201412250000322354 原子炉下部キャビティへの注水はコアキヤ

高浜原発審査書案/原発再稼働への市民からの意見書
http://www.iwanami.co.jp/kagaku/20140810.html
中西正之20150104-1
201412250000322354
原子炉下部キャビティへの注水はコアキヤ
ッチャとは全く異質の物1
<原子炉下部キャビティへの注水によるMCC
I対策は危険な方法>
210ページページ溶融炉芯・コンクリート相互
作用、申請内容
(1)『本格納容器破損モードの特徴原子炉圧力
容器から溶融炉心が原子炉格納容器内の床上に
流出し、溶融炉心と接触した床のコンクリートが
熱分解により浸食され、原子炉格納容器の構造部
材の支持機能が喪失し、原子炉格納容器の破損に
至る。』と関西電力は説明している。
(2)『対策の考え方溶融炉心を冷却し、溶融炉
心によるコンクリート浸食を抑制するために、原
炉下部キャビティへ注水する。』と関西電力は説
明している。
この方法は、ヨーロッパ、アメリカ、ロシアの
規制基準では危険と認識される方法で、このよう
な危険なMCCI(溶融炉芯・コンクリート相互
作用)対策を行う国は日本以外どこもない。
詳しくは、「福岡核問題研究会の川内原発審査
書の過酷事故への対策を問う(3)─溶融炉心とコ
ンクリート相互作用への「水張り対策」は世界的
に珍策─」
(http://jsafukuoka.web.fc2.com/Nukes/blog/
files/7b60a28e4ffc440655af7828c14e0aec-27.h
tml)に述べられている。スリーマイル島原発の
過酷事故の発生やチエルノブイリ原発の過酷事
故の発生後、世界中で、「原子炉下部キャビティ
への注水によるMCCI対策」の可能性を求めて、
多数の実験・研究が行われているが、水蒸気爆発
の危険性が否定できないので、海外では採用され
ていない。IAEAの新安全基準でも、水蒸気爆
発については「原子炉キャビティに水が存在する
状態と・・・、周囲の水の急速な蒸発及び加速を
生じ著しい圧力荷重及び衝撃荷重を生み出すこ
とになる。」また、「原子炉キャビティ内での水
の存在は、原子炉キャビティ支持壁及び格納容器
ライナなどの構造物の重要な部材がこれらの大
きな衝撃荷重に耐える能力が無いのであれば、適
正なレイアウトをする事によって避けられる。」
1
と説明されている。これは、具体的には、圧力容
器外面冷却(IVR-AM)である。と認識されている。
原子炉圧力容器外の溶融燃料‐冷却材相互作
業199から203ページ4‐1.2.2.41
99ページ1.(1.)1関西電力は、『本格納
容器破損モードの特徴およびその対策原子炉圧
力容器外のFCIには、衝撃を伴う水蒸気爆発と、
溶融炉心から冷却材への伝熱による水蒸気発生
に伴う急激な圧力上昇(以下圧力スパイクとい
う)が有るが、水蒸気爆発の発生の可能性は極め
て低いと考えられるため、圧力スパイクについて
のみ考慮する。』と説明している。このことにつ
いては、原子力規制委員会は新規制基準に係わる
適合性審査で厳しく追及している。関西電力は第
58回原子力発電所の新規制基準適合性に係る審
査会合の資料2‐2‐6で国内外のFCI実験
結果を提出したが、これらの実験では、水蒸気爆
発が起きている。第102回適合性審査とそれに
部分的な修正が行われた第108回適合性審査で
関西電力は水蒸気爆発が起きないと説明してい
る。『国内外の多くのモデル実験では、確かに水
蒸気爆発が起きているが、それらの実験で水蒸気
爆発が起きたのはトリガリングを与えた場合だ
が、実際の炉ではトリガリングが働く可能性は少
ないので、水蒸気爆発は起こらないと結論でき
る。』と説明がされている。したがって、過酷事
故の発生時、格納容器に水蒸気爆発が起きない事
が証明できるとした。
そして、202ページの2.審査結果は『格納
容器破損モード「原子炉容器外の溶融燃料‐冷却
材相互作用」において、申請者が水蒸気爆発の発
生の可能性は極めて低いとしていることは妥当
と判断した』と報告されている。この検討は適合
性審査では少ししか行われていない。国内の高温
溶融炉の水蒸気爆発の事故調査では、水蒸気爆発
が起きるのは、溶融金属が一度に大量に水中に落
下する場合、連続して落下しているが大きなトリ
ガリングが有った場合、溶融金属の上部を覆って
いるスラグの黒皮がトリガリングで破けて、水と
溶融金属が急激に接触する場合の3ケースであ
る。溶融燃料‐冷却材相互作用においても、溶融
燃料が一度に大量に水中に落下する場合、連続し
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中西正之20150104-1
