大阪労働局 - 厚生労働省

大阪労働局
Press Release
岸和田労働基準監督署発表
平 成 28年 3月 8日
労働安全衛生法違反の疑いで書類送検
工事用設備の配置計画の作成義務違反
及び墜落による危険防止措置義務違反
平成28年3月8日、岸和田労働基準監督署(署長樋上泰司)は、下記のとおり株式会
社藤木組外3名を労働安全衛生法違反の疑いで、大阪地方検察庁に書類送検した。
記
1
被疑者
ふじ き ぐ み
(1)株式会社藤木組
本社所在地
大阪府堺市西区北条町
事業内容
建設業
(2)株式会社藤木組 現場代理人A
しんこうけんせつ
(3)株式会社新興建設
本社所在地
大阪府大阪市東住吉区矢田
事業内容
建設業
(4)株式会社新興建設 職長B
2 違反条文等
(1)株式会社藤木組及び被疑者 A について
労働安全衛生法違反
同法第30条第1項第5号
労働安全衛生規則第638条の3
同法第120条第1号(罰則)
同法第122条第1号(両罰)
(2)株式会社新興建設及び被疑者 B について
労働安全衛生法違反
同法第20条第1項
労働安全衛生規則第563条第1項第3号
同法第27条第1項
同法第119条第1号(罰則)
同法第122条
(両罰)
労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(以
下 、 労 働 者 派 遣 法 と す る 。 ) 第 45 条 第 3 項
3
事件の概要
第一 被疑者Aは、被疑会社株式会社藤木組が大阪府泉南郡岬町内で元請として施工管理を行う
公立小学校の耐震補強工事現場において、同工事の安全管理を行う者であるが、被疑者Aは、
平成27年7月24日、同工事の作業に関して、その労働者及び関係請負人の労働者に工
事用の設備を使用させるに当たり、同設備の配置に関する計画を作成せず、もって特定元方
事業者としてその関係請負人および労働者の同設備による危険を防止すため必要な措置を
講じなかったものである。
第二 被疑者Bは、上記工事のうち解体工事を請け負う1次下請である被疑会社株式会社新興建
設の職長として、同工事の作業に関して、その労働者及び派遣労働者に係る安全を管理する
者であるが、同小学校の校舎2階に設置した足場の作業に関して、同足場が地上から2メー
トル以上の高さに設置されるものであるから、墜落により労働者に危険をおよぼすおそれが
ある箇所に手すり及び中桟等の足場用墜落防止措置を設けなければいけないのに、当該設備
を設けず、もって機械、器具その他設備による危険を防止するため必要な措置を講じなかっ
たものである。
4 参考事項
(1) 平成27年7月24日、上記工事現場において、校舎2階のベランダにおける解
体作業に際し、被疑会社新興建設に派遣された派遣労働者Cが、手すり及び中桟等
の足場用墜落防止措置が設けられていない足場から、約5.7メートル下の地面に
墜落するという労働災害が発生した。
(2) 労働安全衛生法では、特定元方事業者(元請業者)はその労働者及び関係請負人
の労働者による労働災害を防止するため、作業場所における工事用設備の配置に関
する計画を作成することが義務付けられている。
上記(1)の災害が発生した当時、派遣労働者Cが使用していた足場に関して、
被疑者Aは作業場所における配置に関する計画を作成していなかった。
(3) 労働安全衛生法では、足場における高さが2メートル以上の作業場所で墜落によ
り労働者に危険を及ぼすおそれのある箇所に、手すり及び中桟等足場用墜落防止設
備を設ける義務があるが、被疑者Bは派遣労働者Cに当該設備を使用させるに当た
り、必要な足場用墜落防止設備を全く設けていなかった。
(4) 適用法条文等は、別紙1のとおり。
(5) 派遣労働者Cと各被疑者及びCを雇用する株式会社Dとの関係は別紙2のとおり
であり、株式会社Dは建設業を営むものであるが、Cらを本件労働災害発生現場で
就労させるに当たり、株式会社新興建設と株式会社Dは書面上は請負契約を締結し
ていたものの、被疑者Bが雇用契約のない派遣労働者Cに直接作業の指揮命令を行
う労働者派遣(労働者派遣法第2条第1号)の状態にあった。このため、労働安全
衛生法の一部規定に関して派遣先事業者に措置義務を課す旨規定した労働者派遣法
を適用し、派遣先である被疑会社を送致した。
別紙1
適用条文
労働安全衛生法
