第2部 製作編

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第 2 部 製作編
表計算ソフトのグラフ機能を活用して,
補正式を楽々導出
事前調査・検討
∼Pt100の非直線性補正の検討∼
中村 黄三
誤差± 0.03℃の達成は,Pt100 の非直線性補正が最重要課題です.本章では,
表計算ソフトが備えるグラフの近似式表示機能を活用した補正式の導出方法,
および小さな MPU でも実行可能な式への改造方法も紹介します.
Pt100 の扱い方に関する最後の課題が非直線性の補
正です.第 2 部 第 1 章の表 6 で解析したように,1.5℃
を超す誤差の膨らみを,どうしたら± 0.01℃ぐらいま
で補正できるかを検討します.元の非直線性を 1/100
以下に圧縮するのは,ハード的には精度やコストの両
面で無理なので,ソフト的な補正に期待がかかります.
ここで,「ではソフト屋の仕事」と,振り分けるの
は早計です.序章でも述べたように,精度の根幹にか
かわる補正方法やアルゴリズムの創出は,フィールド
(現実の世界)
を最もよく知っているアナログ・エンジ
ニア(広義の意味でハード屋)の役割です.
表計算ソフトを活用して
補正する方法を検討する
■ 表計算ソフトを使ってらくらく補正
と出力データ群y の関係を回帰分析する機能がありま
す.与えられた近似条件
(直線,多項式,対数など)に
沿って,二つの量を結ぶ現実の曲線に最も近い近似曲
線を求め,
それを式としてグラフ内に表示できます(図
1)
.そこで,この近似曲線の式
(以下,近似式)を表
示する能力を活用すれば,頭を抱えながら自力で式を
立てずに済みます.
同図の二つのグラフは,上が現実のセンサV O(Pt100
に 1 mA を流したときの Pt100 の両端電圧)の温度(X
軸)に対する関係を示すグラフとその近似式です.
下は,後述する Pt100 の非直線性を補正するための
式により,理想のセンサV O を補正(便宜上,逆補正と
呼ぶ)した,温度(X 軸)に対する逆補正値(Y 軸)の関
● 数式の意味と補正原理
表 1 は図 1 からの数式だけを抜き取ったものです.
上下の近似式は共に,x と y の関係を 2 次の多項式を
指定して近似させたものです.
2
ちなみに,各式の下にあるR(
R の 2 乗値)は決定係
数と呼ばれる指標で,近似曲線が実際の曲線にどの程
度フィット(寄与)しているかを表します.最大値は 1
で,寄与率が下がるほど 0 に近づきます.
2 次の高次項が負になっているので,温度
(x の値)
の増大とともに 1 次の項(基本ゲイン)からより多くの
値を差し引く結果となり,現実のセンサ V O(y の値)
の増加率が減少します.これら(0 ∼ 200℃の各値)を
エンド・ポイント法(第 2 部 第 1 章の Column 1 参照)
で正規化した場合,グラフの形は第 2 部 第 1 章の図
〈現実のセンサ VO 対測定温度〉
(a)各温度( x )
に対する現実センサVO( y )との関係を表す近似式
〈逆補正値 対 測定温度〉
(b)非直線補正式で理想のセンサ VO(直線)を逆補正した,
各温度
(x )
に対する逆補正値との関係を示す近似式
図1 表計算ソフトで表示させた横軸(x)
と縦軸(y)
の関係を表す
近似式
表計算ソフトを活用して補正する方法を検討する
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第2部
精密温度計の設計と製作
● 表計算ソフトの数式表示機能を活用
非直線性の補正は,Pt100 の温度に対する抵抗の関
係を表す関数の逆関数で補正すればよいでしょう.エ
クセル
(米国 Microsoft 社の商標.以下,
表計算ソフト)
を使うと,これが簡単に行えます.
実はこの表計算ソフトには,一連の入力データ群x
係を示すグラフと伝達式の近似式です.
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第1部
A㿌D変換ICを使いこなす
第3章