産業競争力懇談会(COCN)2016年度推進テーマ候補 活動企画書

産業競争力懇談会(COCN)2016年度推進テーマ候補
活動企画書(scope of work)
【候補テーマのタイトル】
インフラ維持管理アセットマネジメント
【提案企業・大学・法人】
鹿島建設株式会社
【提案内容】
1.提案の背景・理由
地方創生やその経済基盤を維持するための課題の一つは、地方自治体、特に市町村のインフラの維
持である。高度成長期に大量に建設された社会インフラの高齢化に伴い、維持管理や長寿命化に向け
た取組みが進められている。しかし、地方自治体においては維持管理の PDCA サイクルを回す具体的
な取組みはまだ十分とは言えない。産業競争力懇談会(COCN)は 2013 年度推進テーマ「インフラ長
寿命化技術」において、財政難や技術者不足の折、データに基づくライフサイクルコスト(LCC)の
把握、ニーズとシーズをマッチングさせる仕組みの構築、地方自治体によるアセットマネジメントの
実践など、様々な課題が山積していることを指摘した。現在活動中の SIP「インフラ維持管理・更新・
マネジメント技術」においても、地方自治体のインフラ維持管理の具体的な絵姿については模索中の
ように見受けられる。この状態が続くと、地方のインフラ維持が難しく、安心・安全な生活に支障を
きたす。この課題を解決するためには、技術による解決の外に、維持管理時代にふさわしい国のすが
た、制度、仕組みを模索し、インフラ維持管理のビジネス環境を整備することが重要である。
2.産業競争力強化上の目標・効果
(1) アセットマネジメントの推進
地方自治体が維持管理や長寿命化に向けた本格的な取組みを行うためには、地方自治体が継続的に
実践できるアセットマネジメントを展開する仕組みが必要であり、この具体的な仕組みの提示を成果
目標とする。
(2) 民間のビジネス環境の整備
国交省は道路や港湾のインフラ維持管理に関する予算確保を進めているが、地方には十分行き亘っ
ていない。地方の維持管理予算を十分に確保した上で民間の維持管理市場への参入を促進させるため、
民間がこの分野で十分に活躍できる仕組みについて検討し、その課題を提示する。
3.検討内容と想定される課題(政策、技術・システム開発、規制改革、人材育成など)
(1) 自治体ヒアリング等による課題とニーズの抽出
2015 年度の「インフラ長寿命化研究会」活動(後掲)で実施している地方自治体へのヒアリングやコ
ンサルタントの意見聴取を発展させ、地方自治体の実務担当者が困っていること、具体的には維持管
理費用、管理方法、技術レベル、人材不足等に関してニーズを明確化する。
このニーズに対し、包括発注などの新しい仕組みの提案、長寿命化技術の採用、IoT の活用など、
提供可能な対策を抽出し、そのコストを試算して現状からのコスト削減にどれだけ貢献するか定量的
にケーススタディする。また、有効性が検証された対策をインフラ長寿命化に資するアセットマネジ
メントのメニューとして例示する。
(2) コスト以外の観点からの評価軸の検討
維持管理の PDCA を確実に回すことで、従前より維持管理費が増加する可能性がある。そこでコス
ト以外の切り口として、例えば、利便性の向上(維持管理の精度の向上、利用者の満足度の向上など)、
地域の活性化(地域産業の活性、地域における新たなビジネスモデルの創生、地域への投資誘発、社
会インフラに対する安心・信頼の向上など)による評価軸を検討する。
4.想定される解決策と官民の分担
前項(1), (2)の結果を、実際にヒアリングした地方自治体の事例に当てはめ、現実に適用可能かど
うか検証しながら、地方のアセットマネジメントのあり方を短期的、中長期的視点で検討し課題を提
起する。
大手企業には自治体へのアドバイス(上流ビジネス)、技術伝承や人材不足解消のための教育支援、
技術力・マネジメント力に期待がある。一方、地元企業は技術を継承し、広域連携を進め、地域の維
持や防災力の強化に期待があり,両者の共存・共助が解決策と考える。モデル的な自治体を選び、こ
のような役割分担の下でビジネス環境を検討し、地元と大手が共存し得る提案を行う。
また、上記の評価軸が国民的合意を得てインフラの継続保有、ダウンサイジング、その他に活用さ
れるために、中長期的な視点で仕組み・制度を含め課題の所在を検討し、官側にこれらを提起する(例
えば、新たな費用便益評価の項目に追加提案)
。
5.テーマ活動の想定活動期間
当面は 1 年間、課題の深掘りが必要であれは 2017 年度まで延長の可能性を視野に入れる。
6.出口目標と提言実現の推進主体案
SIP「インフラ維持管理・更新・マネジメント技術」と連携して、下記「インフラ長寿命化研究会」
の活動を継承し、国交省のインフラメンテナンス国民会議、道路メンテナンス会議に働きかけ、課題
の掘り下げを図る(添付資料を参照)。
7.推進体制案
2013 年度推進プロジェクト「インフラ長寿命化技術」メンバーを中心として、2015 年度に研究会
活動「インフラ長寿命化研究会」(主なメンバー:鹿島、清水、新日鐵住金、富士通、東レ、NEC など)
をスタートさせた。2016 年度はこれらの目標を継承し、COCN 推進プロジェクトとして具体的な提言
活動につなげる。
・リーダー及び事務局: 東京工業大学大学院 岩波光保教授、鹿島建設株式会社
・想定されるメンバー: 「インフラ長寿命化研究会」メンバーに加え、賛同する企業を追加
8.その他
・添付資料「COCN 2016 年度推進テーマの位置付け」
〔添付資料〕
COCN 2016 年度推進テーマの位置付け