Ni-Mn合金の磁気EXAFS解析Ⅱ 小笠原智博A*、宮永崇史A、岡崎禎子A、 匂坂康男A、永松伸一B、藤川高志B 弘前大学理工学部A 千葉大大学院自然B 緒言 ・・一原子あたりの磁気モーメントの大きいMn合金はMn原子 Ni3Mn合金は熱処理で規則化しMn原子の位置が変化す ため磁性に大きな影響を受ける。 の局所構造と密接な関係があり大変興味深い。 ・中性子回折法では、すでにNixMn1-x(x=0.75,0.8~0.95)にお ける磁気モーメント分布は調べられているが、長距離秩序を 基本としているので、Mn原子の磁気モーメントの変化が、 磁気モーメントを保持しながら、強磁性または反強磁性結合 電子状態の変化により局所磁気モーメントが変化している 区別することができない。 ・そこで、3d遷移金属合金の構造と磁性の研究として、Ni3Mn 合金を磁気EXAFS法を用いて解析し、理論計算との比較から 磁気構造を調べた。 Ni3Mn合金 Ni3Mn近傍合金はX線回折やEXAFS解析の結果から、格子 定数が3.59Åの面心立方格子を形成する。 熱処理によりCu3Auタイプ規則状態へと相転移し、このとき 磁性は常磁性から強磁性へと変化する。 規則状態 不規則状態 熱処理 3.59Å 693K Mn Ni 常磁性 強磁性 f.c.c. 磁気EXAFS測定用試料 作成した合金を研磨し、厚さ~20μmのホイル状とした ものを、Arガス雰囲気中693Kで熱処理する。 試料名Ni3Mn 格子構造 f.c.c. 熱処理時間 規則度 (S) (hr) 0.44 50 0.54 100 0.78 500 飽和磁化 (emu/g) 50.0 56.4 85.9 EXAFS法 X線 吸収原子 散乱原子 吸収スペクトルを解析することによって原子間距離や 配位数などの局所構造が分かる X線吸収スペクトル 吸収係数 2 吸収端 1 μ0:エッジジャンプ 0 -1 6400 6600 6800 E(eV) 7000 EXAFSの振動構造を表す 7200 kχ(k) kχ(k) 0.5 0 -0.5 0 5 -1 k(Å ) 10 15 さらに、kχ(k)スペクトルをフーリエ変換すると 第一近接原子 |FT|/arb.unit 1 第三 第四 0.5 第二 0 0 2 4 6 r/Å 8 10 Ni3Mn規則状態。 青がMn,赤がNiに対応。 原子間距離や配位数などの局所構造が分かる。 Magnetic EXAFS法 円偏光変調法 スピン偏極光電子 円偏光X線 吸収原子 散乱原子 外部磁場 磁気モーメントに比例したスペクトルが得られ、スピ ン分極などの局所的な磁気情報を得る。 実験と解析 •SPring-8 BL39-XU 分光結晶面 Si(111)面 試料を面内磁化方向に設置 透過法を用いてMn-K(6500keV) 吸収端を測定 •解析 XANADUプログラム 中心原子 Mn原子 スムージング 吸収・散乱原子位相補正 後方散乱能補正 k範囲 10回 なし k1 2~10.8Å-1 測定時のイメージ図 実験の解析結果 •磁気 EXAFS •EXAFS (×10-3) Spectum of kχ(k) 50hr 100hr 500hr kχ(k)/Å-1 kχ(k)/Å-1 1 0 Magnetic Spectrum of kχ(k) 50hr 100hr 500hr 0.5 0 -1 2 4 6 k/Å-1 8 10 2 (×10-3) Fourier Transform of EXAFS |FT|(r)|/arb.unit |FT(r)|/arb.unit 50hr 100hr 500hr 0.6 0.4 0.2 0 0 2 4 r/Å 6 8 3 4 5 k/Å-1 6 7 8 Fourier Transform of Magnetic EXAFS 50hr 100hr 500hr 0.3 0.2 0.1 0 0 2 4 r/Å 6 8 磁気EXAFS理論計算 磁気EXAFSの計算プログラム(千葉大学理学 部藤川研究室開発) スピン偏極した電子状態 原子配置 を与えることにより磁気EXAFSの計算を行う。 多重散乱効果とデバイワラー因子は無視した。 理論と実験の比較 •磁気 EXAFS EXAFS Magnetic Spectrum of kχ(k) Exp.500hr Cal.(×0.7) kχ(k)/Å-1 1 0 -1 2 4 1st (Ni) |FT(r)|/arb.unit 0.6 2nd (Mn) k/Å Fourier Transform of Magnetic EXAFS Exp.500hr Cal.(×0.7) 3rd (Ni) 4th (Mn) 2 4 r/Å 6 8 Exp.500hr(×103) Cal.(×4.2×102) 4th 1st 0.4 0.2 0 0 1 6 8 k/Å-1 Fourier Transform of EXAFS 0.4 Exp.500hr(×103) Cal.(×4.2×102) 青Mn、赤Niに、数字は中心原子 0 から見た配位順に対応 2 4 6 8 10 10Ni3Mn規則状態図 -1 |FT(r)|/arb.unit kχ(k)/Å-1 Spectrum of kχ(k) 2nd 0.3 3rd 0.2 0.1 0 0 2 4 r/Å 6 8 磁気EXAFS理論シミュレーション 1 (×10-3) (Mn=5, Ni=1) (×10 ) (Mn=4, Ni=1) -3 (×10-3) (Mn=3, Ni=1) (×10 ) (Mn=2, Ni=1) (×10-3) (Mn=1, Ni=1) -3 (×10 ) (Mn=0, Ni=1) 1 |FT|/arb.unit 1.5 |FT|/arb.unit -3 (×10-3 ) (Mn=5, Ni=2) -3 (×10 ) (Mn=5, Ni=1) (×10-3) (Mn=5, Ni=0) 0.5 0.5 0 0 2 4 r/Å 6 I1st A BMn B BNi I 2 nd C BMn D BMn E BMn 8 0 0 2 4 r/Å 6 I 2 nd E BMn Mn Ni A B I1st B B 8 磁気EXAFS|FT|のピーク強度比 2nd/1st MnとNiの磁気モーメント比 0.55 0.5 0.45 0.4 0.35 0.3 0.25 0.2 0.15 0.1 0.05 0 0 1 2 3 4 5 6 7 8 電子状態で与えた磁気モーメント比 Mn/Ni 熱処理時間 (hr) 実験のピーク強度比 (2nd/1st) 磁気モーメント比 (Mn/Ni) 50h 0.30 1.97 100h 0.33 2.45 500h 0.40 3.82 磁化と磁気モーメント比の関係 磁気モーメント比 Mn/Ni 4 3.5 500hr 3 2.5 100hr 2 50hr 1.5 45 55 65 75 85 95 磁化 emu/g 熱処理時間の増加による、磁化の増加に伴って 磁気モーメント比も増加する。 まとめ 熱処理時間の増加 規則化によって磁化の増加 磁気モーメント比(Mn/Ni)の増加 Mn原子の磁気モーメントが増加 Ni原子の磁気モーメントが減少 磁気モーメントを保持しながら、強磁性または反強磁性結合 disorder相での理論計算を行い、交換相互作用による 各ピークの影響を調べる。 電子状態の変化により局所磁気モーメントが変化している
© Copyright 2024 ExpyDoc