細胞等の超急速ガラス化手法(FV法)

-------------------------------------------------------------------------------[ 成果情報名]細 胞 等の超急速ガラス化手法( FV 法)の開発
[ 要約]微少量のガラス化液で 超急速ガラス化を可能 にする FV 法( Fukuoka Vitrification
Method )を考案した。この 方法で細胞等を簡 易に保存できる。
[ キーワード] ガラス化、保 存
[ 担当部署]家畜部 ・畜産工学チーム
[ 連絡先] 092-925-5232
[ 対象作物]乳用牛 ・肉用牛・豚
[専門項目 ]バイテク [成果分類]製品開発
-------------------------------------------------------------------------------[ 背景・ねらい]
種々の細胞を 長期間保存す る方法として近 年ガラス化という方法が考案 され、牛胚移植
技 術においても 胚をガラス化保存すると融 解 後の生存性が 一般的に高い た め試験段階で利
用 されつつある 。しかし、多 くのガラス化の 手法は特許で 押さえられており、実用する場
合 に抵触や使用制約 が懸念されるため、 県独自の技術開発 が望まれる。
そこで、家畜類の 細胞等を簡易な方法 でガラス化できる 新たな手法を考案 する。
( 要望機関名:畜産課( H10 ))
[ 成果の内容・特徴 ]
1 .細胞等 の超急速 ガ ラ ス化を 可能 に す る方 法を 考案し た( FV 法: Fukuoka Vitrification
Method)。
2 .ガラス化 に使用する糸 は釣り糸を加工 して簡易に製 造できる。製 造 法は 40mm の 2.5
号の釣 り糸の 一端を 平らに 潰し角 度をつける (図1 )。材 料の糸は 光を透 過する 有色透
明なものを使 用するため、実体顕微鏡下で 細胞等の確認 が容易である。 また、糸は軽量
で液体窒素中 でも柔軟性を保 ち、角度をつけた部分にガラス化液を滴下 するため、外か
らの力を受け に く い。
3 . FV 法に必要な ガラス化液は微 少 量であるため(図1 )、液体窒素を用 いた超急速冷却
が可能である。
4 . FV 法による超急速ガラス化およびその融 解は以下のような 手順で行う(図2 )。
( 1 ) 実体顕微鏡下で 、平ら な部分 にガ ラ ス化液 に平衡 した細胞等を ピペットで 滴下す
る(( イ ):この時 60mm シャーレ を下に置き、顕 微 鏡 台への接触による 汚染を防ぐ )。
( 2 ) 細胞等を ガラス 化液に 導入( 平 衡 開 始)し て素早 く液体窒素に 投入 し、ピンセッ
ト でサ ン プ ル チ ュ ー ブ に導入後 (ウ )、液 体 窒 素と と も にキ ャ ッ プを し て液 体 窒 素ボ
ンベで 保存する(エ )。
( 3 ) 融解 はサ ン プ ル チ ュ ー ブ から 糸を ピ ン セ ッ トで 液 体 窒 素 中 に引 き出 し( オ )、素
早く希釈液に投入して、ガラス化液の希釈および耐凍剤除去を行 う(カ )。
[ 成果の活用面・留意点]
1 .保存はサンプルチューブの代わりに 細いストローでの 保存も可能である 。
[ 具体的データ]
40m m
2m m
側面図
30度
2.5号 釣 り糸
ガラス 化 液 中 の 細 胞
顕 微 鏡 下で細 胞 を の せ る
上面図
糸 の 一 端 を押 し潰 す
ドロップ容量: 0.262μl
図1
超急速ガラス化に 用いる加工糸の見取 り図(平成14年 )
ピンセット
液体窒素
60mlシャーレ
前平衡液1 前平衡液2
ガラス化液
(ウ)
(イ)
(ア)
液体窒素ボンベ
LN2
液体窒素
希釈液1
PBS
希釈液2 希釈液1
(キ)
図2
(カ)
(オ)
FV 法 による超急速ガ ラ ス化および融解の手 順(平成14年)
[ その他]
研究課題名:高能力乳牛の作出技術
予 算 区 分:県特
研 究 期 間:平成 14 年度(平成 12 ∼ 16 年)
研究担当者:笠 正 二 郎、森美幸、上 田 修 二
発表論文等:平成 14 年度畜産関係試験成績書
特願 2004- 054966
(エ)