
・n倍振動(n=n):波⻑ λn,
1
2
2
2
×1
∴
λ1= 2 L
×2
∴
λ2=
2L
2
3
2L
L = ×3 ∴ λ3=
2
3
:

2L
L = n × n ∴ λn=
2
n
●弦の固有振動数
Memo
☆⾳の三要素
・⼤きさ:波の振幅⼤きいと⾳も⼤きい。
・⾼さ:振動数が⾼くなると⾳も⾼くなる。
・⾳⾊:倍⾳の含まれる割合で⾳⾊が変わる。
n 倍振動の振動数( f n )は基本振動の振動数( f1 )の n 倍になります。
f n  n  f1
弦を弾いて 440Hz の⾳を出したとき、その整数倍の 880Hz、1320Hz、1760Hz、…の⾳も⼩
さいですが同時に出ています。また弦の固有振動数 f n は弦を張る⼒を H 、1m 当たりの弦の重さ
(質量)を W とすると次の関係があります。
f1 
1 H
,
2L W
f2 
2 H
,
2L W
f3 
3 H
,
2L W
fn 
n H
2L W
この式から、振動数を⼤きくする(⾳を⾼くする)には、
・弦の⻑さ L を⼩さくする。(根元に近いフレットを押さえた⽅が⾳が⾼くなる。)
・張⼒ H を⼤きくする。(調律するときペグを巻き上げた⽅が⾳が⾼くなる。)
・線密度 W を⼩さくする。(弦が軽い⽅が⾳が⾼い。)
ということがわかります。
2015.02.03 by KENZOU
波長(λ)
■温度と音の関係について
人間の可聴域は約 20Hz~20KHz 程度
20KHz以上を超音波と呼んでいます。
●⾳(⾳波)とは
音波の伝搬方向
⾳を伝えるものを媒質といいます。⾳(⾳波)は空気分⼦(媒質)を次々
に揺らして伝わっていく波です。空気の濃くなったところと薄くなっ
たところが波となって伝わるので、これを粗密波と呼んでいます。こ
の波が⼈間の⽿の⿎膜を揺らすと⼈間はそれを⾳として感知します。
●⾳速と温度の関係
・ ・ 粗
密
粗
密
・
・
・
・Hz:振動数の単位でヘルツと読みます。
・1Hz は 1 秒間あたり 1 回の振動です。
⾳速は温度によってその速さが変わります。⾳速を V [m/秒]、温度を T[℃]とすると次のようになります。
媒質が空気の場合:V=331.5+0.6 T [m/秒]
媒質が He の場合:V=970+1.6 T [m/秒]
空気の場合、気温が15℃では時速約 1,230Km/時というモノスゴイ速さで伝わります。この速さをマッハ1
と呼んでいます。
鉄の⾳速は 6000m/s もあるので、6000m
の⻑さの鉄の棒の⼀端をコンコンと叩いた⾳
は 1 秒後にもう⼀⽅の端に届きます。⼀⽅、
空気中を伝わるコンコン⾳は約 18 秒後に⽿
に届くことになります。
コンコン
鉄を伝わる音の速さは空気より約 18 倍速い!
●⾳速・波⻑・振動数の関係
⾳速をv、波⻑をλ、振動数をfで表すと
⾳速=波⻑×振動数
で表されます(右図参照)。
v=λ×f
λ:ラムダと読みます。
●温度が上がると「⾳が⾼くなる」(2015.08 訂正)
クラシックギターのナイロン弦の場合、ガフ・ジュール効
果といって⼀定の張⼒のもとでは気温の上昇により弦が縮
み張⼒が増し、弦の振動数が⼤きくなる結果、⾳が⾼く聞
こえることになります。ただし、管楽器では
⾳速が速く
なる結果、振動数が⾼くなります。
⾳速=波⻑×振動数 (v=λ×f)
速い
同じ ⼤きくなる ⇒ ⾳が⾼くなる
☆Coffee Break☆
・ヘリウムの音速は空気より速いのでヘリウムガスを吸うとダッグ
声(かん高い声)になりますね。
・ハーモニクスは 2 倍、3 倍などの倍⾳がでます。これは軽く弦
に指を触れることで、そこに振動の節ができることによります。
振動数が大きい音は高く聞こえ、振動数
の小さい音は低く聞こえるんだね!
