生物多様性保全に取り組む市民団

これからの生物多様性保全活動について考える会(第3回)
生物多様性保全に取り組む市民団体の専門性向上について
2015年2月5日(木)
西田 貴明
0/●
背景
 市民団体の生物多様性保全を進めるための課題(?)
 保全活動に取り組むための人がいない
 行政・企業が保全活動に協力してくれない
 安定的な予算が確保できない
ヒト
(モノ)
情報発信
 活動内容が行政に反映されない
 周囲の人に理解されにくい
カネ
市民団体の「人・資金確保」、「情報発信」の力の向上?
1
アウトライン
I.
背景(活動資金の確保、広報の充実)
II. 現状(生物多様性協働フォーラムの経験から)
III. 保全活動の人材に必要なことは?
IV 保全活動の活性化を促す仕組み
IV.
2
現状
生物多様性協働フォ ラムの経験から
生物多様性協働フォーラムの経験から
3
社会提言の機会構築(生物多様性協働フォ ラム)
社会提言の機会構築(生物多様性協働フォーラム)
 生物多様性協働フォーラムは、関西圏のさまざまな主体(自治体、企
業、博物館、NPO)が協働した社会啓発のフォーラム(イベント)。
4
生物多様性協働フォ ラムの実施
生物多様性協働フォーラムの実施
 近年は、講演だけでなく、会場でのブース出展、パネル展示も実施
5
フォ ラムのアンケ ト調査
フォーラムのアンケート調査
 本アンケート調査の目的
 「生物多様性協働フォーラム」の出席者に対して、本フォーラム出席に対する感想やご意見、今後の生
物多様性に関する取組意向等を把握し、フォーラム運営のあり方、今後の検討課題等を検討する。
 調査対象等
 調査対象:「生物多様性協働フォーラム」(第1回~第3回、第5回~第8回)
 出席者全員
フォーラム来場者様(N=763)
フォ
ラム来場者様(N=763)
 調査期間:<各フォーラム当日>
 調査方法:各フォーラム出席者に手交・回収
 回収数:763通
大学・研究機関
5% 博物館
自治体・国
財団 社 11%
財団・社
 調査項目等
団法人
2%
個人
2%
企業内訳
1%
無回答
NPO・NGO・市民団体
その他
無回答
38%
企業
個人
 フォーラムに対するご意見・感想(問1)
フォ ラムに対するご意見 感想(問1)
 今後の生物多様性に関する取組や意向(問2)
 回答者の基本情報
(回答総数:763)
財団・社団法人
企業
26%
その他
3%
自治体・国
NPO・NGO・
市民団体
12%
大学・研究機関
博物館
6
保全活動を取り組む際の課題
※回答総数:1,871 (回収枚数:650)
今後、生物多様性保全活動に取り組む際の課題(N=763・複数回答)
0 5 10 15 20 活動メリット(社会的意義)の明確化
お金 人
お金・人
18.8 活動資金の不足
18.0 (組織内の)専門知識の不足
12.8 (組織内の)人材 技術不足
(組織内の)人材・技術不足
15.9 活動パートナー・連携先に関する情報提供
10.6 活動手法 成功事例等の各種情報提供
活動手法・成功事例等の各種情報提供
97
9.7 情報 生物多様性保全を取り巻く法整備の未熟さ
9.7 その他
不明
( %)
25
2.5 2.0 7
保全活動をおこなう上での課題(主体別)
今後、生物多様性保全活動に取り組む際の課題(N=763・複数回答)
100%
90%
80%
不明
70%
その他
60%
生物多様性保全を取り巻く法整備の未熟さ
50%
不明
活動手法・成功事例等の各種情報提供
活動手法
成功事例等の各種情報提供
その他
40%
活動パートナー・連携先に関する情報提供
生物多様性保全を取り巻く法整備の未熟さ
30%
活動手法・成功事例等の各種情報提供
(組織内の)人材・技術不足
活動パートナー・連携先に関する情報提供
20%
(組織内の)専門知識の不足
(組織内の)人材・技術不足
組織
材 技術
10%
活動資金の不足
(組織内の)専門知識の不足
活動資金の不足
0%
企業
行政
大学
(N=195)
(N=85)
(N=52)
市民団体
その他
活動メリット(社会的意義)の明確化
活動メリット(社会的意義)の明確化
(N=119) (N=312)
8
日本における生態系保全の人材育成状況
 教育プログラムの認定
 JAFEE(森林・自然環境技術者教育会):千葉大学を除いては、全て森林管理
 資格制度
 自然再生士:(一財)日本緑化センター
 ビオトープ管理士(公財)日本生態系協会
 技術士(環境)、博士(農学、自然科学...)
 講習会
 生物捕獲技術、自然再生
生物捕獲技術 自然再生
 観察会、モニタリング技術
いわゆる保全活動の技術が中心か?
(もちろん、それも大事だけれど)
9
保全活動の人材に必要なことは?
10
市民団体に保全活動で求められるスキル
保全技術
保
技術
将来の保全生物学者に求められるnon-technical10のスキル
(Perez2005)
情報発信
資金獲得

