消費税 課税事業者の判定 被相続人の事業を承継した

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2015 年 6 月 11 日(木)
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被相続人の事業を承継した、の意義
のでは、と理解することもできます。
消費税法の法令解釈通達の文言
しかし、法令解釈通達では、この事業の
その年に相続があった場合において、そ
の年の基準期間における課税売上高が千万
円以下(ゼロも含む)である相続人が、当
該基準期間における課税売上高が千万円を
超える被相続人の事業を承継したときは、
当該被相続人の当該相続のあった日の翌日
からその年の 12 月 31 日までの間における
課税資産の譲渡等については、免税事業者
の規定の適用はありません。
承継の解釈にあたっては、単に、特定遺贈
によるものは含まれないとし、その特定遺
贈が相続人に対するものなのか、それ以外
の者に対するものなのか、まったく触れて
いません。ただ、素直に読めば、特定遺贈
はいずれの場合も「承継」にはあたらない、
と取ることもできます。
解説書の中には、特定遺贈について「た
とえその者が相続人であっても相続によっ
て事業を引き継いだことにはならない」と
消費税法上の相続及び相続人とは
消費税法上、
「相続」及び「相続人」につ
いては、
「相続」には包括遺贈を含むものと
し、
「相続人」には包括受遺者を含むものと
する、と規定しています。
この規定は、
「包括受遺者は相続人と同一
の権利義務を有する」、この民法の規定から
きているものと理解されます。
では、特定遺贈の場合はどうなるか、で
すが、遺贈は相続ではなく遺言による贈与
論述しているものもあります。
「遺贈する」と「相続させる」の文言解釈
相続人に対する特定遺贈で「遺贈する」
と「相続させる」の文言があります。どち
らでもよさそうですが、最高裁は、
「相続さ
せる」の文言は、遺産分割方法の指定であ
ると解し、当該遺贈を放棄するには相続そ
のものを放棄しなければならないと解して
います。
とすれば、相続人に対する特定遺贈につ
の一種ですから、相続による承継にはあた
らない、と考えられているようです。
しかし、本来の相続人は包括遺贈を受け
るかどうか、特定遺贈を受けるかどうかに
かかわらず相続人であることに変わりあり
ません。とすれば、相続人に対する特定遺
贈は、当然に、相続による承継に含まれる
いて、その文言が「相続させる」であって
も、相続による事業の承継には当たらない、
との理解でよいかどうか疑義が生じます。
消費税 課税事業者の判定
遺言の文言によっ
て取扱いが変わる
のも何か変だな!
補足と解説
1.消費税法上の相続及び相続人
消費税法 2 条 4 項
この法律において、「相続」には包括遺贈を含むものと
し、
「相続人」には包括受遺者を含むものとし、
「被相続人」
4.
「相続させる」旨の遺言の解釈
最高裁平成 3 年 4 月 19 日判決
要旨
右の「相続させる」趣旨の遺言、すなわち、特定の遺産
には包括遺贈者を含むものとする。
を特定の相続人に単独で相続により承継させようとする
2.相続があった場合の納税義務の免除の特例
遺言は、・・・・・被相続人の意思として当然あり得る合
消費税法 10 条 1 項
理的な遺産の分割の方法を定めるものであって、民法 908
その年において相続があつた場合において、その年の基
条において被相続人が遺言で遺産の分割の方法を定める
準期間における課税売上高が千万円以下である相続人(第
ことができるとしているもの・・・・特定の遺産を特定の
9 条第 4 項の規定による届出書の提出により、又は前条第
相続人に単独で相続により承継あせることをも遺言で定
1 項の規定により消費税を納める義務が免除されない相
めることを可能にするために外ならない。
・・・・・・
続人を除く。以下この項及び次項において同じ。)が、当
・・・
「相続させる」趣旨の遺言は、正に同条にいう遺産
該基準期間における課税売上高が千万円を超える被相続
の分割の方法を定めた遺言であり、他の共同相続人も右の
人の事業を承継したときは、当該相続人の当該相続のあつ
遺言に拘束され、これにと異なる遺産分割の協議、さらに
た日の翌日からその年 12 月 31 日までの間における課税資
は審判もなし得ないのであるから、
・・・・・」
。
産の譲渡等については、第 9 条第 1 項本文の規定は、適用
しない。
3.被相続人の事業者を承継したとき、の意義
消費税法基本通達 1-5-3
5.最高裁の判断に対する批判
内田
貴
民法Ⅳ
は、相続により被相続人の行っていた事業の全部又は一部
を継続して行うため財産の全部又は一部を承継した場合
親族・相続
東京大学出版
法第 10 条第 1 項((相続があった場合の納税義務の免除
の特例))に規定する「被相続人の事業を承継したとき」と
著
P482~486
6.相続人の特定遺贈は、相続よる「事業の承継」
にあたらない、とする解説書
をいう。
岩下 忠吾著
(注) 特定遺贈又は死因贈与により受遺者又は受贈者が
総説
遺贈者又は贈与者の事業を承継したときは、法第 10 条第
1 項又は第 2 項の規定は適用されないから、当該受遺者又
は受贈者のその課税期間について法第 9 条第 1 項本文
消費税法
財経詳報社
P90
7・消費税法基本通達1-5-3
特定遺贈は除く、この法令解釈通達の理論的背景が、
「遺
((小規模事業者に係る納税義務の免除))の規定の適用が
贈は法定相続に優先し、相続人の意思は遺言に優先する」
、
あるかどうかは、当該受遺者又は受贈者のその課税期間に
とする相続法の大原則にあるとすれば、文言が「相続させ
係る基準期間における課税売上高のみによって判定する
る」であった場合においても同じ扱いになる、という結論
のであるから留意する。
に導かれることも否定できません。