数理物質科学研究科 修士論文概要 専攻名 学生氏名 物理学専攻 200820276 横山広樹 学位名 修士 (理学) 指導教員 三明康郎 学籍番号 修士論文題目 印 LHC-ALICE 実験における QGP 研究のための クォーク/グルーオン・ジェット識別能力の評価 εg : 1.0 → 0.4 におけるジェット内のグルーオンジェット Jet らクォーク・グルーオンプラズマ (QGP) 相に相転移す の増加率 15 % を得た (ET = 100GeV)。 ると考えられている。QGP とは核子内のクォークがそ また、鉛-鉛衝突において、εq : 1.0 → 0.4 におけるジェ 高温高エネルギー密度下において物質はハドロン相か の閉じ込めから解放され、自由粒子のように振る舞う状 ット内のクォークジェットの増加率 20 %、εg : 1.0 → 0.4 態であり、高エネルギー加速器を用いた重イオン衝突実 におけるジェット内のグルーオンジェットの増加率 15 % 験によって実現されると考えられる。 Jet を得た (ET = 100GeV , pT > 1GeV/c)。 欧州原子核研究機構 (CERN) において 2009 年から開 √ 始された LHC 加速器を用いた粒子衝突実験では s = √ 14TeV の陽子-陽子衝突や sNN = 5.5TeV の鉛-鉛衝突 鉛-鉛衝突において、バックグラウンド粒子がジェット 内のクォーク (グルーオン) ジェットの割合に与える影 実験が予定されている。LHC での実験プロジェクトで 響は運動量閾値 (pT > 1.0GeV/c) において 5 %未満で √ あった。図は sNN = 5.5TeV の鉛-鉛衝突における識 ある ALICE 実験は重イオン衝突実験による QGP 物性 別後のジェット内のクォークジェットの割合を示したも 探索を目的にしている。ALICE 実験では、RHIC 加速 のである。(実線:識別無し (εq = 1) , 星:εq = 0.4) こ 器を用いた実験で困難であった、高エネルギージェット れより、Likelihood 法を用いたジェットの識別において をプローブとした QGP 中でのパートンのエネルギー損 クォーク (グルーオン) ジェット識別能率を操作すること 失機構の解明が期待される。 で、ジェット内のクォークジェット/グルーオンジェット パートンが QGP 中を通過する際のエネルギー損失は 比を変化させることが可能であることがわかった。この パートン種と QGP 中での通過距離の関数として記述で 方法は「QGP 中でのパートンの通過距離の推定」、 「パー きると考えられている。それゆえ、ジェットをプローブ トンのエネルギー損失の測定」と併せて用いることによ とした QGP 物性理解の際、 「QGP 中でのパートンの通 り、クォークとグルーオンの QGP 中でのエネルギー損 過距離の推定」、「パートンのエネルギー損失の測定」、 失機構の解明のためのツールに成りうる。 「パートン種の同定」が非常に重要となる。 HIJING,Q-PYTHIA(鉛-鉛衝突) を用いたシミュレー ションにより、クォークジェット/グルーオンジェット 識別能力の評価を行った。Q-PYTHIA におけるパー トンのエネルギー損失の強さを表すモデルパラメー タ : Transport coefficient には、hq̂i = 50GeV /fm を使 2 用した。 Quark-Jet fraction 本 研 究 で は 、PYTHIA( 陽 子-陽 子 衝 突 )及 び 1 0.8 0.7 0.6 0.5 クォークジェット/グルーオンジェットの識別には、両 0.4 ジェットのジェット内粒子分布の違いを入力とした Like- 0.3 lihood 法を用い、クォーク (グルーオン) ジェット識別 能率 : εq (εg ) を要求したときの、識別後のジェット内の クォーク (グルーオン) ジェットの割合を計算した。 その結果、陽子-陽子衝突において、εq : 1.0 → 0.4 におけるジェット内のクォークジェットの増加率 35 %、 εq = 0.4 εq = 0.6 εq = 0.8 without trigger 0.9 0.2 0.1 0 0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 jet 200 ET
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