人生を決めた出会い 村松 正子(長野市) 大阪の海辺で生まれ育った私は信州の自然に憧れて学生時代から県内のあちこちを訪 ね歩きました。木曽、上高地、高遠、安曇野等たくさんの思い出が出来ました。 そんな中で「信濃の国」という県歌の存在を知りその歌に惹かれた私は歌詞を知りた くて旅雑誌に投稿したのです。早速数人の方から歌詞を同封した手紙が届きその中の 1人と何度か手紙のやりとりが続きました。 それから数ヶ月後、春まだ浅い3月始めにその人と会うことになり待ち合わせ場所が 長野駅前でした。 夜行で大阪を発ち翌朝長野駅に到着。何度も信州を訪ねていたけれど長野駅に降 り立つのは始めてでした。手紙の交換はしていたもののお互いの顔は知らないままだっ たので改札口を出る前から期待と不安でドキドキでした。駅前に出てみると多くの人が 行き交う中で人待ち顔の人が1人立っていました。もしかしたら、と思っていたらその人 も私の方へ歩いてきました。何ともぎこちない挨拶を交わしお互いに名乗り合いました。 その人の案内でまだ雪の残る小布施、北野美術館、そして善光寺、松代等を回り1 日があっという間に過ぎ、私はその日のうちに再び夜行で大阪へ帰ることになりました。 ホームまで見送ってくれて今度は杏の花咲く頃森へ一緒に行く約束をしたのです。 そうして4月、2度目の長野駅前は何だかとても懐かしい場所に思えました。森の杏 はまだ咲き始めでわらぶき屋根の民家とうす桃色の花がとても印象的でした。 そしてあの3月の長野駅前の出会いが私の一生を決める出会いとなったのでした。 「信濃の国」が縁となってつながりが出来たその人と結婚、豊かな自然の中での暮ら しを楽しんでいます。
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