東日本大震災から 5 年目に思う「原発問題」

2016年3月7日
古賀茂明「改革はするが戦争はしない」フォーラム 4
Vol.031 から
動画版(2016 年 2 月 26 日収録・配信)
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●東日本大震災から 5 年目に思う「原発問題」
Gbiz:
「古賀茂明
改革はするが戦争はしないフォーラム 4」、本日も、よろしくお願いいた
します。
古賀:
今日は何から行くかというと、きのう、ずいぶん大きな話題になって今日の新聞でも取
り上げられていますけれども 3.11 が近づいた、この時期に東京電力が炉心溶融、メル
トダウンですね。これが実は 3 日ぐらいたったら、わかっていたんだけど、それを言わ
なかったんだ。何で言わなかったかというと、何で、わからなかったかというと、そう
いう定義がなかったからですと言っていたんだけど、きのう、実はあったんです(笑)
。
それが、あったっていうことに気づいていれば、もう 3 日後ぐらいには炉心溶融、メル
トダウンって発表できたんだけど、実際には 2 カ月ぐらいあとになってしまいました。
ごめんなさいという発表をしました。
また、うそをついてるなというふうに僕は感じるんですよ。そもそも、あの事故が起き
たあと、専門家の間では、その次の日ぐらいから、これは相当やばいよ。メルトダウン
行っているんじゃないの。もう始まっているんじゃないのという声は非常に強かったん
ですね。それは、もちろん経済産業省の中でも東京電力はもちろん専門家はいるし、経
産省の中にも原子力の専門家っていうのがいるんで、その人たちは、これは、まずい。
もう、そうなっているんじゃないかということを言っていたわけですよ。
3 月 11 日に事故が起きて、もう 12 日の午後の記者会見で中村幸一郎っていう、僕の
ちょっと後輩なんですけど、当時、資源エネルギー庁の審議官だったと思いますけど、
その審議官が記者会見で炉心溶融の可能性があるということをはっきり言っちゃった
んですね。でも、そのときは、みんな炉心溶融と言われても何なのかな。でも何か大変
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なことなんだろうなとは思うけれども、よくわからないままだったんですけど、何と、
その直後に官邸のほうから、そういうことを勝手に言うな。勝手に言うなっていうか、
今後、経産省で記者会見して何か言うときには必ず、まず官邸を通してからにしろ。要
するに知らないうちに勝手に言うことはまかりならんというのは結局、炉心溶融と勝手
に言うなと。こういう話ですね。それを受けて、その翌日には中村審議官は更迭されち
ゃうんですよ。
だから、あのころ毎日毎日、ずっと資源エネルギー庁の記者会見の模様っていうのがテ
レビで流れていましたよね。最初、中村さんがやっていたんですけど、彼が、すぐ代わ
って次に確か根井(寿規)さんっていう、ちょっと先輩にあたる人が、やっぱり審議官
だったかな。担当になったんですね。やったんだけど、これは、ちょっと木で鼻をくく
ったようなしゃべり方をする人なんで、これは、まずいというので、それで、またすぐ
交代になって、それで出てきたのが西山英彦っていう僕は経産省で同期なんですけど、
その人が出てきて、彼は非常に対応がうまいんで本当に真面目な人間なんで、それが、
すごく伝わってくるような記者会見で、なんとなく彼が言うのは本当かなというふうに、
みんな、だまされちゃったということですよ(笑)。
ちょっと、ここからは半分冗談ですけど、西山さんは、そのあと、女性問題、スキャン
ダルで結局、また彼自身も更迭されちゃうわけですけど、言ってみれば最初に中村審議
官が本当のことを言っちゃった。ところが、それを隠そうとしたということによって西
山君の人生が変わっちゃったというね。やっぱりうそをついちゃいけないって、他の人
に(笑)
。
Gbiz:
そこから、つながって(笑)。
古賀:
僕は、ちょっとあとに中村さんと話をしたことがあって、あのとき、やっぱり圧力があ
って更迭されたんだろうという話をしたら、彼は、それは立場上、あんまり言えないん
ですけど、メルトダウンというときには、やっぱりいろんな人に相談して言ったんじゃ
ないのって言ったら、彼は、いや、そういうことはもちろん、みんな知っていた上で自
分も話しているんだけど、でも、そのときの感覚は、いや、こういう状況になっている
んだから、メルトダウンだろうってみんなが思っていた。だから終わったあとに問題に
なっているって言われたときに何が問題になっているのかなっていうふうに思ったっ
ていうんですよ。
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それくらい当たり前のことで、当たり前のことを当たり前に言ったんで、何か、しゃべ