問題解決、評価

社会・政治間の相互作用

法律、規制、政策の分析

チームワーク、対立解決、交渉

公衆の面前でのプレゼンテーションとコミュニケーション
公衆の面前でのプレゼンテ
ションとコミュニケ ション

リーダーシップ、組織マネジメント、人材管理

ステークホルダー、地元コミュニティとの関係

マーケティング、社会心理学

戦略的プランニング、プロジェクト立案

経済 資金 達
経済、資金調達
11
どこからおカネを手に入れるか?
 行政、企業、消費者とどのように連携(資金確保)するか?
企業
⾏政
補助金
消費者
寄付
事業
販売
市⺠
団体
12
社会の保全活動へのニ ズ
社会の保全活動へのニーズ
※回答総数:2,400
(回収枚数:763)
今後、取り組みたい生物多様性保全活動の内容(N=763・複数回答)
0
0 5
5 10
10 生物調査(生物多様性評価等)
12.4 野生動植物の保護
9.9
9.9 外来種生物の駆除
9.2 在来種植生の導入
6.1 環境保全型農林水産業の実践
6.4 施業放棄林の利活用
6.5 耕作放棄地の利活用
7.1 エコツアーや環境教育
14.7 環境に配慮した調達(認証製品の利用等)
66
6.6 0.8 生物多様性保全活動への寄付行為
2.7 その他
不明
2.3 0.6 温暖化対策
特になし
20
20 13.3 自然再生(ビオトープ等)
海外遺伝子資源の利活用
15
15 ( %)
1.2 0.1 13
保全活動へのニ ズ(主体別)
保全活動へのニーズ(主体別)
今後、取り組みたい生物多様性保全活動の内容【主体別】 (N=763・複数回答)
100%
不明
90%
特になし
温暖化対策
80%
その他
70%
生物多様性保全活動への寄付行為
不明
海外遺伝子資源の利活用
特になし
60%
温暖化対策
環境に配慮した調達(認証製品の利用等)
その他
50%
エコツアーや環境教育
生物多様性保全活動への寄付行為
海外遺伝子資源の利活用
耕作放棄地の利活用
40%
環境に配慮した調達(認証製品の利用等)
施業放棄林の利活用
エコツアーや環境教育
耕作放棄地の利活用
環境保全型農林水産業の実践
30%
施業放棄林の利活用
在来種植生の導入
環境保全型農林水産業の実践
20%
在来種植生の導入
外来種生物の駆除
外来種生物の駆除
野生動植物の保護
10%
野生動植物の保護
自然再生(ビオトープ等)
自然再生(ビオトープ等)
生物調査(生物多様性評価等)
0%
企業
行政
大学
市民団体
その他
(N=195)
(N
195)
(N=85)
(N
85)
(N=52)
(N
52)
(N=119)
(N
119)
(N=312)
(N
312)
生物調査(生物多様性評価等)
主体によってもあまり変わらない?
14
保全活動の活性化を促す仕組み
15
生物多様性保全の多様な主体の連携の向けたトレンド
 地域の多様な主体における価値共有に向けた連携
 企業の⾃然資本の管理、CSRからCSVへ
 経済的連携を進める「価値を⾒出す」と「価値を伝える」
保全
価値を見出す
団体
企業
⾏政
価値を伝える
16
(再掲)保全活動へのニ ズ(主体別)
(再掲)保全活動へのニーズ(主体別)
今後、取り組みたい生物多様性保全活動の内容【主体別】 (N=763・複数回答)
100%
不明
90%
特になし
温暖化対策
80%
その他
70%
生物多様性保全活動への寄付行為
不明
海外遺伝子資源の利活用
特になし
60%
温暖化対策
環境に配慮した調達(認証製品の利用等)
その他
50%
エコツアーや環境教育
生物多様性保全活動への寄付行為
海外遺伝子資源の利活用
耕作放棄地の利活用
40%
環境に配慮した調達(認証製品の利用等)
施業放棄林の利活用
エコツアーや環境教育
耕作放棄地の利活用
環境保全型農林水産業の実践
30%
施業放棄林の利活用
在来種植生の導入
環境保全型農林水産業の実践
20%
在来種植生の導入
外来種生物の駆除
外来種生物の駆除
野生動植物の保護
10%
野生動植物の保護
自然再生(ビオトープ等)
自然再生(ビオトープ等)
生物調査(生物多様性評価等)
0%
企業
行政
大学
市民団体
その他
(N=195)
(N
195)
(N=85)
(N
85)
(N=52)
(N
52)
(N=119)
(N
119)
(N=312)
(N
312)
生物調査(生物多様性評価等)
多様なタイプの需要と供給があるのでは?
主体によってもあまり変わらない?⇒
17
協働フォ ラムに対する期待
協働フォーラムに対する期待
今後、フォーラムの改善してほしい内容(N=763)
100%
90%
80%
40 12 2 15 16 12 13 7 7 4 0 0
6 29 70%
60%
99 34 19 80 40 16 不明
その他
50%
115 個別の事例等の情報を詳細に聞きたい
40%
22 30%
20%
配架スペースを増やしたい
関係者間の交流を図りたい
57 研究内容等を社会的に発信する場がほしい
42
42 80 72 10%
18
