2.4 教科研究会の取り組み 2.4.1 国語科 (1)担当者 船越寛明 手嶋

2.4
教科研究会の取り組み
2.4.1
国語科
(1)担当者 船越寛明
涌田弓人
手嶋千恵里
鉄井
富田久美子
恵
伊木
洋
村川梨沙子
(2)研究の歩みと概要
1年次・・・①学習材の開発
1年生「話すこと・聞くこと」(対話)の実践・研究
②選択授業の拡大による個に応じた学習の実践・研究
2年次・・・①学習指導方法の工夫
②評価を生かした指導
1年生「読むこと」(古典群読)の実践・研究
「学習のてびき」・「国語学習記録」の充実
③選択授業の充実による個に応じた学習の実践・研究
3年次・・・①学習指導方法の工夫
②評価を生かした指導
1年生「書くこと」(作文)の実践・研究
「学習のてびき」・「国語学習記録」の充実
③選択授業の充実による個に応じた学習の実践・研究
(3)学習者の実態
国語学習記録における感想・学び得たことの記述から,国語学習に対して意欲的に取
り組もうとする姿勢が感じられる。しかし,学習者の言語生活を観察すると,相手を意
識して時と場に応じたことばづかいができない,気持ちのこもったことばを使って思い
を十分伝えることができない,ことばをぞんざいに扱うといった傾向がある。ことばの
重みを自覚し,ことばを使って考えを伝え合う力が十分ではないと考えられる。
(4)目指す生徒像
・ことばに関心を持ち,ことばを尊重する生徒
・ことばを通して,相手の心と出会うことのできる生徒
・語彙が豊富で,場に応じたことばを使って互いの考えを伝え合うことができる生徒
(5)育てたい力
・言語生活を向上させるために必要な「話す・聞く」「書く」「読む」力
・言語文化を継承し,創造していこうとする態度
(6)研究課題
・ことばへの関心を高め,ことばを尊重する態度を育てるにはどうすればよいか。
(7)課題設定の理由
本校の生徒の実態から,ことばの重みを自覚し,ことばを使って互いの考えを伝え合
う力をつける必要があると思われる。そのために,国語科の学習指導を通して,ことば
への関心を高め,ことばを使って他の人と考えを伝え合うことのねうちを実感させたい。
こうした願いのもと,ことばへの関心を高め,ことばを尊重する態度を育成すること
を研究課題として設定した。
(8)研究の柱
○「基礎・基本の定着を図るための学習材の開発」
・単元の設定や資料・教材の開発,学習材の工夫
・聴写(聞き取り)コーナーの実施
・AV機器の活用
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○「個に応じ,個性を生かす指導方法・指導体制の改善」
・「学習の手引き」の活用と工夫
・「国語学習記録」の充実
・選択授業のコースの充実(基礎・発展)
○「評価を生かした学習指導の工夫」
・「国語学習記録」の活用
・自己評価および相互評価の活用
・指導と評価の一体化
(9)実践事例
【実践例1】
①単元名
②対
「対話を楽しもう」
象
米子市立後藤ヶ丘中学校
③実施年月
平成14年11月
④指導者
安部裕城
1年5組
⑤学習指導のあらまし
中学校学習指導要領・国語科の目標では「伝え合う力」の育成が求められている。世界
で,地域で,学校で,あるいは家庭で,互いの思いを伝え合うことはますます重要になっ
ている。
多くの生徒は「話すこと」によって,自分を表現することが苦手である。それには次の
二つが大きな要因として考えられる。まず,その方法を知らないということ。場に応じた
態度・言葉遣いなど基本的なことがおろそかになっている。二つ目は,自分の話すことが
相手や周りに受け入れられるかどうか不安であるということである。そこで,言語生活の
根幹である自らの「対話」を見つめ直し,伝え合う力を高めるために本単元を設定した。
本単元では「話すこと・聞くこと」の方法論を念頭に置きながら,生徒が「対話」の楽
しさと必要性を感じ,それを今後の言語生活及び言語学習に生かせるよう指導していきた
いと考えた。本単元では,第1次で,「紙チャットをしよう」,第2次「わかりやすく話
そう」,第3次「聞き上手になろう」,第4次「対話を楽しもう」という全8時間の指導
計画を立てた。
第4次にあたる「対話を楽しもう」では,生徒が2人組になってお互いに「自分の大切
なもの」を見せながら紹介し合うという活動を取り入れた。答えのない,まさに一人ひと
りの思いが反映される題材であり,生徒たちは非常に興味を持って取り組んだ。2人の対
話はカセットテープに録音し,あとで対話の仕方を振り返るのに役立てた。
〈生徒の振り返りより〉
※「自分の大切なもの」を見せる時,はじめはあまり見せたくなかった。でも写真を見せ
たらほんとうに驚いてくれて嬉しかった。自分の大切なものを見せてすごくよかったと思
った。対話はずっと続いていくものだから上手くなりたいと思った。相手に伝わらなかっ
たらさみしいので,相手に伝わるような対話をしていきたい。対話の学習をやってから少
し変わったような気がした。
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※私は普通に友達と話したり,友達の話を聞いたりしていたけど,「対話の勉強」をして
いて「話したり聞いたりするのって難しいんだ」と思いました。
〈今後の課題〉
