橋本まき (花粉症の修飾における視床下部 下垂体 副腎軸(HPA軸)の

氏
名
学位の種類
学位記番号
学位授与年月日
学位授与の要件
学位論文名
論文審査委員
橋本まき
博士(
医学)
第5 4 9 7 号
平成2 2 年 3 月 2 4 日
学位規則第4 条 第 1 項
Role of Hypothalamo-Pituitary-Adrenal Axis in the Modulation of
PoIIinosis induced by Pol 1en Antigens
(花粉症の修飾における視床下部■下垂体 ■副 腎 軸 (
HPA 軸)の役割)
主 査 教 授 井 上 正 康
副 查 教 授 切 池 信 夫
副 查 教 授 石 井 正 光
論 文 内 容 の 要 旨
ストレスはさまざまな種類のアレルギー疾患に影響を与えることが知られているが、
その詳しい作用
やメカニズムは不明である。
花粉症もストレスに影響される可能性が高いが、
その実態は不明である。
本研究は、花粉症の病態に対する軽度ストレスの影響と視床下部• 下 垂 体 • 副 腎 軸 (
H P A 軸)の関与
の有無を明らかにすることを目的として行われた。
8 週 令 の B D F - 1 系雄マウスにスギ花粉抗原溶液および水酸化アルミニウムゲル懸濁液を2 回腹腔内
投与した後、 10〜 1 6 病日にスギ花粉抗原溶液を毎日鼻腔内投与して感作した。2 1 病日に花粉で再感
作後、症状を経過観察すると同時に、血中のサイトカイン(
I L - 1 0 と I F N - r ) お よ び I g E の濃度を測
定した。他の実験では再感作直前に3 時間の拘束ストレスを負荷して同様の解析を行った。 さらに、
下垂体切除、副腎摘除、あるいは A C T H を投与したマウスで花粉症の病態を比較解析した。
解析の結果、花粉感作マウスでは再感作後に血漿中のI L - 1 0 と I g E の濃度が著明に上昇し、くしゃみ
と鼻こすりの回数が増加することが判明した。軽度の拘束ストレス負荷群ではI L - 1 0 と I g E の濃度上
昇およびくしゃみと鼻こすり回数の増加が抑制された。下垂体摘除群では IL-10 、I g E お よ び IFN-r
の濃度とくしゃみの回数がさらに増加した。逆に、副腎摘除群では I L - 1 0 と I g E の濃度が低下して
I F N - r が増加し、 くしゃみは抑制された。A C T H 投与群でも IL-10 が抑制されて I F N - r が増加し、鼻
こすり回数が減少した。
以上の結果から、視床下部 • 下 垂 体 • 副 腎 軸 (
H P A 軸)および A C T H はサイトカインの血中バランス
およ び I g E の産生に影響し、花粉症の病態を修飾すること、および軽度のストレスはT h 2 型サイ卜力
インの濃度と I g E 産生を抑制し、花粉症の病態を軽減する可能性が示唆された。
論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
ストレスはさまざまな種類のアレルギー疾患に影響を与えることが知られているが、その詳しい作用
や分子機構は不明である。花粉症もストレスに影響される可能性が高いが、その実態は不明である。
本研究は、花粉症の病態に対する軽度ストレスの影響とそれに対する視床下部• 下垂体•副腎軸の関
与の様相を明らかにすることを目的として行われた。8 週令の B D F - 1 系雄マウスにスギ花粉抗原溶液
および水酸化アルミニウムゲル懸濁液を2 回腹腔内投与した後、 10— 1 6 病日にスギ花粉抗原溶液を
毎 日 1 回鼻腔内投与して感作した。2 1 病日目に花粉で再感作後、症状を経過観察すると同時に、血
中のサイト力イン(
I L - 1 0 と IFN- ァ)お よ び I g E の濃度を測定した。他の実験では、再感作直前に 3
時間の拘束ストレスを負荷し、以下同様の解析を行った。さらに、下垂体切除、副腎摘除、あるいは
A C T H を投与したマウスで花粉症の病態を比較解析した。解析の結果、花粉感作マウスでは再感作後
に血漿中の I L - 1 0 と I g E の濃度が著明に上昇し、くしゃみと鼻こすりの回数が増加することが判明し
た。軽度の拘束ストレスを負荷した群では、IL-10 と I g E の濃度上昇とくしゃみや鼻こすりの回数の
増加が抑制された。下垂体摘除群では IL-10 、IgE および I F N - r の濃度とくしゃみの回数がさらに増
加した。逆に、副腎摘除群では IL-1 0 と I g E の濃度が低下してI F N - r が増加し、 くしゃみの回数は
抑制された。A C T H 投与群でも IL-1 0 が抑制されて I F N - r が増加し、鼻こすり回数が減少した。 これ
らの結果から、視床下部 • 下 垂 体 • 副腎軸とそれに由来するA C T H は、T h l お よ び T h 2 型サイトカイ
ンの血中バ ラ ン ス と I g E の産生に影響し、花粉症の病態を修飾すること、および軽度のストレスは
T h 2 型サイ卜力インの濃度と IgE 産生を抑制して病態を軽減する可能性が示唆された。
一
268
—
本研究は、花粉症の病態発症に おける軽度 ストレスの影響および視床下部•下 垂 体 •副腎軸とACTH
の役割を明らかにしたものであり、その医学的意義は大きい。よって、本 研 究 者 は 博 士 (
医学)の学
位を授与されるに値するものと判断された。
一
269
一