(事 業 者 の講 ずべき措 置 等 )
第 20条
事 業 者 は、次 の危 険 を防 止 するため必 要 な措 置 を講 じなければならない。
一 機 械 、器 具 その他 の設 備 (以 下 「機 械 等 」という。)による危 険
(労 働 者 の遵 守 事 項 )
第 27条
第 二 十 条 から 第 二 十 五 条 ま で及 び第 二 十 五 条 の 二 第 一 項 の 規 定 に よ り事 業 者 が 講
ずべき措 置 及 び前 条 の規 定 により労 働 者 が守 らなければならない事 項 は、厚 生 労 働 省 令
で定 める。
(特 定 元 方 事 業 者 等 の講 ずべき措 置 )
第 30条
特 定 元 方 事 業 者 は、その労 働 者 及 び関 係 請 負 人 の労 働 者 の作 業 が同 一 の場 所 にお
いて 行 われ る こと に よ つ て 生 ずる 労 働 災 害 を 防 止 する ため 、 次 の 事 項 に 関 する 必 要 な 措
置 を講 じなければならない。
五
仕 事 を行 う場 所 が 仕 事 ごとに異 なることを常 態 とする業 種 で、厚 生 労 働 省 令 で定 め
るものに属 する事 業 を行 う特 定 元 方 事 業 者 にあつては、仕 事 の 工 程 に 関 する計 画 及
び作 業 場 所 に おける機 械 、設 備 等 の 配 置 に 関 する計 画 を作 成 するととも に 、当 該 機
械 、設 備 等 を使 用 する作 業 に関 し関 係 請 負 人 がこの法 律 又 はこれに基 づく命 令 の
規 定 に基 づき講 ずべき措 置 についての指 導 を行 うこと。
(罰 則 )
第 119条
第 120条
(罰 則 )
次 の各 号 のいずれかに該 当 する者 は、六 月 以 下 の懲 役 又 は五 十 万 円 以 下 の罰 金 に
処 する。
一
第 十 四 条 、第 二 十 条 から第 二 十 五 条 まで、第 二 十 五 条 の二 第 一 項 、第 三 十 条
の 三 第 一 項 若 しく は第 四 項 、 第 三 十 一 条 第 一 項 、第 三 十 一 条 の 二 、 第 三 十 三 条
第 一 項 若 しくは第 二 項 、第 三 十 四 条 、第 三 十 五 条 、第 三 十 八 条 第 一 項 、第 四 十
条 第 一 項 、第 四 十 二 条 、第 四 十 三 条 、第 四 十 四 条 第 六 項 、第 四 十 四 条 の二 第 七
項 、第 五 十 六 条 第 三 項 若 しく は 第 四 項 、 第 五 十 七 条 の 三 第 五 項 、 第 五 十 七 条 の
四 第 五 項 、第 五 十 九 条 第 三 項 、第 六 十 一 条 第 一 項 、第 六 十 五 条 第 一 項 、第 六 十
五 条 の 四 、 第 六 十 八 条 、 第 八 十 九 条 第 五 項 ( 第 八 十 九 条 の 二 第 二 項 に おいて準
用 する場 合 を含 む。)、第 九 十 七 条 第 二 項 、第 百 四 条 又 は第 百 八 条 の二 第 四 項 の
規 定 に違 反 した者
次 の各 号 のいずれかに該 当 する者 は、五 十 万 円 以 下 の罰 金 に処 する。
一
第 十 条 第 一 項 、第 十 一 条 第 一 項 、第 十 二 条 第 一 項 、第 十 三 条 第 一 項 、第 十 五
条 第 一 項 、 第 三 項 若 し くは 第 四 項 、 第 十 五 条 の 二 第 一 項 、 第 十 六 条 第 一 項 、 第
十 七 条 第 一 項 、第 十 八 条 第 一 項 、第 二 十 五 条 の二 第 二 項 (第 三 十 条 の三 第 五 項
において準 用 する場 合 を含 む。)、第 二 十 六 条 、第 三 十 条 第 一 項 若 しくは第 四 項 、
第 三 十 条 の 二 第 一 項 若 し くは 第 四 項 、 第 三 十 二 条 第 一 項 か ら 第 六 項 ま で 、 第 三
十 三 条 第 三 項 、第 四 十 条 第 二 項 、第 四 十 四 条 第 五 項 、第 四 十 四 条 の二 第 六 項 、
第 四 十 五 条 第 一 項 若 しくは第 二 項 、第 五 十 七 条 の三 第 一 項 、第 五 十 九 条 第 一 項