対話を含めた「話す・聞く」という活動は,教科を越えた実生活の場でこそ生かされる
べきである。よって,あらゆる場での意識づけ・ふりかえりが必要である。今後,総合的
な学習や学級活動との関連を強め,また,それを教科の中でふりかえることで,さらに実
りのあるものとしたい。
また,学習することで「話すこと・聞くこと」がどのように変容していくのかをとらえ
る工夫が重要である。音声としての学習記録を実際にテープやビデオに残し,その変容を
ふりかえるような指導計画を研究していく必要がある。今回の学習では,実際に対話を音
声として残したことがたいへん有効であった。
今後は,中学校の段階で求めたい対話力がどのようなものなのかという到達目標を明確
に学習者に示していきたい。それは同時に3年間を見通した指導計画の中での「対話」の
位置づけを行うことにつながると考える。
【実践例2】
①単元名
古典に親しもう−「枕草子」
②対
米子市立後藤ケ丘中学校
象
群読の試み−
1年7組
③実施年月
平成15年11月
④指導者
鉄
⑤指導目標
古典に親しみ,わが国の言語文化についての関心を高める。
⑥指導内容
・古文に接し,進んで読んだり調べたりしようとする。
井
恵
・古文のリズムに慣れ,優れた表現を味わいつつ音読する。
・古文の書きことばと読みことばの違いを理解する。
⑦学習材
傍注資料「枕草子
第一段」(模造紙)
群読台本
群読準備
話し合いのてびき
群読のポイント
群読発表会
発表のてびき
自己評価カード
⑧指導計画
第1時
「枕草子
第一段」を音読し,仮名遣いと発音に慣れる。
第2時
口語文と文語文を比較し,内容を理解する。
第3時
グループによる効果的な音読のしかたについて話しあう。
第4時
自分たちのグループのめあてを持って群読の練習をする。
第5時
群読を発表し,互いに評価しあう。学習記録を整理する。
⑨学習指導のあらまし
第1学年の古典の単元目標は,「古典に親しむ」である。
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本学習指導においては,楽しく学習しながら,自然に読み方を覚え,古典に親しむこと
のできる学習として,「枕草子」の「群読」という言語活動を試みた。古文を繰り返し声
に出して読むことで,古典のリズムを読み味わわせることを中心にすえた。また「群読」
を作り上げていく過程のなかで,どの部分をどんなふうに読みたいかを話し合い,グルー
プ独自の読み方を工夫していくことで,より古典に親しむことができるのではないかと考
えた。
グループごとの群読を行うために,まず「だれがどの部分を読むのか」という分担読み
(分かち読み)の話し合いをおこなった。この話し合いの場が「枕草子」(第一段)の解
釈を深めることになり,お互いの解釈を「伝え合う」学びあいの実の場となった。
本学習指導では,まず「春」(「春はあけぼの・・・」)の部分を,指導者が作った台
本にそって,グループごとに群読する練習をおこなった。その後,自分達で読みたい季節
を選び,グループごとに台本をつくった。台本には,気のついたことや自分達で話し合っ
たことを書き込むように指示した。また,誰がどこを分担するのか,個で読むのか,複数
で読むのか,あるいはどのような気持ちをこめて読むのか,どんな速さで読むのか,声の
大きさはどうするか,間はどこでどれくらいとるか等,自分達で考えた読み方をどんどん
書き込ませた。同じ季節を選んでも,グループによってまったく異なる群読の台本ができ
あがった。この台本作りこそ本学習指導の中核となる言語活動として,位置づけていた。
群読練習では,誰もがよく声を出して読むことができていた。群読を始めると,普段人
前で声を出して読むことの少ない学習者も,仲間とともに大きな声で読んだ。個人で読む
ところと,複数で読むところを作ることで,お互いの読みをよく聞き合いながら,学習者
が進んで読みの練習に取り組んでいった。「個」が生きることによって,同時に「集団」
が生きる言語活動として,「群読」は効果的な方法であると感じている。
「群読発表会」では,お互いの練習の成果を聞き合い,相互評価し,感想を交流すると
いう活動を行った。その際の進行は国語係がつとめた。進行役となった学習者は,自分で
進行用の原稿を書き,主体的に群読発表会を進めた。この体験は,学習者にとって非常に
達成感のあるものとなった。
クラスメートの「群読」をお互いによく聞き合うこともできた。自分達と違う点や,自
分達もこんなふうに読んでみたいといった点を見つけ合うことで,相互評価につなげるこ
とができた。そのため,お互いに感想を交流する際,他のグループに対し,よかった点や
工夫していた点,また,「こうしたらもっとよかったと思う」というような点についても,
自らのことばで「伝え合う」ことができていた。
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〈今後の課題〉
本学習指導においては,「学習の
てびき」や「群読台本」の工夫を試
みた。「学習のてびき」には,学習
の流れ,方法,手順などを,具体的
に示すようにした。そして,学習者
が「学習のてびき」にそって「群読
の台本」を作り上げていく過程で,
読みを深めつつ,「伝え合う」力を