て落下しているが大きなトリガリングが有った
場合、溶融燃料を覆っているクレストの黒皮がト
リガリングで破けて、水と溶融燃料が急激に接触
する場合の3ケースである。しかし、適合性審査
では1と3のケースの検討はないし、どのような
トリガリングが予測できるかの検討が無い。これ
らの事を検討すべきである。
子力規制庁や加圧水型原子炉を使用している4
電力会社はコアキヤッチャには殆ど注意を向け
ていない。
新規制基準による適合性審査は、加圧水型の原
子炉が先行審査されたが、これまでに適合性審査
の議事録にコアキヤッチャが記録されたのは数
行のみである。「第102回新規適合性に係わる
審査会合の議事録24ページに、北海道電力の長
沢氏は「あと、二つ目でございますが、国内PWR
では考慮不要な現象ということで、こちらにつき
ましては、「溶融炉心・セラミック相互作用」と
いうことで、コアキヤッチャ、これが国内のPWR
につきましてはコアキヤッチャがございません
ので、そういったところとしては、現象としては
挙げられないと考えているものでございます。」
と説明しているが、この見解は九州電力、北海道
電力、関西電力、四国電力の共通の見解である。
上記4電力会社は、国内のPWRにつきましては
コアキヤッチャが無いので「溶融炉心・セラミッ
ク相互作用」の検討の必要はないという、極めて
無責任な説明を行っている。高浜原発の審査書案
は、「溶融炉心・セラミック相互作用」の検討の
必要はないとの説明を承認しているが、極めて検
討不十分と考えられ、詳細な検討をする必要があ
る。
元々、日本の原発関係者はヨーロッパ、ロシア、
アメリカの原子力関係者に比べて、MCCI(溶
融炉心/コンクリート相互作用)対策への対応が
遅れていた。
『平成13年に米国バルチモアで原子力安全に
関する国際会議が行われている。
『平成12年度 ICONE-8 に関する報告書 平成
13年3月(財)原子力発電技術機構 原子力安
全解析所 2.2.8 コアキャッチャー
(1) 溶融物広がり現象の数値モデル、(ドイツル
ール大学)・・・コアキャチャーそのものには直
接的な興味はないが、原子炉容器外での溶融物挙
動の観点から興味ある情報であった。
(2) 原子炉容器外の炉心溶融事故緩和の開発の
ための研究、(ドイツSiempelkamp Nuklear- und
Umwelttechnik GmbH& Co.) ・・・コアキャチャ
ーそのものには直接的な興味はないが、原子炉容
201412250000322472
原子炉下部キャビティへの注水はコアキヤ
ッチャとは全く異質の物2
<関西電力も原子力規制委員会もコアキヤッチ
ャの検討はしていない>
210ページページ溶融炉芯・コンクリート相互
作用、申請内容
「(2)『対策の考え方溶融炉心を冷却し、溶融
炉心によるコンクリート浸食を抑制するために、
原炉下部キャビティへ注水する。』と関西電力は
説明している。」に関して。
「原子力規制庁記者ブリーフィング日時:平成
26年9月16日(火)14:00∼
対応:片山長官官房審議官(官房担当)
司会よろしいですか。じゃ、マサノさん、最後で。
簡潔にお願いします。
○記者川内原発の工事計画申請書についてなん
ですけれども、先日のパブコメについては、その
中でコアキヤッチャについての意見が4∼5か所
出ていたのに対して、機能が確保されればよいと
いう説明を市村管理官の方はなさっておられま
したが、工事計画書の中で拝見をしますと、パブ
コメに対する見解として、注水をすれば、原子炉
下部に注水をするということが書かれていまし
て、それでコアキヤッチャと同じ機能を確保する
というお返事が書かれていたんですが、工事計画
書の中では、それを見ますと、可搬型ポンプ車で
注水するということが書かれていました。」とあ
るように、原子力規制庁は原子炉下部キャビティ
への注水とコアキヤッチャは同等との認識をさ
れている。これは、関西電力も同じと思われる。
コアキヤッチャは「EUR規制基準」でCs1
37の放出量を30TBq以下になるようにす
るための最良の手段とされた。しかし、日本の原
2
高浜原発審査書案/原発再稼働への市民からの意見書
http://www.iwanami.co.jp/kagaku/20140810.html
中西正之20150104-1
器外での溶融物挙動の観点から興味ある情報で
あった。
(3) コアキャッチャー材料と溶融コリウムの相
互作用に関する新しい実験結果、(ロシア
LSK/StPetersburg) ・・・コアキャチャーそのも
のには直接的な興味はないが、原子炉容器外での
溶融物挙動解析の観点から興味ある情報であ
る。』 この国際会議で3件のコアキャッチャー
