平成 27 年 7 月 (第 38 号) NPO 日本住宅管理組合協議会 神奈川県支部ニュース 魁 NPO 日本住宅管理組合協議会 神奈川県支部 さきがけ 発行責任 支部長 川上 湛永 わ 横浜市青葉区すすき野 1-4-7-104 電話 045-902-4494 排水管スラブ上配管工事 厚木岡田団地設備改修工事報告 鳶尾第二住宅管理組合 永田 康幸 5 月 12 日厚木岡田団地にて日住協神奈川支部主催の「排水管スラブ上配管工事」の工事 見学会が行われた。30 名近い参加者があり、厚木岡田団地管理組合集会室に入りきれない 参加者で活況を呈した。 旧公団団地では通常、排水管は階下の天井裏に設置され、居住者自身では点検できない 欠点があった。どの団地でも排水管改修工事では、スラブ上配管を望んでいるが床下の勾 配 1/100 のスペースが確保できず断念してきた経緯がある。 今回の工事では居住者自ら排水管を点検できる ように改善した。厚木岡田団地の設備工事は 「2004 年に台所排水縦管更新工事」「2011 年に給 水横主管・縦主管・一部埋設管の更新工事」を実 施済であり、今回の排水管更新工事で設備関係工 事はすべて完了した。 厚木岡田団地は洗面所・浴室の排水管はスラブ 上配管で、洗濯機排水管だけがスラブ下であった。 今回の工事で洗濯機排水管をスラブ上にしたこと で浴室・便所の 3 つの排水管をまとめ 1 本の排水 3本の排水管をスラブ上にまとめた現場と、 特殊排水継手(矢印) 管にすることが特殊排水継手とラセン管を使用し たことにより可能となった。この工事は管理組合の要望でなく、コンサルタントよりスラ ブ上配管が可能であるとの判断による。床下が 130mm あり排水管の勾配 1/100 以上が取れ たためである。 この見学会は、工事中の現場と空き部屋のモデル施 工済の二箇所を見学できた。床を剥がして配管具合を 確認でき工事内容の理解に役立った。 総会前の忙しい時期に見学会を開催してくれた、管 理組合理事会および岩根理事長には厚く御礼申し上 げます。 (厚木岡田団地概要―入居 1979 年、旧日本住宅公団分譲 工事内容を説明する岩根理事長(左) 住宅 PC造 5 階建 12 棟 -1- 280 戸、日住協加盟 理事長 29 年 小澤 忠二 3. 回想録連載 -38 初期公団分譲団地は、集合住宅の巨大実験場でもあった。 第二次大戦後の日本は、復興と戦争賠償支払いのため、緊縮財政下で国民は、貧しい生 活を強いられ、都会では焼野原になったため住宅などはとても望めませんでした。 しかし、20 年近く経つと情勢も一変し、東海道新幹線開通・東京オリンピック開催など 奇蹟の復興が進み、これに合わせるかのように住宅政策にも着手し、池田内閣は所得倍増 計画や労働者の持家政策を打ち出しました。そして住宅公団や公社を通じ、昭和 40 年代は 賃貸から分譲へと方向転換をした訳です。 そんな中で、私共も公団分譲初期の3DK(専有部分 47 ㎡)に、11 倍という高い抽選率 の中で幸運にも入居出来ました。そして家族状況や所得水準も考慮されたことから、過半 数が大卒という大変なエリート集団になった訳ですが、当初は何処でも同様で、その地区 からも高い評価と羨望のまなざしを以って迎えられ、喜びと希望に満ちていたことが昨日 のように思い起されます。 ところが、入居して気が付くと、駐車場不足、幼稚園不足、それに通勤の不便が分かっ て不満が出始めました。しかし公団側は入居時に「いろいろ不便があっても、管理組合を 通じて解決を図り、皆様方はこの住居を基盤に早く出世してより良いマンションや戸建て 住宅に入られるように」という趣旨の住み替え論を引導として説明されたことから、永住 を求めて入居した人達からは不安を覚える人も出たのと、ドライな人達はこの中では、出 来るだけ金を使わず自己の財産を貯めて早く脱出しようと考える人の考えが一致せず、管 理組合運営も混乱しました。 後者の考えの人の言い分は、どうせ処分・変更は全員の合意が必要で、 何も出来ないではないかとの主張でした。 そんな中で、初代の理事長になったYさんは、大変温厚・誠実な公務員の方で熱心に職 務に当たられたが、組合員の中には失礼な誹謗を浴びせる人がいたことから1年余で辞め、 近くに出来た新設の団地に転居してしまい、駐車場運営や、自治会創設などに係わってい た私が昭和 51 年から理事長に就任した訳です。 組合内部のまとめ役は当然ながら、私は永住を考えて入居したことからも近隣との係わり にはより深い関心を持つようになりました。 