(同 条 第 二 項 において準 用 する場 合 を含 む。)、第 六 十 一 条 第 二 項 、第 六 十 六 条
第 一 項 か ら第 三 項 ま で、 第 六 十 六 条 の 三 、第 六 十 六 条 の 六 、第 八 十 七 条 第 六 項 、
第 八 十 八 条 第 一 項 から第 四 項 まで、第 百 一 条 第 一 項 又 は第 百 三 条 第 一 項 の規
定 に違 反 した者
第 122条
法 人 の 代 表 者 又 は法 人 若 しくは人 の代 理 人 、使 用 人 その 他 の 従 業 者 が 、その 法 人 又
は人 の業 務 に関 して、第 百 十 六 条 、第 百 十 七 条 、第 百 十 九 条 又 は第 百 二 十 条 の違 反
行 為 をしたときは、行 為 者 を罰 するほか、その 法 人 又 は人 に 対 しても、各 本 条 の 罰 金 刑 を
科 する。
労働安全衛生規則
(作 業 床 )
第 563条 事 業 者 は 、足 場 ( 一 側 足 場 を 除 く 。 第 三 号 に おいて 同 じ 。)に お ける 高 さ 二 メート ル以 上
の作 業 場 所 には、次 に定 めるところにより、作 業 床 を設 けなければならない。
三
墜 落 により労 働 者 に危 険 を及 ぼすおそれのある箇 所 には、次 に掲 げる足 場 の種
類 に応 じて、それぞれ次 に掲 げる設 備 (丈 夫 な構 造 の設 備 であつて、たわみが生 ず
るおそれがなく、かつ、著 しい損 傷 、変 形 又 は腐 食 がないものに限 る。以 下 「足 場 用
墜 落 防 止 設 備 」という。)を設 けること。
ロ わく組 足 場 以 外 の足 場 手 すり等 及 び中 桟 等
(計 画 の作 成 )
第 638条 の3
法 第 三 十 条 第 一 項 第 五 号 に規 定 する特 定 元 方 事 業 者 は、同 号 の計 画 の作 成 に
ついては、工 程 表 等 の当 該 仕 事 の工 程 に関 する計 画 並 びに当 該 作 業 場 所 における
主 要 な機 械 、設 備 及 び作 業 用 の仮 設 の建 設 物 の配 置 に関 する計 画 を作 成 しなけれ
ばならない。
労 働 者 派 遣 事 業 の適 正 な運 営 の確 保 及 び派 遣 労 働 者 の保 護 等 に関 する法 律
(労 働 安 全 衛 生 法 の適 用 に関 する特 例 等 )
第 45条
3
労 働 者 が その 事 業 に お ける 派 遣 就 業 の ため に 派 遣 さ れ て いる 派 遣 先 の 事 業 に 関 し て は 、 当
該 派 遣 先 の 事 業 を行 う 者 を当 該 派 遣 中 の 労 働 者 を使 用 する事 業 者 と、 当 該 派 遣 中 の 労 働 者
を当 該 派 遣 先 の事 業 を行 う者 に使 用 される労 働 者 とみなして、労 働 安 全 衛 生 法 第 十 一 条 、第
十 四 条 から第 十 五 条 の三 まで、第 十 七 条 、第 二 十 条 から第 二 十 七 条 まで、第 二 十 八 条 の二 か
ら第 三 十 条 の三 まで、第 三 十 一 条 の三 、第 三 十 六 条 (同 法 第 三 十 条 第 一 項 及 び第 四 項 、
第 三 十 条 の二 第 一 項 及 び第 四 項 並 びに第 三 十 条 の三 第 一 項 及 び第 四 項 の規 定 に係 る部 分
に限 る。)、第 四 十 五 条 (第 二 項 を除 く。)、第 五 十 七 条 の三 から第 五 十 七 条 の五 まで、第 五 十
九 条 第 三 項 、第 六 十 条 、第 六 十 一 条 第 一 項 、 第 六 十 五 条 から第 六 十 五 条 の 四 まで、第 六 十
六 条 第 二 項 前 段 及 び 後 段 ( 派 遣 先 の 事 業 を 行 う 者 が 同 項 後 段 の 政 令 で 定 める 業 務 に 従 事 さ
せたことのある労 働 者 (派 遣 中 の労 働 者 を含 む。)に係 る部 分 に限 る。以 下 この条 において同
じ。)、 第 三 項 、第 四 項 ( 同 法 第 六 十 六 条 第 二 項 前 段 及 び後 段 並 びに 第 三 項 の 規 定 に 係 る部
分 に限 る。以 下 この条 に おいて同 じ。)並 びに 第 五 項 (同 法 第 六 十 六 条 第 二 項 前 段 及 び後 段 、