り方が悪かったのかなとか、途中で、にやけたりしたのかなとか、全然、関係ないこと
で、何が問題になったんだろうっていうふうに最初は思った。あとで、えっ、炉心溶融
っていうのがいけなかったんだっていうことだったそうです。
Gbiz:
でも、それくらい当たり前の。
古賀:
うん。だから専門家であれば、当然、そうだと。これは実は、まだ何か、うそをついて
いるんじゃないかなと思ったっていう理由は、なぜマニュアルに書いてあったのに見落
としたのかということを問い詰められたわけですね。そうしたら東電が何と言ったかと
いうと、それを聞かれたときにマニュアルにありませんでしたという答をした人は、質
問を受けた時点のマニュアルで答えていたんです。その時点というのは正確に、いつか
はわからないんですけど、その時点のマニュアルっていうのは実は事故当時のマニュア
ルとは違うものだったんです。事故を受けてマニュアルをつくりかえたんです。そのマ
ニュアルには実は炉心溶融という言葉がなくなっていたんですっていう説明なんです
よ。
今回はけっこう新聞記者も、わかりましたっていうふうにはならなくて、いや、でも変
えたときには変えたんだから前のものに炉心溶融って書いてあったけど、それを落とし
ますということをちゃんと意識してやったんじゃないですかと。普通、そう思いますよ
ね。だから、そのときにはマニュアルには炉心溶融があったっていうふうに気づいても
いいじゃないですかと言ったら、これまた東電の説明はいや、いや、そのときはマニュ
アルを改定するという意識はなかったんですよ。
要するに事故があったんだから一からつくり直そうというので、まったくさらから新し
いものをつくったという意識なので、僕はちょっと言葉を足して、彼らの気持ちもくん
で、ちょっと説明してるんですけど、要するに、いや、こんなマニュアルなんか駄目だ
ったというので、心を入れ替えてゼロからつくり直そうというので白紙に書いちゃった
ので、その前に何か書いてあったかということを詳しく見なかったんですっていう説明
なんですよ。
僕は、これは、すごいうそだと思うんですね。何でかっていうと僕らは電力会社の人と
つきあっていて、よくわかるんですけど電力会社の人っていうのは、役人以上に役人な
んですよ。ものすごく形式にこだわるし、自分の独断で何かをするなんていうことは絶
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対ないし、石橋をたたきながらっていう人たちで、したがって例えば過去に何かがあっ
たなんていう経緯っていうのは常に調べながら、それで今度、新しいことをやりますっ
ていうときには必ず過去、こうやっていたのに、それとの整合性はどうなんだとかいう
のをものすごく慎重に慎重に検討しながらやるんですね。そんなまっさらなところに自
分で自由に絵を描いてみるなんていう発想は起きないですよ、絶対ね。
●高浜原発「水漏れ」を許していいのか?
Gbiz:
そうですよね。ゼロからつくるとしても前のものを見ますよね。
古賀:
まっさらにつくりましたと言っても、必ず新旧対照表というのをつくるんですよ。前は、
これが書いてあったけど、これは書いていないとかいうのは一目瞭然になるように整理
するというのが常識なんですね。それはたぶん役所、経産省とか資源エネルギー庁とか
にも説明しているはずなので、そのときに当然、比較っていうのは説明しているはずな
んですね。
だから僕は、これは東電もうそをついているけど、たぶん経産省も、あるいはもしかす
ると原子力規制委員会でさえ知っている人がいたんじゃないかなというふうに思うん
ですね。法制局の文書で、この間、集団的自衛権を閣議決定したときの関連文書がない
っていう話が去年、毎日新聞なんか、かなり大きく取り上げてやっていたんですけど、
それが最近になって実はあったっていうのがわかったわけですよ。これは朝日新聞が明
らかにしたんですけれども、これも僕は去年、ないって言ったときに、ないからけしか
らん。ワーッて批判していたんですけど、僕はそれを見た瞬間に……。
Gbiz:
あるのを。
古賀:
いや、ないのが、けしからんじゃなくて、あるのに隠しているのが、けしからんという
ふうに、このメルマガでも確か書いたと思うんですけど、官僚っていうのは何を考えて、
どういう行動しているのかというのを知っている人だったら必ずわかることだなと思
います。
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Gbiz:
見えちゃう。わかるんですね(笑)
。
古賀:
ですから、これはまだまだ実は、これで一種の免罪符で、もう謝っちゃいましたという
ことで、実は見落としていました。大変なミスでした。ごめんなさい。心から謝ります
と言えば、もう、それで終わりっていうふうに思っているのかもしれないんですけど、
