解答例

レポート課題(5) 解答例 (2015/06/11 出題)
2電子からなるヘリウム原子について以下の問に答えよ。
(1) 下図に示すヘリウム原子のハミルトニアンを書け。使用する物理記号は必要に応じて定義せよ。

r12
e電子

r1
e電子

r2
2e+
原子核
ハミルトニアンは以下のとおりである。
H 
2 2
2e2
2 2
2e2
e2
1 







2
2m
4 0 r1 2m
4 0 r2 4 0 r12
ここで、m は電子質量、e は電気素量、0 は真空の誘電率である。なお、原子核の運動に関係する
小さな効果は無視している(つまり、原子核は電子の影響で動いたりしない)
。原子核まで含める
と、3体系であるので換算質量は教科書に書かれている形とは異なるため。詳細は省略。
(2) 基底状態を考える。2個の電子が入るべき軌道を分光学的記号(例えば、3p 軌道)で示せ。
基底状態では、2個の電子は(1s)軌道に入る。
(3) 基底状態のスピン波動関数はスピン1重項である。スピン演算子 Ŝ z の固有値がそれぞれ  / 2 、
  / 2 の規格化された固有関数を  i   ( i ) ,  i   ( i ) とすると、スピン1重項の2電子波動
関数はどう書けるか。なお、  はスピン変数である。
 (1,  2 ) 
1
 (1 ) ( 2 )   (1 ) ( 2 )
2
(4) 電子-電子間の相互作用を無視した場合、2電子系のエネルギーは水素様原子(中心の原子核
の電荷は+Ze)のエネルギーの和で近似できることを示せ。
電子-電子間の相互作用を無視した場合のハミルトニアンは
2 2
2e2
2 2
2e2
H 
1 

2 
 H1  H 2
2m
4 0r1 2m
4 0r2



H 22 (r2 )  E22 (r2 )
ここで1電子からなる水素様原子の波動関数  (r ) は次式を満足する。


H11 (r1 )  E11 (r1 )
 


ここで、2電子系の波動関数が u(r1, r2 )  1 (r1 )2 (r2 ) と書けるとすると、シュレーディンガー方程
式は次式で与えられ、
( H1  H 2 )u(r1, r2 )  Eu (r1, r2 )
その固有値 E は
E  E1  E2
となり、2電子系のエネルギーは水素様原子のエネルギーの和で近似できる。
(6) 水素様原子のエネルギー固有値が次式で書けるとした場合、(5)の条件下のヘリウム原子の基
底状態エネルギーを計算せよ。
(日置 p.93,94 で k=Z とおいたことに相当)
En  
13.6  Z 2
[eV]
n2
(5)より、2電子系のエネルギーは水素様原子のエネルギーの和で近似できるので、
E  E1  E1  2 E1  
13.6  22
 2  109 [eV]
12
なお、実験値からは基底状態のエネルギーは -78.62 eV である。上記の近似値との差は、電子―
電子相互作用((1)のハミルトニアンの最後の項)を無視したことに起因する。