日本うつ病学会双極性障害治療ガイドライン(私見による改編) 2015年1月3日 土曜日 3.維持療法 ◯限られた観察期間で72%の患者に再発が見られることから、双極性障害に おいては、生涯にわたって再発しない率は低いと考えられる。 ◯重症な躁病エピソードが1回以上あった場合、重症な大うつ病エピソードを 繰り返している場合は維持療法を開始することを考慮する。 ◯気分安定薬 ア.リチウムはDSMが診断基準が臨床試験に採用された結果、対象患者が広が り、反応性の低下と関係している可能性が考えられる。しかし、最近の新薬 の比較対象としてリチウムが用いられたRCTで、プラセボ、あるいはバルプロ 酸に比べ、再発までの期間を有意に延長することが示されている。 イ.リチウムは病相予防効果とは独立に、自殺予防効果があると知られてい る。やはり、リチウムの適正使用は生命予後に良い影響があると考えられ る。 ウ.ラモトリギンは、双極Ⅰ型障害患者においてラモトリギン対照とプラセボ に比して、再発までの期間が期間が有意に長った。再発予防効果は、躁病・ 大うつ病のいずれにおいても認められた。また、大うつ病エピソードの再発 予防効果はより顕著であった。 エ.リチウムでうつ状態が治療した患者の場合、うつ状態の再燃・再発までの 期間が有意に長く、リチウムとラモトリギンの併用療法の有効性が示され た。 ◯非定型抗精神病薬 ア.オランザピンは全てのエピソードの再発に対し、有効性が認められた。ま た、躁病に対する予防効果ではリチウムに勝り、大うつ病にではリチウムと 差がなかった。 イ.クエチアピンは全てのエピソードの再発に対し、有効性が示された。リチ ウム、バルプロ酸の併用療法は有意に再発が減少すると認められた。 ◯ベンゾジアゼピン系薬物 ベンゾジアゼピンの長期投与が双極性障害の長期経過に良い影響があるとい 1 う証拠はなく、常用依存の問題があるため、漫然と使用すべきでない。しか し、併存する不安障害の治療のために一時的に使用する場合がある。 また、ストレスにより不安が生じ、睡眠障害により再発のリスクが高まるが 懸念される場合に一時的に使用する場合がある。 ◯双極Ⅱ型障害の場合 双極Ⅱ型障害に特化した臨床試験は少なく、エビデンスに乏しい。しかし、 リチウム、ラモトリギン、カルバマゼピンの有効性が示唆されている。ま た、SSRI単独の治療を推奨する論文も報告されている。しかし、躁転あるい は、それに準じた悪化を懸念する意見もある。 私見であるが、DSMによる双極Ⅱ型障害という診断が濫用されているという懸 念がある。 ◯急速交代型 ア.クエチアピンが双極Ⅰ型障害においてプラセボ群と比較して、有意に再発 までの期間が長かった。過食、レストレスレッグス症候群のリスク回避が今 後の課題である。 イ.三環系抗うつ薬は急速交代を惹起するので、中止する必要がある。 ウ.甲状腺機能低下症は、急速交代型の危険因子になるとされており、さら に、治療抵抗性の急速交代型には、甲状腺ホルモン剤の投与が有効な可能性 がある。 2
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