18 11
11 企業
(N=195)
行政
(N=85)
11 28 大学
(N=52)
市民団体
(N=119)
46 0%
その他
(N=312)
多様な主体の連携機会の不足、協働や知識共有の必要性を感じている?
18
連携を成立させるための考え方
 経済的連携(PES)を成立させるためには、取引費用が、支払意思額(WTP)と受
取受入額(WTA)の差を上回る必要がある。
【連携スキームの成立条件】
取引費用
(輸送費用、仲介費用など)
支払意思額
<
(企業、消費者)
―
支払受入額
(保全団体)
現在、低い状態
にある??
現在、高い状態
にある??
支払意思額の適正化
支払受入額の適正化
交渉費用 契約費用の低下
交渉費用、契約費用の低下
保全団体と企業・行政の連携に掛かるコストを下げる必要がある
19
① 企業と保全団体の経済的連携に向けたマッチング
社会貢献、事業創出を志向する企業と保全団体の出会いの場
 信頼性の⾼いプラットフォームによる⽣産者と多様な主体の連携機会
 環境保全、⽣物多様性保全に特化したシンポジウムや社会啓発イベント
プラットフォーム
プラットフォーム
企業側のメリット
企業
企業側提供データ例
企業側提供デ
タ例
⽀援対象の条件
●保全対象、期間
●保全の効果
●活動にかかる費⽤
企業活動が
⽀援⽅法
⽣物多様性に与える影響 ●労働⼒の提供
●資⾦援助 など
●損失の定量的な評価
マッチング
マッチング
保全団体
農林漁業者
●保全対象、期間
●保全⽬的
●活動にかかる費⽤
活動にかかる費⽤
保全活動の効果
●定性的な評価
●定量的な評価
行政
官公庁
窓⼝の管理
●⾃社の事業に適する連携先の確保
●連携先を⾒つけるコストを削減
連携先を⾒つけるコストを削減
●持続可能な調達先の確保
保全団体側のメリット
保全団体
農林漁業者側提供データ例
保全活動の内容
企業
企業
●⽣産物やサービスのアピール機会
●企業、消費者のニーズの把握
●連携先を⾒つけるコストの削減
活動の評価
20
② 地域の生物多様性保全活動のコーディネーターの育成
保全活動の⽀援とともに、専⾨家を巻き込みながら、保全団体と消費者や企業をつな
保全活動の⽀援とともに
専⾨家を巻き込みながら 保全団体と消費者や企業をつな
ぐ⼈材(コーディネーター)の育成
【⽀援員の具体的な仕事】
• 保全活動の状況や進捗などを把握した上で、地域の取組を⽀援する。
• 地域の保全活動の評価をおこない、企業や消費者などに分かりやすい資料をつくる。
• 地域の保全活動と企業や消費者などの連携先のマッチングの機会をつくる。
地域 保全 動 企
消費者 ど 連携先
グ 機会
企業側のメリット
●活動に信頼がおける保全団体との連携
企業
コーディネーター
●保全活動を活⽤した企業経営・事業活動
保全団体側のメリット
●円滑な経済的連携の実施
●消費者や企業ニーズに合致した取組の実施
保全団体
NPO・研究者
●保全活動に外部からの視点を導⼊
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③ 生物多様性保全貢献度の定量評価システム
⽣物多様性保全の貢献量の定量的な評価
 評価⾃体は簡易で分かりやすく、信頼性の⾼い評価の仕組み
【例:法⼈の森林制度における環境貢献度】
法⼈の森林制度に参加する企業は、環境報告書等で環境保全のための取組を明らかにする場合の参考となる
法⼈
森林制度に参加する企業は 環境報告書等 環境保全 ため 取組を明らかにする場合 参考となる
よう、企業からの要請に応じて、契約した森林が発揮している⽔源かん養、⼭地保全、環境保全(⼆酸化炭素
の吸収)への貢献度について⾦額、機能等で評価されている。
信頼性の⾼い
定量評価
企業側のメリット
●連携先の選定の基準
連携先の選定の基準
●保全活動の社会的アピール
●経済的連携の実施根拠
保全団体側のメリット
●地域の取組のアピール
地域
組
ピ
●地域の取組の進捗管理
ブランド化 寄付付き商品
CSR報告書
ホームページ
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(参考)社会心理学からのインプット
 「文化的サービス(生態系から人々にもたらされる恩恵)」のみ「行動意図」と正の関係
 「行動意図」に最も関係する心理要因は「社会規範」からの影響
 「コスト感」 と負の相関
保全の行動意図に至る意思決定プロセス
(今井ら (2014) 保全生態学研究)
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やっぱり、多様な主体が混じり合う場づくりから
 理解促進から、雰囲気醸成、協働・連携機会
気
に!
<個人>
• 知識・技術の共有
• 発表機会の提供
• ビジネスの実践
ビジネ の実践
<組織>
• 双方向のマッチング
• 取組内容の評価
• ビジネス機会の構築
• 雰囲気の醸成
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