これは、そうじゃなくて、もっともっと突き詰めていかないと、結局、東京電力の隠蔽
体質というのが今でも変わっていないということになるんです。
Gbiz:
変わらないんですね、何年たっても。
古賀:
実は新潟県の泉田知事が、これは何で、そういうことになったのか。炉心溶融も 2 カ月
も認めなかった。その原因もわかりませんなんて言っている。そんなところに再稼働な
んか認められるかって、ものすごく厳しく言っていたので、しょうがなくて東電は調べ
ます、調べますって言って時間稼ぎしていたんだけど、もう泉田知事がまったく態度を
変えなくて、そういうところをちゃんとやらないんだったら絶対、認めないと言ってい
るので、今、柏崎刈羽の原発再稼働は東電にとっては悲願というか、それをやらないと
経営上も非常に苦しいと。
一方で原子力規制委員会も、これを動かしたいという感じになってきていて、この間も
活断層はないとかいうのを結論づけたりして、もう、これから動かすぞという段階に入
ってきたので、いよいよ、泉田知事の同意というのを見据えて今回、謝ったということ
だと思うんで、ちょっとここはしっかりやらなくちゃいけないし、泉田さんには、ここ
で、ああ、そうですかっていうことじゃなくて、もっともっと追及を続けてもらって、
実は、そこにうそを……。彼は元経産省の官僚なので、そういう裏側もよく知っていま
すから、彼はこんなことじゃ絶対納得しないんで、これからもちゃんと追求して、やっ
ぱりそういう隠蔽というのはやめてくれよということをしつこく言っていかなくちゃ
いけないなというふうに思いましたね。
それから、あと原発の関係が出たので、ついでに高浜原発ですね、関西電力の。3 号機
が先月、再稼働を始めて、今、4 号機が 26 日にも再稼働を始めますというふうにいわ
れているんですね。
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この間、ちょっと一瞬、出て、すごい小さなニュースに抑え込まれちゃったなっていう
感じなんですけど、1 つは 4 号機で再稼働を最終点検、チェックをやっているときに水
漏れが起きたというのが報道されたんですね。しかも、ただの水漏れじゃなくて放射能
のある水、汚染されている水が漏れたと。数十リットルなんですけど。これが、また不
思議なんですけど報告しなくちゃいけないレベルには達していなかったっていう話な
んですけど、えーっ、昔だったら、あれだけど、あれだけの事故が起きたあとに、規制
委員会がいろんな基準とかマニュアルとかを見直したあとでも、放射能漏れをしても報
告しなくてもいいのかと。これがまず最大の驚きでした、私は。
というのは、ほんのちょっとの放射能漏れだって、必ず報告して、その原因をしっかり
突き止めない限り、絶対動かしちゃいけませんよだとか、そういうことをやらなくちゃ
いけないのに、そうなっていないというのが 1 つと、それから、もう 1 つは結局、原
因を究明したら放射能汚染されている水が通っているパイプの継ぎ目のボルトが緩か
った。4 つボルトがあるうち、4 つとも、ちょっと緩かったんだけど、特に 1 つが、す
ごく緩くて、そこから漏れたらしいということがわかったので、もちろん、そこは締め
直すし、それと同じようなボルトを何十個か調べて、それが全部しっかり締まっている
ということをチェックして、すべて作業が完了したので 26 日は予定どおり動かします
と。こういうふうに言っているんですけど、これは僕は、えっ、そんなのでいいのと。
要するにボルトって原発の施設の中には何十というんじゃなくて何千だか何万だかあ
ると思うんですよ。これで、たまたま 1 個が緩くて水漏れが起きましたということなん
ですけど、そうしたら何万とかある中では、もうちょっと他にもあるんじゃないの。可
能性はありますよ。
だって別に同じような種類のとか、要するに同じ系統の中で同じような形状で同じ部品
を使っているボルトとかいうことなんでしょうけど、ボルトが緩かったっていうのはボ
ルトの形とか、ボルトの場所とかじゃなくて、要するに締めるやつが悪かったわけです
ね。締める人がちゃんとやっていなかったという話なんだから、それは設備とか施設と
かっていう問題じゃなくて人の問題ですから、人がやった作業っていうのは、すべて疑
って、もう一回、チェックするというのをやるべきだと思うんですよ。
でも、そうすると、すべて、もう一回、点検しろというと大変な時間もかかるし、労力
もかかるし、お金もかかる。再稼働は確実に遅れちゃうので、何か知らないけど、同じ
ようなものだけチェックしましたという何の根拠もないチェックで、これを、また規制
委員会が止めないっていうのが、まったく理解できないなと思うんですね。これは非常
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に今の原子力の安全規制というのが規制委員会がいかに動かすことに熱心にやってい