また、わずかに違う音を鳴らすと
ワ~ン、ワ~ンと「うなって」聞こえるね。
2 つの音叉で
うなりが起こる!
<うなり>
※弦を押さえる位置によっては
倍⾳(ハーモニクス)がでませ
ん。
2015.2.11 by KENZOU
■ピタゴラス音階について
2 1
3 2
KeyWord:ピタゴラス音階では 1, , が重要な数値となっています。
ピタゴラスは、弦の⻑さの⽐に注⽬して、弦の⻑さの⽐が2対1、3対2のとき、2つの⾳が最も美しい協和
⾳になることを発⾒しました。それでは
(1/2)L(ド)
☆Let’s stydy the Pythagorean Tuning System!
⼀弦琴
●ピタゴラスは同じ⻑さ L の⼀弦琴を 2 つ⽤意し、開放弦の⾳を
(2/3)L(ソ)
1 番⽬の⾳「ド」と定めました。
L(ド)
●1つを開放弦, もう1つを弦の⻑さを短くして同時に弾き, 2 つの琴が⼼地よいハーモニーを奏でる弦の⻑
さを調べた結果, 1番美しく響きあったのは弦の⻑さが 1/2 の時で(つまりオクターブ上の⾳), これらが
同質の⾳であることを確認し, これも 1 番⽬の⾳と同じ⾳「ド」という名前を定めました。
..
●次に「ド」とオクターブ上の「ド」の間で⼀番⼼地よく協和する⾳を探したところ、弦の⻑さが 2/3 の⾳
であることを⾒つけ、これを 2 番⽬の⾳「ソ」と定めました。2 番⽬の⾳の弦の⻑さは
L×(2/3)≒0.667L
となります。
●次に, 3 番⽬の⾳は 2 番⽬の⾳「ソ」を基準にして⾏いました。オクターブ上の「ソ」を除いて、2 番⽬
の⾳と最も⼼地よく響きあう⾳は, 2 番⽬の⾳の弦の⻑さの 2/3 倍
の⾳となるはずで、弦の⻑さは
L×(2/3)×(2/3)≒0.444L となり
ます。しかしこの⾳の弦の⻑さは 1 番⽬の「ド」のオクターブ上の
「ド」の⾳の弦⻑ L/2 より短くなるので、1 オクターブ上の「ド」
..... .
より⾼い⾳になってしまいます。 そこで、この⾳と同質の⾳で 1
........
オクターブ低い⾳(弦⻑は 2 倍)を 3 番⽬の⾳「レ」と定
めました。
「レ」の⾳の弦は上の弦の⻑さの 2 倍の⻑さとな
5 番⽬
候補
るので L×(2/3)×(2/3)×2=(8/9)L≒0.889L となります。
3番⽬
候補
●同じようにして 4 番⽬の⾳は 3 番⽬の「レ」の⾳の弦の
⻑さの 2/3 倍の⾳をとり、「ラ」と定めました。弦の⻑さ
い
2 番⽬
(ソ)
(2/3)L
は L×(2/3)×(2/3)×2×(2/3)=(16/27)L≒0.593L
5番⽬(ミ)
ド(⾼)
3番⽬
(レ)
1番⽬
(ド)
L
...
●5 番⽬の⾳は 4 番⽬の弦の⻑さの 2/3 倍をとると L×(24/33)×(2/3)=0.395L となるので、このオクタ
.....
ーブ下の⾳を 5 番⽬の⾳「ミ」と定めました。弦の⻑さは L×(24/33)×(2/3)×2=(64/81)L≒0.790L
●以降まったく同じようにしてドレミの⾳階を決めていきました。
L
①
③
⑤ ⑦
f  1 :振動数は弦の⻑
L
・完全 4 度(半音 1 つ)
②
④
振動数の比が3:4
⑥
さに反⽐例します。
・完全 5 度(半音 1 つ)
振動数の比が2:3
0
フレットの位置
完全 4 度 完全 5 度
オクターブ
Coffee Break
・完全 8 度(オクターブ)
振動数の比が1:2
ピタゴラスは下図↓のように
ド→ソ→レ→ラ→ミ→シ→ファ
の順で音階を決めていきました。
①
ド
●平均律音階とは?: 1 オクターブが 12 半音階なので、半
音が等比級数としてならび、1 オクターブ上がるごとに振
動数が2倍となるように作られた音階のこと。
⑥
シ
③
レ
「ド」の音の振動数を a0 とすると n 番目の音の振動数は
an=a0rn=a0×2n/12 となります。ピアノや管楽器はこの音
ミ⑤
④ラ
階を採用しています。(右の表参照) r=21/12=1.05946
ソ②
ファ⑦
2015.2.11 by
KENZOU
■弦を弾く位置 de 音色が変わる!?
