「12月、山口市はクリスマス市になる。」

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「12月、山口市はクリスマス市になる。」
12月1日、山口市亀山町の山口サビエル記念
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聖堂 でクリスマスセレモニーが行われ、山口
●「日本のクリスマスは山口から実行委員会」
を立ち上げ
市は「クリスマス市」になりました。市内各地
1997年、せっかくの史実をもっと広めたいと
はライトアップで美しく彩られ、さまざまなイ
いう思いから、クリスマスイベントを始めたの
ベントが繰り広げられるなど、街全体がクリス
が山口商工会議所青年部です。山口市一の坂川
マス一色に染まっています。
沿いに植樹されたモミの木にイルミネーション
「日本のクリスマスは山口から」
を飾り付け、
をスローガンに、勉強会を重ねつつ、各種のイ
ベントを展開してきました。2006年には、スペ
イン・ナバラ州首相から、日本でのクリスマス
発祥の地として認定を受けています。
ところで、山口市の交流人口は、12月になる
とどうしても冷え込んでしまいます。クリスマ
ス発祥の地という史実があっても、盛り上がる
のは地元だけで、市外・県外から交流人口を呼
●日本のクリスマス発祥の地は山口
び込むまでには至っていません。そこで、商工
室町時代、守護大名として周防国山口(現在
会議所の青年部だけで行っていたクリスマス事
の山口市)を本拠地としていた大内氏は、京都
業に、地域の商工業者をはじめ、各種団体や学
をはじめ朝鮮半島や中国大陸からさまざまな文
生、地域住民など多くの人を巻き込んで、山口
化・学問・宗教を取り入れ、山口が「西の京」
商工会議所内に「日本のクリスマスは山口か
と称されるほどの栄華を築きました。
ら実行委員会」
(以下、実行委員会)を立ち上
第31代当主大内義隆は、キリスト教の宣教師
げ、2009年からさまざまな取り組みを進めてき
フランシスコ・サビエルの布教の願いを受け入
ました。
れ、信仰の自由を認めました。また、古寺をサ
ビエル一行の住居兼教会として与えています。
1552年12月9日(陽暦の12月24日)、日本での布
●新スローガンは、
「12月、山口市はクリスマ
ス市になる。」
教活動をサビエルから託された宣教師コスメ・
まずは、バラバラだったスローガンやロゴを
デ・トーレスらは日本人信徒を招き、降誕祭の
統一して、メンバーの一体感を醸成することか
ミサを行いました。これが日本でクリスマスが
ら始めました。また、イベントには山口市にし
祝われた始まりとされています。もっとも、山
かない魅力のある物語が必要ですが、山口市に
口市が日本のクリスマス発祥の地という史実は、
は、“歴史”という物語があります。ところが、
地元でも長い間注目されることなく、あまり知
その歴史が地域の人にさえ、思うように伝わ
られていなかったようです。
りません。そこで、「12月、山口市はクリスマ
1 1952年、フランシスコ・サビエルの山口での布教活動400年
を記念して建立されたもの。
1991年、
失火により全焼。
1998年
に再建。
ス市になる。」という新スローガンに変更して、
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やまぐち経済月報2014.12
魅力ある物語を浸透させてきたのがこの5年間
でした。その結果、6回目の今回は、企業や各
実行委員会では、電球の数や華やかさを競う
種団体からの参画がどんどん増え、山口ブラン
のではなく、歴史という物語をひとつのキーワ
ドを一緒に伝えていこうという強い思いを共有
ードに、山口・クリスマス市にふさわしいクリ
できるまでになってきました。
スマスライトアップの実現をめざしており、今
例えば、日本航空は2011年から毎年、地域活
年は「灯りのマスタープラン」を策定。プラン
性化支援の一環として、12月中の東京(羽田)
具現化の第一弾として、大内文化が脈々と伝わ
=山口宇部便について「山口クリスマス特便」
る「常栄寺雪舟庭」をライトアップしました。
と運賃名称を設定し、割引運賃を設けています。
庭園は、大内氏の庇護の下にあった雪舟が築庭
乗客数は年々増加しており、交流人口アップに
したものと伝えられています。今後もマスター
つながっています。また、JR西日本はSLク
プランに基づいて、他の歴史的文化財も徐々に
リスマス号を、防長交通は山口市内の園児が飾
ライトアップしていく計画です。
り付けたクリスマスバスを走らせています。
●山口の灯り点灯
クリスマスといえばイルミネーション。新亀
山公園ふれあい広場の旧サビエル記念聖堂を再
現したイルミネーションは、クリスマス市のシ
ンボルモニュメントとして訪れた人を魅了して
います。その他にも、湯田温泉観光案内所・湯
灯りのマスタープラン
山口市には大内文化や
フランシスコ・サビエルのキリスト教布教など、
クリスマス行事の始まりに関係する歴史・文化や、
それに関係する文化財が点在しています。
それらをライトアップし、夜にも浮かび上がらせ
ることで、
山口市の魅力を創出します。
の香通り足湯、一の坂川沿いの桜の木や橋、山
口市中心商店街など市内の史蹟やそれらにつな
がる通りをライトアップし、夜の街をきらびや
●広がりを見せる山口の灯り
かに演出しています。
5年間の広報活動が実り、歴史という物語を
熟成させ、多くの企業や団体か
らクリスマス事業を応援しても
らえるようになりました。
市外・
県外からの交流人口も着実に増
えています。
460年前に小さな灯りで始ま
った「日本のクリスマス」
。山
口商工会議所の青年部、その活
動を引き継いだ「日本のクリス
マスは山口から実行委員会」の
パワーにより、山口の灯りが大
きな広がりを見せようとしてい
ます。
▲旧サビエル記念聖堂シンボルモニュメント
(松本 敏明)
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