EXAFS 解析実習 in XAFS 夏の学校 2015 ○仁谷 浩明 KEK-PF, 総研大高エネルギー加速器科学研究科 [email protected] 1.はじめに 放射光施設等で取得した XAFS スペクトルを正しく理解するためには、データの解 析を行い、測定したスペクトルから自分の欲しい情報が引き出せるかどうかが重要で ある。特に EXAFS に関しては、XANES のように一見しただけでは構造情報は得られ ないことの方が多いため、データ解析により構造パラメータを決定する必要がある。 EXAFS の理論に関しては他の講義で説明があると思うが、EXAFS 振動は EXAFS 公 式を用いることでほぼ説明することができる。従って、この EXAFS 公式を用いて結 合距離や配位数といった構造パラメータを変数とした多変数の最小二乗法による解 析(カーブフィッティング)で構造パラメータの最適化を行う方法が一般的である。 カーブフィッティングは計算量の問題から計算ソフトウェアを利用することにな るが、EXAFS 解析に特化したソフトウェアがいくつか利用可能であり、国や地域に よってメジャーなソフトウェアが異なっている。日本においては、UWXAFS パッケ ージの Feffit[1]の流れを汲む Artemis[2]のユーザーが多い。従って本演習でも Artemis を 用いた EXAFS 解析演習を行う。 2.Artemis について Feffit は XAFS 計算ソフトである FEFF と組み合わせて EXAFS 解析をするためのソ フトウェアである。Artemis も同様に FEFF と組み合わせて使用するソフトウェアで はあるが、Feffit に相当するソフトウェアは Ifeffit というソフトウェアが担当してお り、Artemis は Ifeffit の GUI フロントエンドソフトウェアという立場にある。Artemis での操作結果は Ifeffit の実行スクリプトとして伝達され、FEFF の計算結果を用いつ つ EXAFS 解析を行う構成となっている。従って慣れたユーザーであれば、Artemis を 用いなくても Ifeffit の実行スクリプトを用意することで同様の処理が可能である。こ れは大量のデータを一度に処理する場合などに有効である。Artemis はこれまでコマ ンドラインで行っていた操作をグラフィカルに、また操作結果をリアルタイムに可視 化できることから、Feffit に比べて初心者でもかなり扱いやすいものとなっている。 EXAFS 解析の基礎知識があれば数時間のトレーニングで使いこなせるはずである。 3.演習について 本日の演習は下記の内容を予定している。 放射光施設で得られるデータ形式の解説 Athena による生データの前処理(バックグラウンド除去、フーリエ変換) Artemis によるフィッティング操作操作の基本 実測データを用いた解析演習(ナノ粒子触媒材料の予定) 4.参照文献 [1] Analysis of multiple-scattering XAFS data using theoretical standards, M. Newville, B. Ravel, D. Haskel, J. J. Rehr, E. A. Stern, and Y. Yacoby, Physica B208&209, p154-155 (1995) [2] B. Ravel and M. Newville, ATHENA, ARTEMIS, HEPHAESTUS: data analysis for X-ray absorption spectroscopy using IFEFFIT, Journal of Synchrotron Radiation 12, 537–541 (2005)
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