の報告が行われているが、何れにも「コアキャチ
ャそのものには直接的な興味はないが」と理解し、
日本の技術陣はコアキヤッチャを検討していま
せんでした。
そして、コアキャッチャーの事が本当によく理
解できているとは思われないのに、原子炉下部キ
ャビティへの注水はコアキヤッチャとは同じと
いう結論は納得できるものではありません。
201501040000323200
原子炉下部キャビティへの注水はコアキヤ
ッチャとは全く異質の物3
<高浜原発の原子炉キャビティへの注水炉はス
ウェーデンのBWR型原子炉、川内炉に次ぐ世界で
3番目の劣悪炉>210ページページ溶融炉
芯・コンクリート相互作用、申請内容
(2)『対策の考え方溶融炉心を冷却し、溶融炉
心によるコンクリート浸食を抑制するために、原
炉下部キャビティへ注水する。』と関西電力は説
明している。
ロシアの新型原子炉VVER-1000についての
Khabenskyらの論文
(http://kns.org/jknsfile/v41/JK0410561.pdf
)によると
「1.はじめに現代の原子力発電所の設計は、格納
容器内の核燃料溶融を局部的に食い止める、SAM
(シビアアクシデントマネジメント)の重要な装
置を必要とする。溶融炉心の固定化のいくつかの
概念が開発され、実装されている。まずそれらの
核膜沸騰(DNB)から逸脱せずに外部容器表面の
受動冷却と組み合わせた容器内コリウムの保持
(IVR)がある。この技術的な解決策は非常に効
率的で一見単純であるが、限界がある。特に溶融
池形成原理と物理科学的知識と特定の現象のか
3
なりのモデリングの不確実性により、十分には解
明されていない。この理由のため、核膜沸騰の限
界熱流束と比較して容器の外表面からの熱流束
にかなりの余裕が必要とされる。現在では、保守
的な要求事項を遵守し、この保証された余裕は小
規模および普通の容量炉で可能です。大型炉
(1000 MW以上)のためのIVRアプリケーションは、
適切な安全余裕を達成しない。その結果、かなり
の追加の実験研究と洗練された関連数値コード
の開発は、このために必要である。
圧力容器外コリウムの保持(EVR)において開
発中の他の概念。この点で、いくつかのR&D方向
がある。この最貧コンセプトはBWR型原子炉[6]に
おいてスウェーデンで容認されている。このアプ
ローチは、原子炉下部のキャビティの水で満たさ
れたコンクリートピットで溶融炉心を処理する。
溶融炉心のキャッチと固定化のこの概念は、FCI
(燃料・冷却剤相互反応)による水蒸気爆発の危
険があり広範囲な人の承認を得られていない。
現在のEVRには、2 つの概念が完全に開発され
適用されている:-VVER-1000で原子炉ロシアの原
子力発電所のために開発されたるつぼ型キャッ
チャーと-欧州EPR原子炉のために開発され溶液
拡散キャッチャー。」
この論文で示されているのは、「原子炉圧力容
器内で核燃料が溶融することは起こり得る。現代
の原子炉は原子炉圧力容器内で核燃料が溶融し
た場合の対策設備が必ず必要である。初めに現れ
た対策設備は、溶融燃料原子炉圧力容器内冷却固
化を目的とする容器内コリウムの保持(IVR)で
ある。この方法は単純ではあるが欠点も多く、特
に大型炉では問題が多い。
原子炉基部のコンクリート製キャビティに水
を貯水し、原子炉圧力容器から落下した溶融核燃
料を水で冷却する方法が、スウェーデンのBWR型
原子炉に現れたが、これは最悪の方法である。世
界中で、この方法はFCI(燃料‐冷却材相互作用)
による水蒸気爆発の危険が否定できないとして、
認められていない。
2番目に現れた方法は、圧力容器外コリウムの
保持(EVR)であり、ロシアの原子炉のるつぼ型
キャッチャーと欧州EPR原子炉の溶液拡散型キャ
高浜原発審査書案/原発再稼働への市民からの意見書
http://www.iwanami.co.jp/kagaku/20140810.html
中西正之20150104-1
ッチャーである。EPR原子炉の溶液拡散型キャッ
チャーは日本ではよく知られるようになったが、
ロシアの原子炉のるつぼ型キャッチャー
VVER-1000、VVER-1200が知られるようになったの
は、つい最近である。るつぼ型キャッチャーはア
メリカでも採用されており、世界各国での採用例
が多い。そして、ロシアの原子炉のるつぼ型キャ
ッチャーを取り付けた炉はすでに中国で2炉運
転されているようで、るつぼ型コアキャッチャー
のほうが先行しているようである。
新規性基準は世界最高水準との説明があるが、
水蒸気爆発による格納容器破裂の危険を防止で
きない新規制基準は、実質は世界中で悪いほうか
ら数えて2番目に位置するものと考えられる。高
浜原発の再稼働は認められない。
4