るのかっていうことを示す 1 つのお話だなというふうに思いましたね。
それから、もう 1 つ、ここ数日、にぎわせているのは高浜の 1 号機、2 号機ですね。こ
れが、もうすぐ 40 年になっちゃうと。みなさん、ご存知のとおり、原発は原則 40 年
で廃炉ですよということが決まっているわけですね、法律で。ただ絶対 40 年じゃなく
て、例外として特別に規制委員会が認めれば 20 年まで延長ができますと。こういう話
なんですよ。これは、もともと、この規制の話を民主党時代にやってるときから、この
40 年廃炉というのが大きな議論になっていて、当時、環境大臣、この問題を担当して
いた細野さんは何と言ったか。彼が要するに 20 年の例外というのを入れた人なんです
ね。僕は絶対入れるべきじゃないっていうふうに思っていたし、そう言ったんですけど、
彼は、無理やり 20 年を入れたわけですよ。
そのときの説明は、いや、いや、20 年延長っていうのは例外中の例外ですから、そん
なにないんですよという説明をしていたんですけど、そんなことは別に法律の中に例外
中の例外ですよと書いてもいないし、書いても例外中の例外といったって、これは例外
中の例外ですと言えば済むだけの話なので何の意味もないんですけど、要するに 20 年
延長の例外というのを入れたこと自体が非常に大きな問題なんですが、まさに、それを
利用して今回、例外ですよというのの第 1 号がこれから出てくる。
それの規制基準。一般的な規制基準には適合していますねというお墨付きが出て、これ
からパブリックコメントとか手続きがあるんですけど、大きなハードルをクリアしたと
いうことですね。40 年たつときにまでに延長の審査をクリアしなくちゃいけないって
いうことになって 7 月までに終わらせなくちゃいけないんですよ。
まだ、残りがあって、申請書を出している中には 40 年で老朽化している部分もあるか
もしれないからとか、あるいは昔の規制基準にしか適合していないので新しいのに適合
するために、こういうふうにちょっと設備を替えます、つくり替えますとか、そういう
設計図とかを出したりとか、いろいろ一応、約束みたいなのはするんですけれども、そ
れを見て、いいですよと言っているわけですけど、これからは実際に、それは本当に、
そういうふうにできているのかなとか、それから 1 番大きいのは老朽化というのはでき
たときには安全だなというか、ちゃんとした材質で、ちゃんとした強度があるなという
ことは確認されているわけですけど 40 年たってみると金属疲労で、実は目に見えない
劣化が起きているということもあるんだから、そういうところもチェックしましょうと
いうのをやらなきゃいけないんですよ。それを 7 月までにやると言っているんですね。
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これは相当なうそだろうなと思っていて、これは、このまま本当に 7 月までに OK を規
制委員会が出しちゃうということだと、相当、日本の安全に関する規制というのは、い
い加減だなということだろうと思うんですね。何でかっていうと、そういう金属疲労と
か、そういうのを全部調べようと思ったら、ものすごい時間がかかるはずなんですね。
だけど、おそらく 7 月までには絶対、間に合わないんですけど規制委員会がやるのは、
そのあとも引き続きチェックを続けてくださいみたいな。万一、ちょっとでもおかしい
ことがあったらすぐ止めるんですよというような、そういうことを言うわけですね。
関西電力は常にチェックをしていて、ちょっとでも危なかったらすぐに報告して止めま
すなんていうのがマニュアルか何かに書いてあって、それで、じゃあ、いいんじゃない
のというふうになるだろうと思うので、これを認めるか認めないかっていうのは今後の
日本の原子力行政にとって非常に大きな影響がある。特に原発の電源の構成のべストミ
ックスといわれていますけど、これは去年決まったのが 2030 年に、だいたい 20 から
22%ぐらいは原発ですというのがあるじゃないですか。
あれを実現するためには、もし 40 年廃炉で、全部 40 年たったら一律に廃炉というこ
とをしていくと、だいたい 2030 年は、その他が動いていても、だいたい 15%ぐらい
にしかならないんですよ、廃炉がどんどん増えちゃうから。なので新設しなくちゃいけ
ないという話になるんですけど新設は相当ハードルが高いねというふうになっている
ので、やっぱり何とかして延長したいという思惑があって、それに沿って規制委員会は、
古いものも認めていこうということなんだろうなというふうに思います。だから、ちょ
っとこれから心配だなという感じですね。
Gbiz:
そうですね、注目して、動きを。
以上
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