そして、やってみていろいろなことを知り得たが、その一つが何故、此の原宿の中心部 に 780 戸の大団地を建設することが出来たかと云うことでした。景色も良く平面で 81,000 ㎡と広大な土地を簡単に入手出来ないことから、何か問題があるのではと入居時から気に なっていたが、それが分かったのです。 -2- 戦時中に海軍の高官が、当然ながら横須賀と厚木基地に通じる交通の要であるこの原宿 の地にやって来て「此処が良い」との一言で海軍病院設置を決定し、病院運営に必要以上 の広大な土地を、この地の農家から無償で土地収用をしてしまったとのことで、その農家 のご主人からも話を聞くことが出来たし、防空壕やその入り口、巨大な井戸、焼き場跡ま で確認出来て、納得が出来ました。 そして戦後に至り、その3分の1を病院と共に厚生省が引き継ぎ、外側3分の1は東急 不動産が買って戸建て分譲住宅とし、その間の3分の1が住宅公団が取得して私共の団地 に造成する訳ですが、よくも戦後 20 年以上も空地となって残っていたものだと思うと共 に、幸運なことでした。 まあ戸塚区は農地、山林、調整区域が多く、住宅数も少なかったことから、それも当然で しょうが、無償で土地収用されてしまった農家の気持ちは、汲まなければならないものと 思い、以後は心がけるようにしました。 次に団地建設については、市は当然税収も見込まれ、地元も横浜ドリー ムランド以外に集客のない人口希薄の地に 780 戸が入居することは活性化 に繋がるので、何の反対もないまま、急造成に入ったと想像されます。 当時は、プロパンガスしかないこの地に 10 ㎞も離れた処から都市ガスを引いて団地内に 整圧器を設置して近辺の基地として使うことや、汲み取り式便槽しかなかった時代に、団 地内は 800 トンの汚水処理槽を造って洋式水洗トイレに備える一方、狭いながらも3DK の最新のダイニングキッチン造りにするなど、公団としても大変な工夫があったと思いま す。 しかし、住居の設備が棟別に中小 5 社の建築業者に建設を任せた結果、鉄製のホーロー 引き風呂釜もあれば、ポロエチレンの釜あり、木製建具が一般的だが塩ビ製もある、窓枠 は三社が使われるといった急造成上の欠点が後に発見される躯体に木屑が入ったまま。 土木ではやはりゴミを埋め込んだまま、点検不十分でガスや水が吹くなど多くの問題点と 共に残ってしまいました。 そして最も困ったのが雨漏れが多く、これは他の団地でも多発したことから社会問題にも なってしまいました。 次に、やがて入居 10 年目を迎えるに至って建物補修の企画に入ったが、欠陥部分の解 決は当時の管理会社である「団地サービス」や日住協傘下の組合との情報交換で知識を高 め、補修工事で改善をした他、組合独自の努力では駐車場増設、自転車置き場、運動場造 成など、多彩な設備をしたので、漸く集合住宅としての機能を持つことが出来ました。 また、町会との関係では自治会長のI氏が連合町内会長として永く活躍されたこともあ り、すっかり大正地区の「名物団地」の地位を占めることになった訳です。そして、同類 の他の団地もそれぞれの努力で解決し、さすがににエリート集団だっただけに郊外の地に あっても政治を始め全ての面で団地族などと言われながらも活躍をする時代となった訳 -3- です。一方、住宅公団はどうしたかですが、郊外型団地は通勤などにやはり不便と見た ようで、段々に鉄道路線駅の近い方にマンション建設をする方向に変わりと共に、それま での教訓から欠陥の無い立派なマンション造りに方向を転換してきました。しかし、これ も昭和 59 年頃を最後に民間分譲へとその地位を譲ってしまう訳です。 さてさて、不動産広告を見る度に集合住宅もそれなりに価値評価されるようになったの かと思っていたが、昭和 50 年代半ば頃になると、それまで静かに各戸の売買価格が上が ってきたのに、毎年 100 万円もの上昇が始まりました。資産価値が上がることは有難いこ とだと誰も不満を言う人もなく、にんまりしていたのですが、後から考えると、これが不 動産バブルの入口だった訳です。 そして、これによって更に難しい問題と直面することになってしまいました。 (次回につづく) マンションの春秋 な 集合住宅で深刻な問題の一つに高齢化があります。建物と居住者の両方が存在します が、この紙面では居住者サイドの報告です。 高齢化の理由で管理組合活動、特に理事の仕事は勘弁してくれという話は日常茶飯事で す。 ところが、11 年間理事長という重責を担っ てきた方がいます。厚木の鳶尾第二住宅管 理組合の近藤博隆氏です。11 年間理事長で したがその 1 年前は副理事長を歴任し、管 理組合業務 12 年の大ベテランです。 