第 三 項 並 びに第 四 項 の 規 定 に係 る部 分 に限 る。以 下 この条 において同 じ。)、第 六 十 六 条 の三
(同 法 第 六 十 六 条 第 二 項 前 段 及 び後 段 、第 三 項 、第 四 項 並 びに 第 五 項 の 規 定 に 係 る部 分 に
限 る。以 下 この 条 に おいて同 じ。)、 第 六 十 六 条 の 四 、第 六 十 八 条 、 第 六 十 八 条 の 二 、第 七 十
一 条 の二 、第 九 章 第 一 節 並 びに第 八 十 八 条 から第 八 十 九 条 の二 までの規 定 並 びに当 該 規
定 に 基 づ く 命 令 の 規 定 ( これ ら の 規 定 に 係 る 罰 則 を 含 む 。 ) を 適 用 す る 。 この 場 合 に おい て 、 同
法 第 二 十 九 条 第 一 項 中 「この法 律 又 はこれに基 づく命 令 の規 定 」とあるのは「この法 律 若 しくは
これ に 基 づく命 令 の 規 定 (労 働 者 派 遣 事 業 の 適 正 な 運 営 の 確 保 及 び派 遣 労 働 者 の 保 護 等 に
関 する 法 律 ( 以 下 「 労 働 者 派 遣 法 」とい う。 ) 第 四 十 五 条 の 規 定 に よ り 適 用 され る 場 合 を 含 む 。 )
又 は同 条 第 十 項 の規 定 若 しくは同 項 の規 定 に基 づく命 令 の規 定 」と、同 条 第 二 項 中 「この法 律
又 はこれに基 づく命 令 の規 定 」とあるのは「この法 律 若 しくはこれに基 づく命 令 の規 定 (労 働 者 派
遣 法 第 四 十 五 条 の規 定 により適 用 される場 合 を含 む。)又 は同 条 第 十 項 の規 定 若 しくは同 項 の
規 定 に基 づく命 令 の規 定 」と、同 法 第 三 十 条 第 一 項 第 五 号 及 び第 八 十 八 条 第 六 項 中 「この法
律 又 はこれに 基 づく命 令 の規 定 」とあるの は「この 法 律 又 はこれに 基 づく命 令 の 規 定 (労 働 者 派
遣 法 第 四 十 五 条 の 規 定 に より 適 用 され る 場 合 を 含 む 。)」と 、 同 法 第 六 十 六 条 の 四 中 「 第 六 十
六 条 第 一 項 から第 四 項 まで若 しくは第 五 項 ただし書 又 は第 六 十 六 条 の二 」とあるのは「第 六 十
六 条 第 二 項 前 段 若 しくは後 段 (派 遣 先 の事 業 を行 う者 が同 項 後 段 の政 令 で定 める業 務 に従 事
させたことのある労 働 者 (労 働 者 派 遣 法 第 四 十 四 条 第 一 項 に規 定 する派 遣 中 の労 働 者 を含
む。 )に 係 る 部 分 に 限 る 。 以 下 この 条 に お いて 同 じ 。) 、 第 三 項 、 第 四 項 ( 第 六 十 六 条 第 二 項 前
段 及 び後 段 並 びに第 三 項 の規 定 に係 る部 分 に限 る。以 下 この条 において同 じ。)又 は第 五 項 た
だし書 (第 六 十 六 条 第 二 項 前 段 及 び後 段 、第 三 項 並 びに第 四 項 の規 定 に係 る部 分 に限 る。)」
とする。
別紙2
表1;請負系統図
元
請; 株 式 会 社 藤 木 組
(特定元方事業者)
現 場 代 理 人; 被 疑 者 A
1 次 下 請; 株 式 会 社 新 興 建 設
職
長; 被 疑 者 B
2 次 下 請; 株 式 会 社 D
被 災 者; 派 遣 労 働 者 C
※
株式会社新興建設と株式会社Dは書面上は請負契約を締結しており、株
式会社Dは本件労働災害発生現場には2次下請事業場として入場してい
た。
表2;指揮命令関係図
株式会社新興建設
(派遣先)
被疑者B
労働者派遣契約
(書面上は請負契約)
指揮命令関係
株式会社D
(派遣元)
雇用契約
被災者(派遣労働者C)
※
被疑者Bは雇用契約のない派遣労働者Cに直接作業の命令を行ってお
り、指揮命令関係にあった。
このため、株式会社新興建設と株式会社Dは書面上は上記表1のとおり
請負契約を締結していたものであるが、実質的には労働者派遣契約であっ
たと判断した。