身につけていくことができるように
工夫した。こうした場の設定が,自
然な形で「伝え合うこと」のねうち
を実感させることにつながっていっ
たと考えている。
具体的には,発表後に自己評価と
相互評価をおこない,感想を伝え合
い,交流させる試みを行った。授業
後の自己評価では,3段階の「2」
とした学習者が多かった。事後研究
会において,島根大学の足立悦男先
生に,自己評価の生かし方について,
次のようなご助言をいただいた。そ
れは,自分達のグループの「めあて」
がどうしたら達成できるのか,どの
ように改善すれば自己評価が「3」
になるかを考えさせるというものであった。そして,話し合ったことを,互いに伝え合っ
たうえで,次の学習の際,「3」の読みのめあてを明確に持たせて,発表に取り組ませる
ことによって,「自己評価を生かす」指導ができるのではないかというものであった。
単元全体の学習を終えて,学習者の一人は学習記録に次のように記している。
「古典の学習は難しそうでしたが,群読でみんなと声に出して古典を読んだりして,だん
だんと楽しくなってきました。古典をリズムにのって,声に出して読むのは楽しかったで
す。群読の発表会では,緊張して自分達で考えた読みがあまりうまくできなかったけど,
またみんなで読んでみたいと思いました。」
グループでの話し合いの記録や,学習記録から,古典の学習に,主体的に,かつ楽しく
取り組めたと感じている学習者が多かったことが読みとれる。群読は学習者たちが学習後
に達成感や,充実感を得ることができる言語活動であると感じている。
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(10)研究の成果と課題
○基礎・基本の定着を図るための学習材の開発
ことばへの関心を高め,ことばを尊重する態度を育てるうえで,漢字指導や語彙指導は
基礎・基本となる。そのため年間を通しての漢字テスト,小・中学校の復習問題も取り入
れた一斉漢字テストなどの実施により,確かな定着をはかった。また,授業の中に,こと
わざ聞き取りコーナーや聴写をする場面を設け,基礎的・基本的な「聞く」力や正しく「書
く」力の向上をめざした。「書くこと」を苦手としている生徒は,黒板の字を正しく写す
ことや,資料から正しく書き抜くことをおっくうがっている。視写や聴写をはじめ,字を
正しく書く機会をなるべく多く作り,習慣づけることで,基本となる「書くこと」をいと
わない態度を育てようとした。そのうえで,「書くこと」の大切さや,正しく書くことが
理解につながるということを実感させたいと考えた。また,「国語学習記録」の指導を通
して,毎時間自分の感想や意見を書くこと,読書生活記録を毎日書き続けることなど基礎
的・基本的なことを継続して指導していくように努めた。
○個に応じ,個性を生かす指導方法・指導体制の改善
選択授業では,基礎コースと発展コースを設け,各コースの特色を生かして,ことばへ
の関心を高め,個に応じた指導ができるよう工夫・改善をおこなった。また,実践研究を
通して,「学習のてびき」の工夫・改善をおこなった。「学習のてびき」とは,単元ごと
に学習の流れ,学習の方法,手順などを具体的に示したものであり,生徒の学習の充実を
促すと同時に,教師の指導方法・指導体制の改善をはかるものでもある。「学習のてびき」
を作成するにあたっては,生徒の実態把握に努め,それぞれの実態に即したものを作るよ
うに心がけた。こうした工夫・改善の成果として,学習者の言語生活におけることばへの
関心の高まりが感じられるようになってきた。
○評価を生かした指導の改善
本校の国語科では,「国語学習記録」の指導を中心に据えて,評価を生かした指導をお
こなっている。国語科では,学習の記録,様々な資料,プリント,作品,テストなど,国
語学習のすべてを一冊にとじこむことができるように,厚とじのファイルを活用している。
一年間を通じて学びのすべてをとじこむことによって,国語学習への愛着が生まれてくる。
「国語学習記録」には,学習の成果や学び得たこと,考え(させられ)たことなどを記
すように指導している。その一つ一つが,その時間の学習生活を振り返った学びの履歴で
あり,学習者の自己評価でもある。指導者は,一人ひとりの自己評価を読むことによって,
次の時間に個に応じた指導をするのに役立てている。
ことばへの関心を高め,「伝え合う」力を育成するためには,学習者の学びの実態を把
握することが不可欠である。観察とともに,「国語学習記録」は学習者一人ひとりのこと
ばへの関心をとらえる具体的な資料となり,学習指導を支える土台となるものであると考
えている。実践例においてとりあげたように,「国語学習記録」には,学習者のことばへ
の関心の高まりが感じられる記述がふえつつある。
今後の課題としては,学習者自身が「自己評価」を生かしてさらなる学習に意欲的に取り
組んでいけるような「自己評価」の工夫・改善があげられる。「自己評価」を生かす指導
のあり方について考究していく必要性を感じている。今後も,「国語学習記録」の指導を
土台として,ことばへの関心を高めつつ,「伝え合う」力の育成に努めていきたい。
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