7月17日号

金井中学校だより
平成 27 年 7 月 17 日発行
文責 校長:大江昌信
私たちは気持ちや考えを、言葉を使ってやりとりしています。言葉のおかげでお互いを深く理解
し合えています。ところが最近は、意味のない会話が実に多いと思います。「会話」ではなく「こ
とばの往復」といえるかもしれません。そこには、どんな意味があるのだろうと考えてみました。
スマホのLINEで、「○○のTV番組見た?」「うん、見た!」「おもしろいよね」「だよね」
…と、たわいのない「ことばの往復」が続きます。しかし、この「ことばの往復」がもつ意味から
少し離れ別の角度から考えると、その「ことばの往復」に隠れているものが見えてきます。それは
「あなたは私の友達」「うん、友達」「これからもずっと仲よし」「うん、ずっと仲よし」とお互
いの関係を確認し合って「友達確認」しているのです。
逆に考えると、返信をしてくれないことは「友達でない」という意味をもつのかもしれません。
LINEには送信したメールに対して「既読」機能がついています。また、LINEにはグループ
があり、既読人数もすぐ分かります。しかも様々な添付用イラスト(有料イラストも)があり、あ
る程度の感情を瞬時に送ることができます。だからこそ、送付した方は返信や既読を期待してしま
います。そこにこそ、大きな落とし穴があるような気がします。会話の場合は、目の前に相手がい
ます。相手の気持ちを考えたりしながら「ことば」を選び、表情を見てコミュニケーションをしま
す。しかし、LINEの場合はスマホの画面がすべてです。そこには自分の推測や思い込みから、
相手への一方的な間違った感情が生まれる場合があります。
最近、「LINE疲れ」という言葉を耳にしました。24 時間いつでも「友達確認」をしている
と、息が抜けず心が休まりません。寝る時も、トイレでもお風呂でもスマホが手放せません。スマ
ホから 24 時間束縛され、ほっとできる時間がありません。また、何気なく送ったラインの「こと
ば」「添付イラスト」を、受け取った方がまったく違う意味にとってしまったり、「既読」がなか
ったために無視されたと勘違いして「グループ外し」がよくあると聞きます。
金井中の生徒会は「いじめ・五大悪語撲滅」のための活動をしてい
ます。全員が繋がる生徒会を目指していく上で、生徒同士が信頼し合
える雰囲気作りは必要不可欠であると考えているからです。
しかし、いじめがあったり、五大悪語などの人を傷つける言葉が使
われていたりしている状況では、そのような雰囲気を作ることはでき
ないということで、今年も生徒会活動「いじめ・五大悪語撲滅」を行
っていくことを決議しました。そして、次のことについて学級討議を
行いました。
《平成 27 年度金井中生徒会総会追加議案書》より
(1) 今までの五大悪語等の言葉、いじめの状況について
・1年生は小学校での学校生活の中で、五大悪語「バカ、死ね、ウザい、消えろ、キモイ」や、
いじめについてはどのような状況だったか話し合って下さい。
・2年生は昨年度の学校生活の中では、どのような状況だったか、また、それについて学年、
学級で行った活動の内容と結果について話し合って下さい。
・3年生は昨年度に学年で実施した五大悪語についてのアンケートのまとめでは、「自分が使
わなければそれでいい」という状況であるが、「自分が使わないことはもちろん、周りが使
っていたらお互いに注意し合う」ということを今後は目指していくとなりました。その後の
変化やいじめの状況について話し合って下さい。
(2) 今後行っていく対策について
「いじめ、五大悪語等の言葉について学校全体が共通の意識を持ち、それらをなくしていきた
いと生徒会執行部では考えています。そのための具体的な取り組みについてのアイディアを出
して下さい。」
さて、次のような詩があります。北原白秋の詩で、タイトルは「ひとつのことば」です。
ひとつのことば
ひとつのことばで けんかして
ひとつのことばで なかなおり
ひとつのことばで 頭が下がり
ひとつのことばで 心が痛む
ひとつのことばで 楽しく笑い
ひとつのことばで 泣かされる
ひとつのことばは それぞれに
ひとつの心を持っている
きれいなことばは きれいな心
やさしいことばは やさしい心
ひとつのことばを 大切に
ひとつのことばを 美しく
自分にとってはなんでもない、軽い気持ちで言った「ことば」でも、相手を傷つけることがあり
ます。また、いやなことやつらいことがあって、自分がいらいらして乱暴な「ことば」が出てしま
うことがありますが、それは、なかなか相手にはわかりません。ましてや、スマホのLINEでは
相手の表情が見えない「ことばの往復」です。送られた「ことば」に傷ついたり、「既読なし」に
むかっと腹がたったりしてしまいます。しかし、それは自分だけの感情であり、相手の本当の気持
ちは分かりません。逆に、優しい励ましの「ことば」で元気づけられることもあります。この詩の
ように、「ひとつのことば」によって、傷ついたり、悲しんだり、喜んだり… さまざまな感情を
よぶのです。たったひとつの送信した「ことば」で、口にした「ことば」で相手の心を傷つけてし
まうことを覚えておきましょう。
インターネットがこの世に誕生して約45年
残念ながらインターネットは、核戦争で生き残るための新たな通信手段として軍事目的で開発さ
れたそうです。その後、民間にもそのシステムが解放され、一気に世界の政治をはじめ、経済に大
きく影響を与えるまでになりました。もはや、インターネットの世界は想像できないところまで来
ています。日本においても国民の80%近くの方が何らかの形でインターネットを利用するまでに
なりました。しかし、インターネット関係の人権侵害にかかる事件は、法務省の統計では毎年70
0件近くあるそうです。この数は、訴えや相談があった数で、氷山の一角に過ぎないのかも知れま
せん。
インターネット関係の人権侵害が起こりやすい特徴として、次のことが
あげられます。
*匿名による加害がしやすいこと
*情報が一気に拡散してしまうこと
*一度被害にあってしまうと回復が困難なこと
インターネットの開発は、軍事目的であったために人権は考慮されていません。このため、利用
する一人ひとりの道徳性に頼らなければなりません。SNSのLINEなどの操作がますます便利
になってきたからこそ、「ちょっと待てよ」「ちょっとあぶないな」「これやばいんじゃない」な
どと思いとどまる意識を育てたいものです。また、安易に自分の個人情報を載せたりせず、自分の
身を守る意識も高めてもらいたいと考えています。