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知ってますか?自民党改憲草案
~明日の日本と私の自由~
2015年5月23日
明日の自由を守る若手弁護士の会
共同代表 黒澤 いつき
1.「憲法」とは何か
そもそも憲法とは何か。
* 紙芝居「王様をしばる法 ~憲法のはじまり~」
(1)国民が国家権力をしばる法
近代民主主義国家の土台となっている国家観・世界観
【天賦人権】
人は生まれながらにして自由・平等であり、誰からもその権利を奪われない。
【社会契約】
国家というものは、個々人の自由と人権を守るために必要だから、作られた。
(国家の正当性の契機が市民との「契約」にある。)
【立憲主義】
(放置すれば必ず権力は暴走し、国民の自由・人権をないがしろにする、という前提
で)国民の自由・人権を確保するために、国家権力を法で縛る。
【フランス人権宣言第16条】
権利の保障が確保されず、権力の分立が定められていないすべての社会は、憲法をも
たない。
権力の組織や作用、相互の関係についての規律は、どのような国家の「憲法」にも共通
する。しかし日本を含む近代民主主義国家における「憲法」の最大の特徴は、国民が国家
に対して突きつける法(国家権力が暴走しないように、縛る法)であるということである。
(2)個人の尊重と公共の福祉
日本国憲法第13条
近代の思想の根源的な思想が書かれている。
【個人の尊重】
誰もが、自分の個性を活かした「自分らしい」人生を歩むことができる。一人ひとり
が、尊厳ある人間として生きることができる。
↓
自分らしく生きるためには、どんな自由・人権が必要?
人が誇りを持った「個人」として生きる上で必要不可欠な自由・人権が、憲法に列挙さ
れている。
例:思想良心の自由、表現の自由、信教の自由、職業選択の自由、財産権、生存権、
教育を受ける権利、労働基本権、奴隷的拘束からの自由 etc…
【公共の福祉】
人の自由や人権を制限することがあるとすれば、それは他者の自由・人権とぶつかっ
てしまう時だけである、という考え。
(個人の基本的人権よりも優先するものは無い、と
いう前提がある。)
(3)日本国憲法の三大原則
【国民主権】
この国のあり方を最終的に決定するのは国民自身であること。(⇔戦前は天皇主権)
【基本的人権の尊重】
近代の思想や「個人の尊重」の精神から。
【平和主義(戦争放棄)】
平和は、自由・人権を行使する前提である。逆に言えば戦争は最大の人権侵害(戦争遂
行のために自由を制約され、あるいは大量殺人に荷担させられ、または命を差し出すこと
になる。)軍事国家として暴走の果てに敗戦を迎えた日本は、世界に先駆けて戦争・戦力
を永久に放棄することで、国際社会での信頼を回復した。
2
自民党の改憲草案(「憲法」の無い国へ)
(1)改憲草案の特徴
・ 立憲主義の否定(国家が国民を縛る法)
・ 国民の自由・人権よりも、国家と秩序
・ 国防軍の創設(戦争できる国づくり)
**参考 起草委員達のツイート**
片山さつき議員(2012.12.7)
国民が権利は天から付与される、義務は果たさなくていいと思ってしまうような天賦人
権論をとるのは止めよう、というのが私たちの基本的考え方です。国があなたに何をして
くれるか、ではなくて国を維持するには自分に何ができるか、を皆が考えるような前文に
しました!
礒崎陽輔議員(2012.5.28)
時々、憲法改正草案に対して、「立憲主義」を理解していないという意味不明の批判を
頂きます。この言葉は、Wikipedia にも載っていますが、学生時代の憲法講義では聴いたこ
とがありません。昔からある学説なのでしょうか
(2)人権の封殺
① 前文
日本国憲法と改憲草案の前文を比較すると、各々の根底に流れる発想や目指す国家が見
えてくる。
日本国憲法 → 「日本国民は」で始まる
天賦人権・民主主義 etc「人類普遍の原理」
全世界の恒久平和
改憲草案 → 「日本国は」で始まる
天賦人権・社会契約・立憲主義の理屈を排除
日本固有の伝統・文化・歴史の強調 / 普遍より固有
戦争の反省無しの「国際協調」
② 13条
日本国憲法13条 →「個人として尊重」「公共の福祉に反しない限り」
改憲草案13条 →「人として尊重」「公益及び公の秩序に反しない限り」
③ 個々の人権規定
表現の自由(21条)→改憲草案は第2項を新設。
「公益及び公の秩序を害することを目的とした」表現・結社は認められない
信教の自由(20条)→改憲草案は2項に但し書きを加筆
権力が社会的儀礼又は習俗的行為の範囲を超えない宗教的活動をすることを許した。
(靖国神社への参拝や玉串料奉納を念頭に置いた規定)
3.「戦争する国」づくり(国防軍創設と国家総動員)
(1)戦争放棄の放棄(国防軍創設)
・国防軍設置
・集団的自衛権行使(改正草案9条2項)
・軍による治安維持活動(改正草案9条の2 第3項)
・「審判所(=軍法会議)」の設置(改正草案9条の2 第5項)
(2)緊急事態条項の創設(国家総動員)
「緊急事態宣言」(改正98条・99条)
→ ・国会の機能停止
・全権を内閣へ集中
・国民の服従義務
4.改正要件の緩和と憲法尊重擁護義務
(1)改正要件緩和
日本国憲法96条 → 総議員の「3分の2」以上の賛成
改正草案100条 → 総議員の「過半数」の賛成(草案100条1項)
「日本は他国に比べて改正要件が厳しい」?
→ 事実誤認。他国も同様に厳格な要件を課している。
憲法は国の最高法規であり、硬性憲法であることは当然。
(2)憲法尊重擁護義務
日本国憲法99条 → 天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員
改憲草案102条 → 国民、国会議員、国務大臣、裁判官その他の公務員
憲法は国民が国家権力を縛る法であるから、国民には憲法尊重擁護義務は課されない。
改憲草案が立憲主義を否定していることが最もよく分かる条文。
5.最後に
法体系を、『平時』のものから『戦時』のものへ変えようという企て。
その頂点が改憲であり、
「天皇を頂点にいただく専制国家」がパッケージとして提案さ
れている。
「憲法のあるこの社会」を守らなければならない。