多分皆様の中には1年~2年任期の理事活 動では、高額な改修工事を複数回経験した 方は極めて少数であると思いますが、近藤 さんは「外壁等総合改修工事」「電気幹線改 修工事」「給排水管設備改修工事」と三回も 大工事を経験してきました。 セミナー「大規模修繕、管理組合からの報告」でパネ ラーとして発言する近藤理事長(右から 2 人目) 2014.9.13 労働プラザに於いて 更に、驚くべきはその年齢にあります、一見し、お若く見えますが 89 歳とご高齢で、 身体能力はもちろん頭脳も明晰で年齢を全く感じさせません。 本年 5 月の管理組合総会で 12 年間の管理組合役員を終了しましたが、今後も管理組合 活動をボランティアとしてサポ-トしたいと意気軒昂です。管理組合活動を始める前から も団地敷地内及び外周部道路を清掃する孤独なボランティア活動を 20 年近くも続けてい らっしゃいました。更に「我が 24 街区、次に目指すものは何か」と題するシンポジウム を 4 回も開催し問題提起し、みんなで解決しようとする姿勢には年齢の壁は感じられま -4- せん。近藤さんの様な考えの居住者がすべての集合住宅にいれば、団地にかかわる難問は か なり軽減できるはずです。 今後は、無理をせずのんびり管理組合業務を見守って頂きたいものです。 (永田康幸・支部理事、鳶尾第2団地修繕委員会委員長) 六浦台団地訪問記 鳶尾第二住宅管理組合 永 田 康 幸 京浜急行六浦駅より急な登り坂を約 15 分歩いたところに、5 階建てコンクリート造り の集合住宅が六浦台団地でした。典型的な旧日本住宅公団モデルで昭和時代を彷彿させま す。築 40 数年の落ち着いた貫録ある雰囲気です。団地を取り囲む樹木は良く手入れをさ れていて、いたるところに草花が植えられ緑を愛する人々が偲ばれます。 一歩団地内に足を踏み入れた時、まず目についたのはバルコニー目隠しパネルの、やや 白っぽく褪色した感じでした。バルコニー支柱パイプの根元の腐食がいたるところにみら れ布団を干したり、うっかり寄りかかると手摺りが崩れ落ちないか不安をおぼえました。 同時にバルコニー床の防水層もかなり傷んでいて、もはや防水機能は無いと想像されまし た。それが原因と思われる1階のバルコニー床下のコンクリートの爆裂によるコンクリー ト破片が何か所か見られ、速やかな補修が必要と思われました。 平成 16 年度に総合改修工事をしたとのことですが,そのわりには傷み具合が激しく、海 に近く潮風が吹きあげる悪環境のせいかと想像されました。 一方建物は階段入り口に手すりが付けられ、年寄りには優しい配慮が見られました。 しかし階段の防水シートの荒れ具合も目につき経年劣化か、施工時の手抜きなのか判断は つきませんが、何らかの補修工事をする必要がある状況でした。全般に建物の状態は傷み がかなり進んだ状態で、改修工事を先延ばしにすることなく、可能な限り早く進める状態 と判断されました。 今回、保全関連改善委員会の宮野作次委員長 はじめ委員諸氏が、改修工事に向けて検討を開 始したことは、居住者の安全・安心を確保する もので歓迎すべき対応です。 今後は工事計画・工事時期の検討を踏まえ、改 修へのスピード感が問われることになります。 バルコニーの手摺り支柱の腐食工事だけでも、 数量が膨大で高額になる可能性があり、更にバ 団地内を六浦駅循環路線バスが 1 日 63 便走行 している。 ルコニー床・階段室の防水も加わり改修工事全 体では、かなり高額になることが予想され資金計画も重要な課題です。しかし今回委員会 の会議を見て委員の方々の問題意識が明確であり課題を解決しようとする意気込みに安 堵感をおぼえました。 -5- 主な支部活動報告 鳶尾第二住宅管理組合の防犯パトロール活動 支部会議 6 月 12 日(金) 18 時~ 県民センター 出席者: 川上、小澤、飯田、永田、佐藤 今から 10 年前頃、朝出勤のため駐車場に行ったら自分の車が見当たらない。車がコンクリート 1. 報告事項 ブロックの上で亀の子状態になっていて 本のタイヤが盗まれていた。ダシュボードに財布を入 ・ 5 月 3 日(日)、6 月 7 日(日) 4 横浜市マンション管理組合各区交流会に相談員として れておいたら盗まれた、しかも 参加2 回たて続け被害に遭った。車の盗難、車上荒らしが頻繁に発生 しました。 ・ 5 月 12 日(火) 厚木岡田団地設備改修工事見学会を主催、30 数名参加。 