●⾳の⾼さと振動数(周波数)はどのような関係があるのか?
⾳の⾼低は振動数によって決まりました。低⾳は振動数が⼩さい⾳で、弦はゆっくり振動しています。
⼀⽅、⾼⾳は振動数が⾼い⾳で、弦は速く振動しています。
ところで、例えば 5 弦「ド」の⾳を出す場合、5 弦の中央部を⽖弾いた場合とブリッジよりのサウンド
ホール(⼤体張られた弦の⻑さの 1/4 あたり)あたりで⽖弾いた場合とでは同じ⾳程でも違う⾳に聞こ
えます!
つまり、「⾳⾊」が変わります。。
。
・・・むむ!?
これは⼀体どいうことでしょうか?
●⾳⾊(ねいろ)は倍⾳の含まれ具合でかわります
⾳⾊というのは⾳の波形の違いできまり、それによっ
て聞こえ⽅が変わりました(「■弦の振動」のレポート
参照)。単⾳の⾳の波形は普通の波の形ですが、倍⾳が
加わると、その混じり⽅によって波形が変わってきま
す。これが⾳⾊のもとですね。たとえば、2 倍⾳が多
くて、3 倍⾳が少ないなどの差などがでてきて、この
変化が⾳⾊の違いになるわけです。
●弦を弾く位置で⾳⾊が変わる!
本論に⼊りますが、ギターの場合、同じ弦でもはじく位置
を変えれば、⾳に含まれる倍⾳の成分が変わるんですね。
弦の真ん中あたりを弾くと 1、3、5 倍といった奇数の倍⾳
豊かな音色
の音が出る
だけしか含まれませんが、サウンドホールの上(ブリッジか
ら 1/4 のあたり)を弾くと、偶数・奇数の倍⾳成分が増えて
豊かな⾳⾊の⾳がでるというわけです。 ⾳⾊が良いと⾔われ
るギターは、倍⾳成分がたくさんでるギターということになります。
Coffee Break
・その1
位置ばかりでなく弦の弾き⽅(指の微妙なタッチなど)によっても含まれる倍⾳の成分は変わってき
ます。だから少々⽿の痛い話ですが、同じギターを弾いても上⼿な⼈と初⼼者の出す⾳⾊は明らかに違うこ
とになります(^^);。
・その2
⾼い倍⾳は癒し効果をもつといわれます。⾃律神経を安定させたり、免疫⼒を⾼めるなど、⾝体に
よい影響を与えるようですね。美しいギターの⾳⾊が⼼⾝をリラックスさせてくれるのもうなずけます。
・その3
楽器によって⾳⾊は異なります。例えばバイオリンでもフルートでも「ラ」の⾳は 440Hz で
すが、明らかに⾳⾊は違いますね。バイオリンは⾼い倍⾳をたくさん含みますが、フルートは少ない
など、楽器によって含まれる倍⾳が異なります。クラリネットは、3 倍、5 倍、7 倍…など、ほとんど
奇数の倍⾳ばかりを含むことが、クラリネット独特の⾳⾊を⽣みだす要因といわれています。
・その 4
1/f ゆらぎはセラピーにいいといわれます。ゆらぎというのは、⼤きくなったり⼩さくなった
り、強くなったり弱くなったり、連続的であっても⼀定ではない揺れのことをいいます(ロウソクの⽕
のチラチラなど)。fは周波数で、f→⼤は⾼い⾳、f→⼩は低い⾳となりますね。1/f ゆらぎは、⾳のゆ
らぎの中に低⾳は⼤きな⾳で、⾼⾳は⼩さな⾳で 1/f の割合で含まれているということになります。早
い話、三船敏郎のドスの効いた大きな声の中に通販・高田の甲高い声が小さく混ざって揺らいでいる、といっ
たところでしょうか?
2015.2.18 by KENZOU