製作した精密温度計の 精度検証実験と考察

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μV オーダの信号を観測する実験では,
外部誤差要因の徹底排除が重要な要素
第7章
製作した精密温度計の
精度検証実験と考察
中村 黄三
0.01℃の世界は誘導ハムや寄生熱電対が問題となる μV オーダの世界です.
机上での設計と,実験による性能証明には異なるノウハウが必要です.本章では,
シールド線の端末処理から取得データの考察まで幅広く解説します.
■ 実験準備
本章で行う精度検証実験に向けて,0.01℃の桁(セ
ンサV O の電圧換算で 38 μV)以下までを定量的に測定
できる環境を準備します.それには,可能な限り外的
誤差要因(特に外来ノイズと風の影響)を排除する工夫
が必要です.そのため,ケースは金属製のものを採用
し,外部アナログ配線はシールド線で行います.
筆者の経験から測定系は シンプル・イズ・ベスト
なので,性能が確保された静かな測定器
(DMM)1 台
だけで行います
(図 1).特に,昨今の LCD パネル表示
によるオシロスコープなどは,画面から DC 測定のベ
ースラインをふらつかせる高周波ノイズがかなり出ま
す.不要な測定器は遠ざけるか電源をオフにしておき
ましょう.
精度検証実験のための
抵抗ボックスの製作
● 抵抗ボックスの製作
温度計としての最終精度の確保には,Pt100 が封入
された実際の温度プローブと加熱用のオイル・バス
(油漕),そして温度基準器が必要です.そこは会社が
契約している校正業者に委託しました.本体に対する
正確な検証を行うため,抵抗群による疑似信号源(図
2)を一次試作時に製作しました(外観は序章の写真 3
を参照).
▲
多回転トリマの採用と調整範囲の抑制
各温度における Pt100 の基準抵抗値を固定抵抗だけ
では用意できません.多回点トリマを付加して調整に
より実現しています.どんなによいトリマでも,バッ
クラッシュによる摺動子の位置ずれや接触圧変動など
による抵抗値変動があります.
そこでトリマの可変範囲を,全抵抗値に対し± 5%
写真 1 多回転(15 ターン)
トリマの外観
金属ケース
試作した
精密温度計
(序章 写真1)
アナログ出力
0∼2V
V
GPIB
HP*製8桁DMM
*:現“keysightテクノロジー”
2芯シールド線
(抵抗情報)
GPIB/
USB
変換器
抵抗ボックス
(序章 写真3)
金属ケース
158
ノイズ源のノートPC
第 7 章 製作した精密温度計の精度検証実験と考察
図 1 製作した精密温度計(本体)の精度測定方法