誰もが被害者になりうる懸念が広がり、平成 17 年管理組 ・ 5 月 22 日(金) 神管ネット理事会に参加 合のボランティア活動として“防犯パトロール”が始まり ・ 5 月 30 日(土) 浜管ネット総会、20 周年式典に参加 ました。当初は 5~6 人が一つのチームを結成し 10 余チー 横浜市内のホテルで、盛大に挙行。総会の後、マンションコミュニ ムが誕生しました。駐車場・団地敷地内を各チームごとに ティ研究会の廣田信子代表が、最近のマンションを取り巻く状況、 時間帯・パトロールコースを設定し運営をしてきました。 国交省の標準管理規約改正を巡る動きなどについて、講演。また、 約 1 時間程度のパトロールを週 1 回程度の範囲で実施して 浜菅会員、関係者など 300 人が参加、記念パーティが開かれた。 きました。 日住協支部から川上支部長が参加。 平成・ 27 年現在チーム数は 4 チームで(1チームは休眠中)実質 3 チームによる献身的な活動が 6 月 13 日(土) 神管ネット理事会及び総会に参加 10 年目を迎えています。継続の秘訣は月 1 回程度に減らしたこと、歩くことによる健康の増進、 参加女性の熱意が止めたい欲望を防止していること、メンバーと歩きながらの会話によるコミュ 2. 厚木地区日住協交流会 二ケーションの活性化をはかれることを挙げています。 8月1日(土曜)で、日程調整する。会場は、鳶尾第2住宅管理組合(厚木市) 今後の課題は階段に設置してある消火器のいたずらの噴射、玄関ドアの鍵穴に接着材の詰込,駐 輪場の壁にスプレー塗料のいたずら書きがあります。基本的に夜間のパトロールが中心ですが日 3. 魁ニュース 38 号(7 月号)発行の検討 中のパトロールも検討が必要だと実感しています。 4. 支部予算・支出の検討 5. 次回支部会議、 7 月 9 日(木) 18 時 30 分~ (記 永田康幸) 県民センター9 階 クリック(編集長から) 標準管理規約、パブコメ大幅遅れ マンションの管理組合にとって大きな影響のある、国交省マンション標準管理規約。 それを改正する国交省が設けた「マンションの新たな管理ルールに関する検討会」(座長・ 福井秀夫・政策研究大学院大学教授)が、3月に最終的な報告書案をまとめ、公表したが、 これを受けた国交省が、一般から意見を公募するパブリックコメントの実施が、大幅に遅 れている。もともと検討会は、2年半もの中断という異例つづきだったが、パブコメ遅れ も、また異例といえる。 国交省は、当初、パブコメを非公式だが5月連休明けに実施したい、としていたが、7 月に入っても実施の動きはない。 -6- 過去の例からみると、パブコメ実施期間は1カ月とされ、7月中・下旬に公表されると、 意見応募は8月中にずれ込むことになる。8月はお盆休みがあり、管理組合も対応しにく いところだ。 報告書によると、今回の標準管理規約の改正は14項目にわたり、もしそのまま、改正 案に導入されるとなると、標準管理規約制定以来、最大の改正になる。この中には、マス コミなどでも取り上げられ、マンション管理組合などマンション関係者に重大な関心を持 たれているコミュニティ条項の削除、理事会運営について外部の専門家を入れ、総会で専 門家の業務を監督する、「外部管理者・総会監督型」の導入、理事会の理事の代理人に、 配偶者や一親等などの代理出席、議決権行使は望ましくない、とするなどが盛り込まれた。 コミュニティ条項は、平成16年に導入され、管理組合の運営に欠かせない区分所有者 同士のつながり、つまりコミュニティを重視する動きにつながり、管理組合の運営、とり わけ議論がぶつかる大規模修繕がやりやすくなるなどの効果があった。漸く定着してきた のに、削除とは、と管理組合の現場では、疑問と戸惑いが広がる。 報告書では、管理組合は、財産管理に徹すべきで、コミュニティ形成 への支出などは認められない、とされている。 また、外部管理者・総会監督型は、大半の管理組合で採用されている理事会・理事長方式 を変え、マンション管理士、弁護士などが管理者に就任、区分所有者は年一度の総会で、 専門家の業務をチェックする仕組みだ。 ただでさえ、役員になりたがらない無関心層の肥大化が問題視されているマンションで は、無関心者を増大させるだけという指摘もある。 パブコメにあたって、国交省の担当官が、検討会の報告書を、そのまま書くとは、想像 できないが、もし報告書案をストレートに出すとすれば、これまで蓄積してきた標準管理 規約の「文化」を否定することになる。 (川上湛永) 団地祭りの風景 -7-
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